2015 Fiscal Year Research-status Report
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26350409
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
海津 正倫 奈良大学, 文学部, 教授 (50127883)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海岸低地 / 津波 / インド洋大津波 / 東北地方太平洋沖地震津波 / 地形環境 / 海岸線変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
海岸低地における自然災害は海岸低地の形成を反映した地形環境条件と密接に関わっている。なかでも津波の遡上や津波による被災状況、海岸線の変化などは海岸低地毎の多様性や低地内における地域差と深く関連している。また、それらはそれぞれの低地の地形や地盤高、土地利用などの土地条件と関係しており、これらの特徴を詳細に把握・検討することにより、海岸低地の津波に対する場所的脆弱性を明らかにすることが可能である。本研究では、このような観点から、海岸低地における地形環境の整理と共に津波の挙動と低地の地形環境との関わりについての検討を進めており、被災直後の高解像度衛星画像及び被災直後に撮影された空中写真によって海岸線の地形変化を把握し、ALOS全世界デジタル3D地形データについてもGISに取り込んで地形との関係を比較検討するとともに、現地調査を行った。その結果、東北地方太平洋沖地震による津波被害を受けた仙台平野南部やインド洋大津波を受けたインドネシア共和国のスマトラ島北西部海岸及び北端部のバンダアチェやなどでは、低地に流下する河川の河口部において顕著な楔形の侵食が見られたほか、一部地域では地盤沈下による水域の拡大も見られた。また、スマトラ島沖地震津波によってほぼ全域に津波堆積物が堆積したタイ王国ナムケム低地では津波堆積物の厚さはあまり減少しておらず、10年間の環境変化のもとで津波堆積物自体の侵食はあまり進行しなかったということが現地調査にもとづいて推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27度においては東北地方太平洋沖地震による津波の挙動と地形変化に関して陸前高田平野の被災前および被災直後の空中写真判読にもとづいて地形環境との関係を検討した。また、2004年のインド洋大津波によって被災したタイ王国アンダマン海沿岸のナムケム平野において、10年間の地形環境変化を現地調査およびALOS全世界デジタル3D地形データにもとづいて検討した。現地調査の結果、10年前との正確な地点の比較は困難であったが、人工的な手が加わっていない所では津波堆積物の厚さの変化はあまり大きくないことが推定された。また、その要因としては熱帯域の旺盛な植生の回復によって、土壌の流亡が抑制されたことによると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、仙台・石巻平野といった比較的大きな平野と、陸前高田平野という比較的小規模な平野において2011年の津波による地形変化について検討作業を進めるとともに、スマトラ島西岸地域、タイ王国アンダマン海沿岸地域について検討してきたが、今後はさらに対象地域の範囲を広げて一般化し、さまざまな沖積低地における地形環境と津波の流動、また、被害状況との関係について高解像度衛星画像およびALOS全世界デジタル3D地形データ等を使用して検討したいと考えている。また、自然災害に対する地形環境の関わりについてより社会的に普及するための方策も検討し、実践する予定である。
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Causes of Carryover |
海外調査の地域を限定したことと、それに関連してALOS全世界デジタル3D地形データの購入範囲を縮小したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の調査展開を十分考慮した上で、本年度の現地調査およびデータ購入地域を確定する予定である。
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