2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26350386
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
伊東 隆夫 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (70027168)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 中国由来木彫像 / 仏像彫刻 / 神像彫刻 / 樹種同定 / 用材観 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国由来の仏像彫刻の用材観と日本の仏像彫刻の用材観にどのような類似性や相違性があるのかを識るために、本年度は2016年9月に米国のボストンを皮切りに、ウォーチェスター、クリーブランド、ニューヘブン、プリンストン、ニューヨークと移動し、下記の9か所の美術館を訪問し、それぞれの美術館の協力により合計21体の中国由来の木彫像から26試料の提供を受けた。 1.Museum of Fine Arts, Boston, 2.Isabelle Stewart Gardner Museum, 3.Worchester Art Museum, 4.RISD Museum, 5.Harvard Univ. Art Museum, 6.Cleveland Museum ofArt, 7.Yale University Art Galleries, 8.Princeton University Art Museum, 9.Brooklyn Museum, NewYork. これら仏像彫刻につき、顕微鏡標本を作製し、用材の樹種同定を行った結果、キリ属製木彫像:8体、ヤナギ属製木彫像:7体、ビャクダン製木彫像:2体、トチノキ製木彫像:1体、サワグルミ属製木彫像:1体、環孔性木彫像:1体であることが判明した。本研究課題前に、ヨーロッパの美術館およびアメリカ・メトロポリタン美術館から提供を受けた仏像彫刻の樹種同定結果と比較し、キリ属とヤナギ属が多用されていることおよびビャクダン製の仏像彫刻が検出されたことは以前の結果と共通していた。その一方で、トチノキ製やサワグルミ製の仏像彫刻が検出されたことは初めてであり、今後、中国由来の仏像彫刻の用材観を製作時代や地域を考慮して解析していくうえで貴重な資料となりうると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究期間中において研究代表者は毎年、春と秋の2回中国に出かけ1年で3-4か月滞在したが、中国において中国由来の木彫像の樹種同定の協力は一度も得られなかった。これに反し、欧米の多くの美術館から樹種同定の理解と多大な協力をえることができた。すなわち、米国メトロポリタン美術館からはまとめて30体の仏像彫刻の資料提供を受け、2016年には米国の9つの美術館から21体の仏像彫刻の試料の提供を受けた。また、ハーバード大学のジェームズ・ロブソン教授の紹介で米国ミルウオーキーにあるアンティークショップの好意で139体の神像彫刻の試料の提供を受けることができた。このように海外の多くの美術館その他から多数の試料の提供を得られたこと自体が奇跡に近いと考えている。その結果、中国由来の仏像彫刻および神像彫刻の用材観の基本的な情報を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
中国由来の木彫像(仏像彫刻ならびに神像彫刻)の用材の調査は本研究代表者および海外研究協力者が長年を通して研究を進めているところであり、中国由来の木彫像の用材に関する同様の研究は皆無である。また、美術館関係者との連絡も取りやすい環境にある。今後も機会のあるたびに、海外の美術館に出向いて試料の提供を受ける予定であり、制作時代や場所(地域)による用材の違いの有無など、より詳細で充実した調査・研究を行いたい。
|
Causes of Carryover |
中国由来の木彫像の調査のため、最終年度にカナダの美術館に出張する予定であったが、先方の都合により、次年度に変更せざるを得なかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
カナダ、トロントの美術館が中国由来の木彫像を所蔵しているので、先方と打ち合わせ、29年度の秋に調査に出かける予定である。
|