2014 Fiscal Year Research-status Report
安全管理活動の成熟化にビッグデータを活用する:モチベーションを持続させる情報提供
Project/Area Number |
26350458
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中西 美和 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70408722)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 安全管理 / モチベーション / ビッグデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、組織における安全管理活動の成熟化をねらいとして、構成員(従事者や利用者など)の安全に対するモチベーションを持続させる方法の確立に挑むものである。特に本研究では、人のモチベーションを誘発する一要因は、その個人が持つ内的特性との「適度なずれ」であるという心理学理論を工学応用し、構成員がそれぞれに有し、また経時的に変化する内的特性をデータとして、それと「適度なずれ」を持つ情報を提供することで、安全管理活動への内発的動機づけを持続させる可能性を探究している。 本研究では、以下3点を、遂行上ブレイクスルーすべき具体的課題と位置づける。 1)構成員の内的特性を同定する項目の選出:個々の構成員が有する情動・認知・能力に関わる諸特性のうち、安全管理活動へのモチベーションの程度と関連する項目を見いだし、それらの項目を用いて、内的特性を表現する。 2)構成員のある時点での内的特性と提供対象となる情報との「ずれ」の定量化:1)で見いだされた項目を用いて表現される個々の構成員の内的特性と、提供対象となる安全関連情報との「ずれ」を定量化する方法を構築し、「ずれ」と安全管理活動へのモチベーションの程度との関連を明らかにする。 3)安全管理活動へのモチベーションを持続させる情報の導出手法確立:構成員のモチベーションを持続させる(すなわち時系列的に「ずれ」の程度を最適化する)べく、安全関連情報のコンテンツを構成する手法をモデル化し、実験的検証を行う。 予定する3年の研究期間の初年度であったH26年度は、主に、上記1)と2)に係るデータ収集のための調査を計画しており、鉄道事業者及び医療従事者等、実務者を対象として、概ね計画通りのボリュームのデータ収集を終了している。また、上記2)を実行するための実験準備も既に進めており、H27年度早々より実験開始が可能である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定する3年の研究期間の初年度であったH26年度は、前項で述べた1)に対応する、a)組織の構成員の情動・認知・能力特性、b)安全関連情報の有する情動・認知・能力への働きかけ特性、c)安全関連情報の構成要素、を規定するための調査/分析と、2)に対応する、構成員の安全管理活動へのモチベーション、構成員と安全関連情報の情動・認知・能力における特性のずれ、安全関連情報の構成要素の階層的構造を定量モデル化するための基礎的実験の一部を行う計画であった。 調査と分析に関しては、データ収集システムを構築し、鉄道事業者、医療従事者を主な対象としたデータ収集及び分析を当初の計画通りに進めており、その成果の一部をH26年9月に開催された日本プラントヒューマンファクター学会大会にて報告している。また、基礎的実験の準備も順調に進んでおり、実験計画及び実験機材の調達は完了しているため、H27年度の初頭から実験を開始できる状態にある。 ただし、データ数は、ビッグデータとして取り扱うにはまだ十分ではない。この点は、当初の計画を満たせてはおらず、引き続きデータ収集を続けている。
|
Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、H26年度に構築したデータ収集システムを用いたデータ収集を継続しながら、それらを用いて立てた仮説を検証するための実験の実施、及び実験結果に基づいた、安全管理活動に対するモチベーションのモデル化に着手する。具体的には、複数の安全関連情報を被験者(H26年度の調査対象者計50人)に提示して、その際の生理反応を計測する実験を行う。なお、記録項目には、先行研究にて人の内発的動機づけに有意な反応を示すことが明らかな指標、すなわち、行動指標としての瞬目頻度、生理指標としての脳血流量(O2Hb濃度)、瞬時心拍数、皮膚電位活動を設定する。 実験データより、モチベーションの程度cを各種生理指標p1,p2,…,pnより定量値として求め、さらにベイジアンネットワークを用いた数値シミュレーションにより、各構成員の内的特性と安全関連情報の特性との間の「最適なずれ」を導出したい。 また、さらに、上記モデルを逆関数化し、個々の構成員の情動・認知・能力のデータが与えられれば、その構成員にとっての「最適なずれ」が決まり、さらにその「最適なずれ」を実現する安全関連情報の構成要素の条件が導き出されることを想定しており、この手法を構築する。これによって、個々の構成員のモチベーションをその時点で最大化する提供情報の導出手法を確立することができると見込んでいる。
|