2015 Fiscal Year Research-status Report
不確実状況下における農業計画問題に対する意思決定手法の研究
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26350432
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
矢野 均 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (00166563)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多目的計画法 / ファジィ計画法 / 確率計画法 / ファジィランダム変数 / 対話型アルゴリズム / 農業計画問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、機会制約法の確率最大化モデルと満足基準最適化モデルを用いて、ファジィ係数、確率変数係数、ファジィランダム変数係数が混在する多目的計画問題に対する意思決定手法についての理論的研究を行った。 平成27年度は、ファジィ係数、確率変数係数、ファジィランダム変数係数が混在する多目的計画問題に対する意思決定手法に対する、EXCEL-VBAマクロによる対話型プログラムの開発を行った。作成した対話型プログラムを日本国内の野菜作付計画問題や、フィリピンの天水農業計画問題に適用してその有効性を検討した。また、期待値モデルと分散モデルを同時に考慮した多目的ファジィランダム計画問題に対する意思決定手法に関する研究を行った。 以上の意思決定手法は、作付計画の割当による結果確率に焦点を当てた機会制約法に基づく研究成果である。しかし、農業計画問題では、水資源計画問題のように、結果による影響を重視する場合も多い。そこで、ファジィランダム変数係数を含む単一目的単純リコース問題および多目的単純リコース問題に関する意思決定手法について研究を行い、フィリピンの天水農業計画問題における年間水資源供給量をファジィランダム変数として定式化した問題に適用し、検討を加えた。 さらに、多目的ゼロ和2人ゲームに対して各プレイヤー(意思決定者)が、それぞれ最悪の状況を想定して意思決定を行うという前提のもとで、多目的計画問題の定式化を行い、対応する対話型意思決定手法を提案した。プレイヤー1を農民、プレイヤー2を自然と解釈することにより、提案手法を多品種野菜出荷計画問題に適用して、各野菜の最適な月別出荷量を求め、検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機会制約法の確率最大化モデルと満足基準最適化モデルを用いて、多目的確率計画問題に対するファジィアプローチについて研究成果を(Fuzzy decision making for multiobjective stochastic programming problems, Fuzzy Sets and Systems)として公開した。また、ファジィ係数、確率変数係数、ファジィランダム変数係数が混在する多目的計画問題に対する意思決定手法についての研究成果を発表した(Multiobjective programming problems involving fuzzy coefficients, random variable coefficients, and fuzzy random variable coefficients, International Journal of Uncertainty, Fuzziness and Knowledge-Based Systems)。さらに、水資源計画問題のように、結果による影響を重視する二段階計画法に基づき、多目的ファジィランダム単純リコース問題に関する意思決定手法について研究を行い、フィリピンの天水農業計画問題に適用し、検討を加えた(Interactive Decision Making for Multiobjective Fuzzy Random Simple Recourse Programming Problems and Its Application to Rainfed Agriculture in Philippines, Proceedings of IMECS2016)。一方、多目的ゼロ和2人ゲームを多目的計画問題として定式化し対応する対話型意思決定手法を提案し、多品種野菜出荷計画問題に適用して検討した(Interactive Fuzzy Approaches for Solving Multiobjective Two-Person Zero-Sum Games, Applied Mathematics)。以上、本研究テーマに関連する平成27年度1年間の研究成果は、査読付き論文5本、著書1本、国際会議における発表1件であり、十分な成果があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、結果による影響を重視する二段階計画法に基づき、多目的ファジィランダム単純リコース問題に関する意思決定手法について研究を行い、フィリピンの天水農業計画問題に適用し、検討を加えた。提案手法では、構成要素の確率変数が連続型の正規分布に従うことを仮定していた。しかし、現実の水資源計画問題等では、連続型ではなく離散型確率変数を想定する場合が多い。また、連続型確率変数を含む単純リコース問題は、積分計算を最適化問題の内部に含んであり、Mathematica等の特殊なソフトウェアを必要とするだけでなく、常に最適解を計算できる保証がない。 そこで、離散型の確率変数を構成要素とする離散型ファジィランダム変数係数を含む多目的単純リコース問題の定式化と対応する意思決定手法の研究を行い、農業計画問題への適用を検討する。 また、階層構造にある複数の意思決定者を含む多重レベル計画問題に対して二段階計画法を適用することにより、多目的多重レベル単純リコース問題と多目的多重レベルファジィランダム単純リコース問題を定式化し、対応する意思決定手法に関する研究を行い、農業計画問題への適用を試みる。
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Causes of Carryover |
海外での国際会議における発表を控えたことによる。 その理由は、昨年、アメリカの出版社CRC Press社と契約して、農業計画問題への応用例を含む多目的計画問題に対する専門書の出版契約を締結したことにより、そのための許諾請求費用と原稿校正費用が、2016年に必ず必要になったことによる。これらの見積もり額を考慮して、次年度使用額が発生している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記に記したように、昨年、アメリカの出版社CRC Press社と契約して、農業計画問題への応用例を含む多目的計画問題に対する専門書の出版契約を締結した。 これに伴い、2016年度は、専門書作成に関わる自著論文の許諾請求費用と、原稿校正費用にすべて活用する予定である。出版契約は確定しており、原稿は現在作成中である。 8月末には原稿提出の予定であるので、次年度使用額は必ず活用する。
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