2015 Fiscal Year Research-status Report
転倒防止装置の普及を目的とした文化財用の簡易小型免震装置の開発
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26350382
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
栗田 勝実 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (90282871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 繁 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (20106610)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化財保全 / 博物館 / 美術工芸品 / 転倒防止 / 小型免震装置 / 地震防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
文化財を対象とした簡易小型免震装置の開発に必要となる以下の4点について研究を実施した. 1.文化財を模した単純な剛体モデルによる振動実験:振動により花瓶などの文化財が転倒する条件を把握するため,文化財を模した単純な剛体モデルによる振動実験を実施した.なお,使用した入力波は,正弦波と人工地震波とした.モデルの重心から求められる転倒加速度より若干大きな正弦波振動を加えると,低振動数帯域においては転倒するが,2~3Hz以上の高振動数帯域では転倒せずロッキング振動し続けることを確認した.この結果を受け,高振動数帯域をカットした人工地震波で加振した場合,転倒加速度を越えた所で転倒することを確認した. 2.簡易小型免震装置に剛体モデルを設置した状態での加振実験:簡易小型免震装置上に剛体モデルを設置した状況下で,高振動数帯域をカットした人工地震波による加振実験を実施した.その結果,装置は有効に作動し,モデルが転倒しないことを確認した.また,モデルは装置上でロッキング振動を起こしながら装置上板の上を移動する場合があることも確認した.ロッキング振動を引き起こさせないためには,装置上板の慣性を大きくし免震性能を高める必要性があるので,上板質量を増加させて加振実験をした.その結果,装置の応答加速度およびモデルのロッキング振動が低減することを確認した. 3.数値解析:昨年度に構築した簡易小型免震装置の数値モデルを用いて,摩擦係数をパラメータとした数値解析を実施した.入力は,正弦波と実地震波とし,転倒に関係する入力の最大加速度,および,免震装置のクリアランスに関係する相対変位と摩擦係数の関係を示した. 4.加振実験に用いるための地震観測による記録収集:簡易小型免震装置は,建物内部に設置されるため,建物の応答を含んだ地震記録で加振実験を実施する必要があるので,7階建て建物の1Fと7Fで地震観測を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では,1.振動台を用いた試作機の加振実験(実証) 2.数値解析による免震装置の評価 および 3.加振に用いるための地震記録の蓄積 以上の3点を実施する予定であった.1.に関しては,簡易小型免震装置に (1)文化財を模した単純な剛体モデル (2)高さ22cmの花瓶 以上2ケースについて,入力波を正弦波および人工地震波で加振実験を実施し,十分な実験データを得た.また,加振実験による文化財を模した単純な剛体モデルの転倒についての検討を行ったことにより,転倒に至る過程や転倒条件が押さえられた.2.に関しては,装置本体の解析モデルは構築されており,摩擦係数と最大応答加速度や最大相対変位などの関係が明確になった.3.に関しては,記録を蓄積するために,まず,地震観測を開始した.記録数はまだ少ないが順調である.以上に関してはおおむね順調に進展している. しかし,簡易小型免震装置の加振実験において,入力波を地震記録とした実験が終えてない点,また,文化財を模した単純な剛体モデルの振動実験にて,剛体モデルが転倒する前に励起するロッキング振動を表現する数値モデルが不完全であり,現象を評価するまでに至っていない点がある.ゆえに,やや遅れていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までの実験結果を基に問題点の整理をすると共に,加振実験と数値解析の両面から簡易小型免震装置を評価し総括する. 1.簡易小型免震装置の加振実験:現在まで,正弦波および人工地震波による加振実験を終えているが,地震記録による加振実験が実験中の段階であるため,(1)装置のみ (2)簡易小型免震装置に剛体モデルを設置した状態 について,実地震波を入力とした加振実験を実施する. 2.数値解析によるロッキングおよび転倒の評価と簡易小型免震装置の評価:物体が転倒する前は,ロッキング振動を励起することが振動実験から確認されているので,この性質を把握することが重要となる.そこで,剛体モデルのロッキング振動を表現する数値モデルを構築し,ロッキングおよび転倒の評価を実施する.また,これらのモデルを用いた簡易小型免震装置の数値解析を実施する. 3.加振実験に用いるための地震観測による記録収集:建物内部での地震観測を継続し,加振実験をする際に必要となる建物の応答を含んだ地震記録の蓄積を図る. 4.総括
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Causes of Carryover |
当初,簡易小型免震装置の加振実験は,追加実験を除けば平成26年度と平成27年度で終える予定であったが,装置を構成する部品加工で時間を要したことで,現在もその影響により実験にやや遅れが生じている.そのために差が生じている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
加振実験で必要となる材料費や,これまでに得られた成果を公表するために必要となる旅費,学会参加費および論文投稿料に充当する.
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Research Products
(6 results)