2015 Fiscal Year Research-status Report
安全なまちづくりにおけるソーシャルガバナンスの体制・制度に関する研究
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26350441
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
白石 陽子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (30551163)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 安全・安心 / 協働 / ソーシャルガバナンス / まちづくり / 安全政策 / 住民参画 / セーフコミュニティ / 評価指標・成果測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2009-2010年に「科学研究費(スタートアップ)」による「安全なまちづくりにおけるソーシャルガバナンスのモデル構築」研究を出発点とした発展的研究として、その「体制・制度」に焦点をあて日本における安全なまちづくりに向けた効果的なソーシャルガバナンスのモデルを構築することを目的としている。研究対象は、引き続き世界規模で広がりを見せているコミュニティの協働による安全なまちづくり活動「セーフコミュニティ(SC)活動」を設定している。 本研究のベースとなっている2件の先行研究では、安全なまちづくりにおけるソーシャルガバナンスのあり方を研究するにあたっての「フレーム」とその実践と成果を測定・評価する「仕組み」のモデル構築に焦点を当てた。本研究では、これらに続く研究として、日本においてSCという枠組みのなかで安全なまちづくりにおけるソーシャルガバナンスの「仕組み」が、効果的・効率的に機能する「体制・制度」の在り方について研究している。 初年度は、SCにおけるソーシャルガバナンスに関する先行研究の整理を目的に、SC及びソーシャルガバナンスに関する実践や研究の情報収集を行った。しかし、SCにおけるソーシャルガバナンスの研究はみられなかったため、対象を広げ、隣接領域における先行研究の情報収集を行った。 2年目にあたる本年度は、引き続いて情報収集と整理を行ったが、特に、SC取り組む自治体において重点課題としている「高齢者安全」「子どもの安全」「交通安全」「災害時の安全」「自殺予防」「暴力・虐待予防」「犯罪予防」などの分野に焦点を当て、行政及び地域の体制について情報を収集した。これらの調査・研究の中間とりまとめについて、日本小児保健協会学術集会(長崎市)、世界SC会議(タイ王国ナン市)やSCシンポジウム(大韓民国光州広域市)において報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SCとして認証されている約370のコミュニティ(自治体及びその一部の区域)は、いずれも認証条件の一つである「分野を超えた協働の活動基盤」を構築している。SCの推進については、ガイドラインが示されており、そのなかで分野横断的な協働体制の在り方についても示されている。しかし、ガイドラインにそって体制を整えたとしても、地震などをはじめとする日本特有の課題に対応できる、実情にみあった体制が必ずしも構築されるとは言えず、場合によって組織は形骸化している。そこで、ガイドラインに頼るだけでなく、日本の実情にあった体制づくりが重要であることが明らかになった。 そこで、本研究では、日本の実情にあった安全なまちづくりの体制について研究を行う。初年度である2014年度は、SCに関する情報収集・先行研究の確認を中心に行った。先行研究については、SCに関する制度や体制の研究はみられなかったため、「まちづくり」、「安全に関する地域活動」「地縁組織」「ソーシャルガバナンス」など隣接領域における情報について収集した。 二年目(2015年度)は、日本のSC推進自治体においてSCにかかわる組織・団体の体制について情報を収集した。また、行政における体制・役割について情報を収集した。加えて、日本と行政体制や地域の組織などにおいて類似点が多い台湾及び韓国についても情報収集を開始した。これについては、2016年度も引き続き情報収集が必要である。また、SCの学校版である「インターナショナルセーフスクール(ISS)」についても焦点を当てて情報収集を行った。 一方、現時点での調査・研究成果のフィードバックについては、2015年7月には研究会を開催し、情報提供を行った。また、タイでのSC国際会議、韓国でのSCシンポジウムにおいて研究成果の一部について報告を行った。また、2016年10月に予定されている国際会議(フィンランド)での研究の報告準備を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる2016年度は、まず、昨年度から行っている海外事例に関する情報収集を引き続き行う。主に、日本に比較的社会制度が似ている台湾及び韓国を中心にそれらの国でSCに取り組んでいるコミュニティの取組み体制・機能について情報収集を試みる。また、SCのなかでも特に活発になってきている子ども・学校を中心とした地域ぐるみの安全向上の活動であるISSについても焦点を当てていく。 そのうえで、本研究の最終段階として、前2年間の調査をもとに地域レベルでの安全なまちづくりにおける協働(ソーシャルガバナンス)体制を類型化し、日本での取組みにおいて実践可能なモデル案を構築する。体制モデルについては、「自治体規模」、「地域課題」、「既存組織の活動状況」等による類型化を図る。モデル案は、特に日本国内でSCに取組む自治体、および新たにSCに取組む自治体に提案し、実現可能性を検証する。 また、これらの成果については、2016年10月に開催される安全世界会議2016(Safety 2016 World Conference)(フィンランド)、2017年10月に開催される第23回世界SC会議(セルビア)などで報告する予定である。また、本年度も夏に研究会を開催し、SCに取組む自治体や研究者にフィードバックする。今年度末には、これまでの一連の研究の成果を書籍としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
主な理由は、旅費と人件費の支出が予定額を下回ったこと、また報告書の作成・発送が次年度に繰り越されたからである。旅費については、予定していたタイの学会参加にかかる費用(旅費以外)と台湾への旅費・宿泊については、先方の招へい扱いとなったため予定している金額を下回った。また、国内の訪問については、想定している回数の訪問がかなわなかったことに加え、実際に訪問した場合も他の原資を活用できたので、予定を下回った。また、人件費については、翻訳にかかる費用が想定していたほどかからなかったことと、情報収集がやや遅れているため、その整理や翻訳にかかる費用が次年度に繰り越されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画については、基本的に申請時の計画に加えて、2016年度に参加予定の中国及びフィンランドでの学会への渡航及び参加費用等の経費の補充、海外視察(台湾、韓国を予定)にかかる費用に充てる予定をしている。人件費については、これまで収集した資料等の整理及び和訳、海外事例に関する調査に充てる。加えて、円滑な情報整理・分析を図るために、情報分析ソフトを購入する。 また、最終年度であるため、これまでの研究成果を書籍として取りまとめ、関係者にフィードバックを図るとともに、報告会を予定している。
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Remarks |
現在、アジア圏内のSCの在り方に関する比較研究のための調整を行っている。
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Research Products
(7 results)