2015 Fiscal Year Research-status Report
運転集中状態を3段階評価する予防安全運転支援システムの構築
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26350452
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
三宅 哲夫 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60239366)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 予防安全 / 運転支援 / 漫然 / 顔画像 / 視線 / 運転操作情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
予防安全運転支援システムを構成する4つの核技術である①注視行動の妥当性評価、②瞬きの時系列解析、③覚醒努力表情の検出、④車両の速度、操作予測、について研究を進めた。①については、前提条件としてドライバは、ある時点で車両前方視野内に存在する複数個の注視対象候補の中のどの物体を注視するのが妥当であるかを定める必要があり、ヒトの視覚特性を基にした注視の優先順位付けアルゴリズムを確立した。②については、共同研究先との協議により、サッケード(高速眼球回転運動)を用いた漫然状態推定法の開発研究を先行させた。③については、特徴量を2画像間での顔表情の変化量から連続的な時系列変化量とすることで、より高精度で覚醒努力表情を検出できるようにした。④については、先行車両の追従走行パターンをモデル化し、通常運転からの逸脱状態の検出を可能にした。 一方、予防安全運転支援システムの有効性を検証する実験環境として、①ドライビングシミュレータ(DS)環境と②ドライバ情報収録環境の構築が研究課題であるが、今年度は継続してシステム構築を進めた。①については、DS周辺の車外シーンをよりリアルに表示できるようにプロジェクタとスクリーンの3セットを更新した。②のドライバ情報収録用の長時間ドライブレコーダの製作については、前年度において未解決であった同期収録動作の不備をハード、ソフトの両面から見直して解決した。 本年度の主たる購入物品は下記のとおりである。研究目標に沿って、上記の4技術を担う個々のソフトウエアを1台のPCに集約して実行するための高性能PCを新たに購入した。視線計測方法は、筆者らが独自に開発した手法を用いているが、民生品として安価な視線計測装置も入手可能となってきており、精度を比較する目的で1台購入した。また、DSの没入感を改善するひとつの試みとして、ヘッドマウント式画像表示装置を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた4つの核技術のうち、①についてはソフトウエアの作成をほぼ完了した。②瞬きの時系列解析については、データの時系列解析は次年度の課題とした。②に替えて進めたサッケード検出については、特別な光源を用いない新たなサッケード検出方式を構築中である。③覚醒努力表情の検出については、あくびを対象とした研究成果を国内シンポジウムで報告する(採録済)。④車両の速度、操作予測については、先行車両に追随するときの車間距離と自車速度の関係を実車データ(名大提供)およびDSを用いて解析、再現した結果を国際会議で報告した。 ドライバーから得られる各種データを基にした漫然状態の推定については、名大データの自己組織化マップによる解析と、DSデータのサポートベクトルマシンによる解析をそれぞれ行い、運転以外の2次タスクを与えた状態と平常運転状態での特徴パターンの違いを捉えたが、漫然推定の精度向上のためにはデータの取捨選択が必要である。 予防安全運転支援システムの有効性を検証する実験環境である①ドライビングシミュレータ環境は予定どおり完成した。②ドライバ情報収録環境の構築はやや遅れたもののプロトタイプを完成させ、システムを実車に搭載し大学構内での動作確認実験を実施した。プロトタイプの完成が遅れた原因は、機器類およびソフト仕様に関する知識とスキル不足であったが、加えてドライバレコーダの当初の開発推進者が他大学に転出したことも影響した。地元バス会社との共同運行実験は次年度開始の予定である。 昨年度研究成果報告書の今後の研究の推進方策のなかで、走行環境の潜在的な危険度評価が重要であるとの観点から、「運転環境の危険度推定」と「ドライバの個人特性の抽出」の2課題を加えることを述べたが、前者に関する研究成果を国内会議で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度の次年度は本研究目的である運転集中状態の3段階評価[適正、注意喚起、警告]アルゴリズムを構築し、警告が必要な場合にはドライバーへ的確な警告を発信する仕組みを備えた予防安全運転支援システムを完成する。視線の動き、ハンドル角の揺らぎ、走行環境に応じた反応時間等、ドライバーにセンサを装着することなしに取得可能な各種データを特徴量として、平常状態と漫然状態を識別し、漫然状態の継続時間および発生間隔を基に運転集中状態を3段階評価する。ここで漫然状態の推定の難しさは、実際に漫然運転状態に陥っているかどうかは、ドライバーへの聞き取り調査から判断せざるを得ない点にあり、種々の条件下で被験者実験を繰り返すことで推定精度を向上させる。実験は実車環境で取得したデータのオフライン処理と、DS環境で取得したデータのオンライン処理で行う。警告の発信方法については、利用者が警告を煩わしいと感じることがないように、人間工学の知見を取り入れた仕様設計を行う。 全体の研究開発は、従来どおり3名の教員と多人数の大学院学生が並列的に進める体制のもとに行う。
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Research Products
(3 results)