2015 Fiscal Year Research-status Report
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26350474
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 昭仁 東京大学, 地震研究所, 特任研究員 (50528924)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歴史地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、前近代(明治時代以前)に発生した歴史地震、特に近畿地方の京都・奈良・大津などに被害を及ぼした地震を研究対象とする。当該地域には、歴史時代に幾度の被害地震に遭遇しながらも、当時の工法で造られた建造物が数多く現存しており、研究の対象地域として適切と考える。 研究方法は次のとおりである。はじめに、当該地域における前近代の被害地震について、既刊地震史料集に所収されている史料から信憑性の高いものを選び出す。同時に、史料調査を実施して新たな地震関連史料の収集も実施する。次に、信憑性の高い史料から被害記述を抽出して暫定的な震度を推定し、歴史学の研究成果を用いて被害発生地点の現在地を特定する。そして、被災した建造物の構造・築年数・修復履歴や立地する地盤条件といった、様々な要素を加味して被害程度を総合的に評価し、その被害評価に基づいて暫定的な震度からより厳密な震度を推定する。このような推定震度と被害発生地点から、地理情報システムを利用して推定震度分布図を作成していく。 平成27年度は昨年度に引き続き、未刊行の地震関連史料や建造物の被害評価に用いる諸資料について、調査・収集を実施した。また、1662年に発生した近江・若狭地震における京都盆地での被害について、信憑性の高い史料記述に基づいて暫定的な震度を推定し、他の史料や諸資料を用いて被害発生地点の現在地を検討した。さらに、被災した建造物に関する様々な要素を分析し、厳密な震度の推定を試みた。これらのデータを用いて、近江・若狭地震時の京都盆地での被害について、推定震度や現在地だけでなく、史料名や史料本文などを含む様々な情報を示すことのできる地理情報システムを試作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、京都・奈良・大津などの都市域に被害を及ぼした前近代の被害地震について、既刊地震史料集から信憑性の高い史料を選び出す作業を行っている。また、新たな地震関連史料や被害評価に用いる諸資料の調査・収集と、それらのデータ整理・入力作業も進めている。これらのデータは、史料記述にみられる被害発生地点の震度の推定や、個々の被害発生地点に対応した現在地の位置情報(緯度・経度)を特定する際に、基礎的なデータとなる。 平成27年度は、1662年の近江・若狭地震における京都盆地での被害について、上記の基礎的なデータを用いて個々の被害発生地点に推定震度や位置情報などを付与し、様々な情報を表示できる地理情報システムを試作している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、既刊地震史料集に所収されている史料から信憑性の高いものを選び出す作業や、新たな地震関連史料の調査・収集、被害評価に使用する諸資料の調査・収集を継続して実施する。また、史料記述にある個々の被害発生地点に対応した震度の推定や、現在地の位置情報を特定する作業を行い、別の被害地震を事例として地理情報システムを試作する。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、新たな地震関連史料や被害評価に使用する諸資料の調査・収集と、それらのデータ整理・入力作業が、必ずしも十分に実施できなかった。また、国内外の学会や研究会などにおいて、本研究の途中経過の発表や議論も十分にできていなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、新たな地震関連史料や被害評価に使用する諸資料の調査・収集について、継続して実施する予定である。また、国内外の学会や研究会などにおいて本研究の成果を発表し、様々な分野の研究者などからの意見を踏まえて、歴史地震における被害評価方法や地理情報システムの改良を計画している。
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Research Products
(5 results)