2016 Fiscal Year Research-status Report
持続的・安定的な成長のためのグローバル社会の相互依存関係性の解明
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26350422
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 裕一 京都大学, 総合生存学館, 教授 (90610858)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 景気循環 / 同期現象 / 複雑ネットワーク解析 / 貿易ネットワーク / ショック / 結合振動子 / コミュニティ解析 / 集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,英国のEU離脱,トランプ政権の保護貿易政策など,経済のグローバル化に抗う動きが顕在化してきた。今年度は,これらの動きと期を同じくして,貿易自由化,経済共同体,地域統合に関して,特定の国における経済共同体からの離脱や保護貿易政策による貿易コストの増加が,国際貿易ネットワークや経済共同体に及ぼす影響を定量的に推定する方法を検討した。各国の産業間の貿易データ,財ごとの国間の貿易データ,についてそれぞれの貿易コストを推定し,その結果から財ごとの各国の産業間の貿易コストを推定して,その貿易コストを用いて財ごとの各国の産業間の貿易額を推定するモデルを開発した。このモデルを用いることによって,例えば,環太平洋連携協定(Trans-Pacific Partnership, TPP)の締結による新しい経済共同体の形成,および域内の貿易ネットワークの変化を推定できる。特に,米国のTPP参加の有無による差異について,その影響を定量的に検討することが可能となった。小規模な系についてモデルの検証を行ったが,予想外に計算時間がかかることが判明し,その高速化アルゴリズムの開発に時間を要した。 この他,経済共同体や地域統合について,経済的な側面だけでなく,政治,文化の側面も併せて地域統合のさまざまな課題を検討する国際ワークショップを開催した。本ワークショップでは,ユネスコのジョン・クローリー博士を招き,学生とともに,伝統的な形態における地域統合の限界を理解し,現代的な社会変革について検討するとともに政策立案の実践に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各国の産業間の貿易データ,財ごとの国間の貿易データ,についてそれぞれの貿易コストを推定し,その結果から財ごとの各国の産業間の貿易コストを推定して,その貿易コストを用いて財ごとの各国の産業間の貿易額を推定(再構成)するモデルの開発までは計画通りに実施できた。しかし,そのモデルを使って全産業・全財・全期間について再構成データを作成する計算に多くの計算時間を要することが判明した。その問題点を解消する高速化アルゴリズムの開発に時間を要したため,全体の計画実施に遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)国際貿易の再構成データを作成する計算アルゴリズムを改良して,高速計算を可能が可能になった。今年度は,このモデルを用いて全産業・全財・全期間について再構成データを作成して,経済共同体からの離脱や保護貿易政策による貿易コストの増加が経済共同体構造へ及ぼす影響を定量的に推定する。 (2)海外直接投資の国レベルのマクロデータ,およびミクロな企業レベルの株所有ネットワークを解析して,海外直接投資の全体像を描き出して,海外直接投資と貿易の関係を明らかにする。 (3)経済危機時,および機器全土の3つの期間について,各国産業ごとの付加価値時系列データのベクトル自己回帰分析から,結合振動子モデルを構築する。このモデルについて,少数の産業への刺激策による経済危機の制御可能性の詳細解析を行う。 (4)地域統合,経済共同体についての政策立案ワークショップを開催して,その成果をホームページから情報発信していく。
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Causes of Carryover |
財ごとに各国産業間の貿易データを再早世した貿易多重ネットワークについて,貿易ブロック構造をあきらかにするとともに,貿易コストの増加/現象が引き起こすブロック構造の変化についてシミュレーション研究に取り組んでいる。小規模モデルケースについて開発したモデルが機能する事は確認できたが,十財の貿易データの再構成にあたって当初予想以上の計算時間がかかり,計画実施に遅延が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
開発済みの高速アルゴリズムを実装したモデルを用いて再構成データの作成は,今後数か月で完了する見込みである。このデータについて,貿易ブロック構造をあきらかにするとともに,貿易コストの増加/現象が引き起こすブロック構造の変化をシミュレーションを行う。同時に,経済共同体について政策立案ワークショップを開催して,その成果をホームページで情報発信する計画である。
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Remarks |
この他,池田データサイエンス研究室のホームページを作成して,現在,公開を準備中です。
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