2015 Fiscal Year Research-status Report
北日本における春季/夏季気温の強い負相関に関する気候学的要因の解明
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26350412
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
菅野 洋光 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター気候変動対応研究領域, 主席研究員 (30355276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 洋和 気象庁気象研究所, 気象研究部, 研究官 (40462519)
吉田 龍平 福島大学, 共生システム理工学類, 講師 (70701308)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 北日本 / 4月平均気温 / 8月平均気温 / 負の相関関係 / 1998年 / テレコネクションパターン / 南半球 / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
北日本における4月/8月気温の強い負の相関関係について、2015年まで確認したところ、2015年の実況は、1998年以降の回帰直線からやや離れているものの、4月が正、8月が負の気温偏差のグループに属しており、1998年~2015年の相関係数は-0.82と、依然として有意な負の相関関係が続いている。一方、過去100年に遡って調べたところ、そのような強い相関関係は近年特有の傾向であることが分かった。 北日本8月気温とそれに先行する4月の熱帯海洋を中心とした大気場との関係について再解析データを用いて調べたところ、下層500hPa以下の東西風(u成分)と明瞭な正の相関が見られた。対流についても、OLR(上向き長波放射)が有意な正の相関を示しており、東西風の変動は対流活動の変化を伴っていた。 高解像度全球大気モデル(MRI-AGCM3.2)による100メンバーAMIP実験(観測された海面水温で強制)を解析したところ、観測で見られた北日本付近の4月/8月気温の相関関係はアンサンブル平均(シグナル)としては再現されなかった。このことは、観測された強い相関関係は熱帯海面水温からの強制ではなく大気の内部変動(ノイズ)で生じていることを示唆する。 上述の熱帯対流相関域のほぼ中心に位置している、インドネシア共和国ジャワ島における現地の気象観測データを回収・解析した。その結果、降水、大気場ともに4月末頃に不連続的に変化しており、雨季の終わりがその期間に判定できることが明らかとなった。 メソ気象モデルWRFによるシミュレーションを、現地気象観測の期間と並行して行った。現地気象観測点(Wonosari)における大気の時間-高度断面をみたところ、地上観測で明瞭に把握されたu成分の4月末~5月初めの西風成分の消失が、大気下層に限定された現象であり、500hPa以上では一転して西風になることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北日本における4月/8月気温の負の相関関係について、2015年も成り立っていることが明らかとなり、また日本の他の地域や期間についても類似の現象があることから、本研究による解析手法がより実用性のあることを確認することができた。一方で、過去100年のデータ解析からこのような相関関係は近年特有の傾向であることが分かった。 4月8月気温におよぼす熱帯からの影響を明らかにする目的に関して、先行する4月の熱帯海洋域での下層風および対流場に、北日本8月気温との間に有意な相関が認められた。一方、全球大気モデルによる100メンバーAMIP実験(観測された海面水温で強制)では北日本付近の4月8月気温の強い相関関係は再現されないことが分かった。 Wonosariにおける気象観測点は、熱帯域での有意な相関域の中心に位置していることから、大規模な現象に密接に関連した有用なデータが得られることとなった。ここでは、降水量の変化から、雨季が4月末頃に終わること、同時に風向や日射量など大気の状態も不連続的に変化することが明らかとなった。このように、地上データから雨季の特徴が明瞭に把握できたことは一段の進捗である。 地上気象観測点を中心として、インドネシア周辺に領域気候モデルによる数値シミュレーションを実行できた。Wonosariの上空では、風向は500~400hPa付近を境界としてその上下で入れ替わっていた。すなわち、4月末までは地上~400hPa付近まで西風成分が頻出していたのに対して、5月上旬以降は、6月中旬まで上空の西風が明瞭になり、地上付近は東風が卓越している。これは地上気象観測データと整合的である。このほか、絶対湿度などについても同様に、地上気象観測と整合的に大気の鉛直構造の時間変化がシミュレートできたことは今後の解析に意義がある結果である。以上、27年度は計画通りの達成度であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
全球大気モデルによるAMIP実験の解析を引き続き行い、観測された北日本の4月8月気温の強い相関関係が熱帯の海面水温や対流活動の変動を介して説明可能かどうかを明らかにする。 インドネシア共和国ジャワ島ジョグジャカルタ特別州グンヌンキドゥル県Wonosari観測点におけるデータロガーに蓄積された気象観測データは、2016年度に2回回収し、トータルで2014~2016年の3回の雨季の事例について解析する。2015~2016年はエルニーニョであり、また2016年夏以降はラニーニャに移行すると予測されていることから、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の両方に対応した事例の収集・解析が行えると期待される。 局地気象モデルによるシミュレーションで明らかとなった大気の鉛直構造の季節変化を、客観解析データを用いて大規模場へと対応させ、大気の変動の多角的な解析を行う。特に、風の鉛直2層構造が、大規模場ではどのような循環と対応しているのか、それらが5月以降にどのように発展、北上もしくは伝播していくのか、アジアモンスーンとどのように関わっているのか、関わることができるのかについて明らかにする。 また、局地気象モデルによる数値シミュレーションを過去にも延伸し、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象と関係した歴史的な変動の再現を試みる。 以上をとりまとめて、北日本の4月/8月気温の強い相関関係を、熱帯対流活動の変動を意識して解析し、整合的なモデルの構築に努める。 さらに、最終年度であるため、学会での発表のほか、ここまで得られた研究成果の論文としての取りまとめを行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額518,450円は、研究費を効率的に使用して発生した残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要消耗品の購入等に使用し、次年度に請求する金額と併せて研究計画遂行のために使用する。
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Research Products
(4 results)