2015 Fiscal Year Research-status Report
安全管理活動の成熟化にビッグデータを活用する:モチベーションを持続させる情報提供
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26350458
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中西 美和 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70408722)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モチベーション / 安全管理活動 / ビッグデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度の研究進捗は、概ね当初の予定通りであった。特に、27年度は、26年度に収集したデータの拡張と、それらを用いたモデル構築に注力した。データ収集のための実験は、大手鉄道会社、医療法人、化学メーカのプラント、空港会社の従事者計70人に対して行っており、全て有効なデータであることを確認している。また、モデル構築については、モデルを独自に構築し適用することによって仮説に近い傾向を見いだしている。 これらの成果報告に関しては、28年度の国際会議で(Applied Human Factor & Ergonomics International 2016)で予定しており、既に採択されている(タイトルは「Stimulation of voluntary motivation toward safety man-agement activities: activity inactivation by mannerism」)。また、2報の論文投稿の準備も進めており、日本プラントヒューマンファクター学会の発行する「ヒューマンファクターズ」に「安全管理活動に対する自発的なモチベーションを刺激する情報提供手法-マンネリ化による活動の不活性化を防ぐために-」と題した1報を、また、日本人間工学会の発行する@「人間工学」に「作業能力と課題難易度の差異が内発的動機づけに与える影響-訓練・練習における目標レベル設定への応用をねらいとして-」と題した1報を近日中に投稿予定である。それ以外にも、安全管理活動へのモチベーション向上の重要性について、27年度6月に開催された日本人間工学会第56回大会の安全人間工学研究部会企画のセッションで提言(タイトルは「レジリエント・コンピテンスを抽出する方法としてのCritical Decision Method」)しており、この領域における新たな視点での議論を誘発している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ハイリスク産業における組織を対象に、安全管理活動への自発的なモチベーションを維持・向上させるための方策として、組織の従事者の内的特性に応じて効果的な情報を提供するシステムの構築を目指している。このシステムの核となるモデルは、各従事者の情動、認知、能力と、各安全管理情報とを同一空間上でマッピングし、相互の距離を定量化することによって構築することを考えている。ここまでの研究過程で、当初計画のほぼ予定通り、以下2段階のサブ課題を遂行している。 1)従事者各人の内的特性と安全管理情報との距離の定量化:第一に、医療、航空、鉄道、プラントの計8組織において公開している報告書及び関係者へのヒヤリングをもとに、計95種類の安全管理活動に関する情報を収集した。第二に、これらをクラスタ分析によって、13系統に大別した。第三に、従事者各人の内的特性と安全管理情報との距離を規定するために、上記業種の組織従事者70人を対象に、13の安全管理情報のカテゴリに対して、楽しさ(情動)、効果(認知)、習得(能力)、さらにモチベーションの程度を問うアンケートを実施した。第三に、得られたデータにScheffe法を用いることで、従事者各人の内的特性から見た各安全管理情報に対する態度を3軸で構成される空間内にマッピングした。 2)両者の距離とモチベーションの程度の関係性の傾向把握:各安全管理活動について、情動・認知・能力の3軸で構成される空間内の位置とモチベーションの程度の関係を分析し、空間を2刻みのグリッドで切った125個のエリアごとに、モチベーションの程度の平均値を算出した。結果、各従事者は、その内的特性から、情動、認知、能力のいずれかの観点で+3の距離に安全管理情報に対して、取り組みのモチベーションが上がることを意味している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、27年度までに構築したモデルを逆関数化し、個々の従事者の情動・認知・能力のデータが与えられれば、その従事者にとって安全管理活動に対するモチベーションが最大化する条件が導き出されると考え、その手法を具現化する。ねらいは、ハイリスク産業における個々の構成員の安全管理活動に対する自発的なモチベーションを持続的に高めるため、各時点でどの種の安全関連情報を提供すべきかを導出し、それを実現する情報提供システムを構築することである。28年度で遂行する予定のサブ課題は以下2段階で説明できる。 1)従事者の安全管理活動に対するモチベーションを最大化する安全関連情報提供システムの構築:前年度までで構築したモデルは一定規模のデータによるものであるが、実場面での運用に当たっては、多数のハイリスク産業に携わる従事者から継続的にデータを収集し、モデルを常に更新、精緻化していくことを想定している。そこでまず、このビッグデータ収集のためのシステムを構築する。具体的には、モバイル端末から従事者らがその時点における安全管理活動における情動・認知・能力特性を入力し、処理して、モチベーションを高める安全関連情報を導出するためのマッピングモデルに付置するシステムを構築する。 2)システムの効果を測る実証実験:前項のマッピングモデルを用いて、個々の従事者のその時点での情動・認知・能力の特性に応じて、自発的なモチベーションを高める可能性の高い安全関連情報を提供する実験を実施する。実験対象は、昨年度までの調査対象とした組織(医療2、航空1、鉄道3、プラント1)とする。実験参加者を3つのグループに分け、情報提供を行わないケース、全ての実験参加者に同一の安全関連情報を提供するケース、モデルによって導出された安全関連情報を個別に提供する条件を適用、各グループの実験参加者のモチベーションの程度を経時的に評価する。
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