2014 Fiscal Year Research-status Report
沿岸地の防災と観光の両立に向けた住民・一時来訪者の津波避難のリスク評価と改善方策
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26350449
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
梅本 通孝 筑波大学, システム情報系, 講師 (10451684)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 減災 / 津波 / 住民 / 観光客 / 避難 / シミュレーション / リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,茨城県大洗町大洗サンビーチ海水浴場及び周辺を対象地域として,地元住民と観光客を対象とした津波避難シミュレーションによる解析を実施し,当地における津波避難計画の改善策を提示することを目的とし,また,効果的な避難誘導方法や,津波避難リスク情報と避難対策に対する一般市民の受容度・評価についても検討を行うものである。 平成26年度には,まず「当地海水浴客の避難行動特性の詳細分析」として,当地において海水浴客を対象として先行的に実施したヒアリング調査結果に基づき,津波襲来時避難開始タイミング,避難方向,避難手段などについて各種属性別に要因分析を行い,海水浴客の避難行動特性を把握した。一方,マルチエージェントモデルにより,大洗サンビーチ及び周辺における5万人規模の津波避難行動を模擬計算する「津波避難シミュレーションプログラムの作成」を行った。そして,前述の海水浴客の避難行動特性を入力として与え,現状での大洗サンビーチ・周辺における津波襲来時の海水浴客の避難シミュレーションを行い,避難者の混雑・渋滞の発生状況や避難者の避難完了分布等を出力し「現状での当地における津波避難のリスク評価」を行った。この結果を受けて,現状でのサンビーチ及び周辺における津波避難時の混雑発生箇所等の課題を特定した上で,避難を効率化・円滑化するため具体的改善策として,避難開始の促進,避難先割り当ての修正,避難誘導員の配置変更,自動車避難の抑制,津波避難マップの閲覧促進,及び,津波避難ビル設置の効果とそれら施策の規範的な方法論について検討を行った。これらの検討結果から,的確な避難先割り当てや,逃げ遅れ者を収容可能とするための津波避難ビルの運用ルールなどについて「当地における規範的な津波方策の検討」を行い,津波避難対策の実務上有用となる知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,海水浴場及び周辺を対象地域として海水浴客と地元住民の津波避難シミュレーションによる解析を実施し,津波避難計画の改善策を提示しようとするものであるが,初年度にマルチエージェントモデルにより5万人規模の津波避難行動を模擬計算に対応するシミュレーションプログラムを開発でき,それに基づく解析を実施できたため,3年計画の1年目終了時点としては,おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には,「現状での当地における津波避難のリスク評価」を継続して実施するとともに,「ビーチ・周辺道路の改修効果の評価」として,当地において計画されている緩傾斜護岸や築山,避難誘導路の設置などの構造的な改修や,周辺道の拡幅等を施した場合を仮定して津波避難シミュレーションを行い,その効果を評価する。また,「津波避難計画の改善効果の評価」として,前年度の検討結果を受け,各種改善策を実施した場合の津波避難シミュレーションを行い,その効果を評価する。一方,「当地の津波避難計画の改善策の検討」として,以上でのシミュレーション結果を踏まえ,海水浴客及び地元住民の効率的かつ円滑な避難を実現するための具体的改善策の提案を行う。 平成28年度には,前年度から取り組む各検討を継続して実施するとともに,それらの結果に基づき,「効果的な避難誘導方法の検討」として,効率的な避難を実現するための的確な避難誘導方法について検討を行う。ここでの「避難誘導方法」とは,具体的な誘導内容を避難者に周知するための情報提供の内容,媒体及びタイミングを指し,この検討に当たっては,実地において海水浴客や地元住民に評価を求める。次に,「津波リスク情報と避難対策に対する一般市民の受容度・評価の計測」として,これまでの検討結果を踏まえ,大洗サンビーチにおける津波リスクと避難対策に関する情報を提示した場合の一般市民の受容度や評価を計測し,観光地における防災対策充実の観光誘客面での有用性について検証する。この計測に当たっては,潜在的な観光需要によって検討すべく,来訪した海水浴客だけでなく,当地への誘客圏内の一般市民を対象として調査を実施する。
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Causes of Carryover |
当初,外部発注を予定していたプログラム作成について経費をかけずに作成することができ,計画よりも必要経費が少額となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「今後の研究の推進方策」で述べた,平成27年度の研究項目に関して現地調査旅費に充当し,研究を推進する。
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