2014 Fiscal Year Research-status Report
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26350408
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
渡辺 和之 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (40469185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 健一 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (30401425)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 交易 / ヒマラヤ / 土地利用 / 流通 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度には、国境を越えて農牧畜産物の取引がおこなわれるネパール、インド、バングラデシュを訪れ、現地調査をおこなった。 まず、12月には北インドとバングラデシュの平原地帯にある定期市を訪れ、その土地の生産物と市場で売買される商品を把握しながら、国境を越えてネパールまでどのような農牧林産物が流通するのか把握した。この結果、インドのウッタルプラデシュ州からヤギがネパールにもたらされ、逆にネパールからバングラデシュへはイスラム教の犠牲祭の頃を中心にインドを経由して牛が流通していることがわかった。 また、2月には国境にまたがる農牧林産物の生産地の現状を知るため、極東ネパールのイラム郡とインド西ベンガル州ダージリン郡で調査をおこなった。対象としたのはおもに紅茶である。インド側では企業経営のプランテーションで作られる点で典型的なモノカルチャーであった。これに対し、ネパール側は農民が自給用の農作物を作りながら商品作物としてお茶を栽培し、紅茶会社に売っており、農民に市場を選択する自由があった。似たような生態学的環境でも国が違うと異なる生産システムがあることが明らかになった。 この他に、国際学会では、ネパールにおける畜産物の生産と土地利用に関する研究発表を台湾の台北市にある台湾国立大学で開かれたGlobal Land Projectで発表したほか、牧畜民の変化に関するセッションを幕張メッセで開かれた国際人類学民族学会で主催し、発表した。また日本地理学会や広島大学が主催する現代インド研究会(HINDAS)など国内の学会でも研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査をおこなった結果、おおむね当初予想していた成果を得ることができた。特に国境を越えて農牧林産物が流通している事例や、国境を通じて土地利用や流通システムが違う事例を見いだすことも出来た。農牧林で言うと林産物の研究が進んでいないが、これについては研究計画書にも書いたようにシナモンの葉やチューリの実を利用している例を知っているので、次年度以降調査することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、インドとネパールにおける農牧畜産物の生産と流通に関して調査を進める。今後の研究方針としては、前年度流通の調査をおこなった農牧林産物の生産地を訪れ、その土地利用に関して調べる。また、林産物についてもシナモンやチューリなどの事例を調査する。さらにカトマンズやカルカッタやダッカなど、農牧畜産物の集積地を押さえて国際市場にどのように流通してゆくのか調査をおこなう予定である。 その上で、今年度は震災の影響も調査しなければならない。農牧林産物のおもな生産地の1つである中部ネパールと東ネパールは2015年4月25日に起きたM7.8の地震の甚大な被災地となった。このため、今後は地震以前の農牧林産業における土地利用を聞き取りすると同時に、地震によって農牧林産物の生産や交易がどのような被害を受けたのか把握する必要がある。また、その結果を分析することで、農牧林産物交易が地震からの復興にどの程度貢献できるのか否かを考察することが可能となる。 調査においては、渡辺が中部ネパールと東ネパール、橘は中部ネパールを担当し、必要に応じて農牧林産物の流通先であるインドやバングラデシュにも調査へ行く。
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Causes of Carryover |
当初、研究協力者である橘には、冬に1カ月程度の十分な日程を取って現地調査をしてもらう予定だったが、次年度に商品作物を植える夏と収穫期となる冬と季節を分けて2回の調査をしたいとの意向を受けて、当該年度については2週間弱の調査とし、予算を次年度の調査に使用することで了解した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、当初の計画通り、農牧畜産物の生産の現場に赴き、土地利用の調査を行うとともに、震災の影響を調べねばならない。このため、研究代表者の渡辺には当初の予定通り450,000円ずつをネパール調査の経費として計上する。くわえて、研究協力者の橘には、上記の理由のようにネパールに2回調査に行ってもらうため、次年度配分額の450,000円に前年度未使用分の163,560円を加え、613560円を経費として配分する。
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