2015 Fiscal Year Research-status Report
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26350426
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森川 克己 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10200396)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 待ち時間 / 病院 / シミュレーション / 見える化 / 近似最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,H27年度の前半では,患者が医師の診察を1回受けて病院を立ち去る環境において,予約のある患者(予約患者)と予約のない患者(当日患者)のそれぞれの平均待ち時間の短縮を目指した研究を実施し,以下の研究成果を得た. 待ち時間の短縮には限界があるため,待つことの精神的な苦痛を軽減する方法として,診察順序の表示,すなわち,見える化を導入した.この際,待合室で待っている人のみを表示対象とし,表示人数の上限が与える影響を調べた.予約患者と当日患者の一人あたりの平均待ち時間の比率は入力データとして与える確率で調整できるが,それは最大表示人数にもある程度影響を受けることが示された.医師の平均総待機時間をある上限内に抑えつつ,予約患者と当日患者それぞれの平均待ち時間ができるだけ短くなるような解,すなわち予約時刻の集合を求める最適化問題にはSimulated Annealing (SA)法を適用し,SA法が比較的精度よく候補解の目的関数値を求めていることを確認した. 今年度の後半では,患者が複数のサービス拠点を経由して病院を立ち去る環境を想定し,サービス拠点での患者へのサービス提供順序を決める問題に取り組んだ.各患者がそれぞれのサービス拠点の前で待つ時間の和を求め,予約患者と当日患者の一人あたりの平均総待ち時間の重み付き和最小化を目的関数とした.サービス拠点数を3とし,待ち人数が多くなりやすい診察室での患者の呼び出し順序を定めるディスパッチング規則の生成法に,Genetic Programming (GP) を導入した.実験の結果,人間には思いつきにくい,しかし合理的と考えられる規則が生成される場合のあることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すべての患者が医師の診察を一回受けて病院を立ち去るという基本的環境に約1年半を費やして取り組んだ.予約患者と当日患者の2種類の患者が存在するもとで,予約患者の到着の振る舞い,予約患者と当日患者の人数割合などに留意しつつ,両者の平均待ち時間の短縮法について研究してきた.待つことの精神的苦痛を和らげる工夫として,診察順序の見える化にも取り組み,実際の環境でも容易に採用可能な方法を提案した.これら一連の研究は,待ち時間の短縮という数学的な問題の枠にとどまらず,見える化や実際のデータが利用可能な場合への対応力にも留意している.交付申請時には予定していなかった,負荷に基づく当日患者の受け入れ方策にも取り組んだため,当初の予定で1年間としていた研究期間を若干超えているものの,それに見合う成果は十分にあったと考えている. 2年目からの課題としていた,複数サービス拠点を経由する環境下での総待ち時間の最小化については,患者の到着や病院内の流れが複雑な確率的環境での最適化問題となるため,2年目が終了したこの時点で大きな成果があったとは言えない.ただし,このような複雑な環境下でしばしば利用されているディスパッチング規則の生成法に GP の適用を試み,遺伝子操作と病院のシミュレーションが複雑に絡み合った実験用システムの構築が完了している.これらより,この2年間で目指していた研究レベルにはおおむね到達していると考える. ただし,医療従事者からのレビューを得るフェーズができていないため,全体としては,「やや遅れている」と判断するのが妥当と考える.
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は最終年度にあたり,患者が複数のサービス拠点を経由する環境下での総待ち時間最小化を目指した方法の開発を行う.前年度に作成したGPのプログラムに,見える化の導入や,SAを組み合わせるなどの工夫を加える.また,この環境は生産システムにおけるジョブショップに対応しているため,確定的ジョブショップでのスケジューリング技法についても研究し,確定的環境での成果を確率的環境に展開できないかを検討する. また,医療従事者への研究協力依頼,もしくは研究成果へのコメントをお願いしていく予定である.
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Causes of Carryover |
H27年12月開催の国際会議で発表した研究成果をさらに充実させて国際学術雑誌の特集号に投稿するために,投稿用原稿の英文校閲に要する費用分を確保していた.しかし,特集号の締め切りが延長されたため,英文校閲の依頼時期を1ヶ月余り遅らせ,その間に実験を追加して論文の充実度を高めた.そのために,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
英文校閲は標準的納期で依頼処理がすでに完了しており,特急処理を見込んで確保していた額に対し幾分経費が節約できた.残りの額は,H28年度分と合わせて,12月に開催される国際会議への発表申込みに向けた準備に使用する.
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