2016 Fiscal Year Research-status Report
富士山の落石と雪代災害の危険度評価と社会周知の研究
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26350477
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
小森 次郎 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 講師 (10572422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 剛 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 准教授 (00468406)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 富士山 / 雪代 / スラッシュ雪崩 / 泥流 / 落石 / 積雪構造 / 気圧配置 / 登山道 |
Outline of Annual Research Achievements |
【雪代研究】:◆これまでの研究で雪代現象は,①スラッシュ雪崩(水を大量に含んだ雪崩),②スラッシュ雪崩+火砕物(主にスコリア)からなるスラッシュフロー,③水+火砕物からなる泥流(安間(2007)のスラッシュラハール)が,①のみ,①+②,①~③,のいずれかが発生したものとされている.しかし,2014年3月に南東斜面の砂沢で発生した泥流,およびスラッシュフローと泥流が同じ谷筋で起きた現象をUAVで上空から見ると,①や②とは連続しなくても泥流は単独で発生しうることが確認された.難透水性の凍結地盤や氷板とその上の積雪との間を,大量の降水(+融雪水?)が流下し,途中でスコリアを取り込み泥流が発生したと考えられる.
◆これまでの研究で,凍結地盤とその上の積雪,および大量の降水と温暖な気温,が雪代発生の条件とされてきたが,後者二つをもたらす気圧配置は,伊豆大島(Op)-輪島(Wp)の気圧差(気圧傾度)でも示すことが可能である.1978年から2017年3月までのその値(Op-Wp)を見ると,およそ 3 hPaを超えると発生事例が増える.ただし,それ以下であっても発生することがある.また逆に高くても発生しない場合があるが,過去7年間のうち2014年は特にその事例が多かった. ◆スラッシュ雪崩や泥流の発生には,上述の条件のほかに積雪層内の氷板の有無も重要と考えられるが(2014年度報告参照),本年度も氷板の形成前のスラッシュ雪崩の発生は確認できなかった. ◆積雪期の噴火現象の比較対象として,2016年5月に小噴火を起こした新潟焼山火山の火山灰調査を行った.その結果北方への降灰を確認た.直接の確認事例としてこの成果は産業技術総合研究所から噴火予知連絡会等へ報告された. 【落石研究】:◆右足小指の負傷により2016年度夏季にも予定していた落石調査が実施できなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2016年夏までに進めて置く予定であった落石研究が特に遅れている.これは,右足小指の怪我により2016年には現地に赴くことが殆どできなかったためである. また,それらの成果が未完であるため,富士山の落石と雪崩に関する地元市民をはじめとした一般への紹介,啓発・普及が行われていない.雪代研究については,ほぼ求めるべき結果は取得した.
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Strategy for Future Research Activity |
夏季の落石危険箇所(富士宮口8.5合目~山頂)の調査を重点的に行う.特に,危険箇所を含む岩峰を中心にその地図化,および災害発生時の崩壊土砂量の見積もりを行う.
この落石に関する研究と,雪代研究とをあわせて,主に地元向けの山岳防災をテーマとしたアウトリーチ活動を実施する.
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Causes of Carryover |
無雪期の山頂周辺での落石調査を,外部委託も含めて実施する予定であったが,左足小指の怪我により調査が中止されたため.また,冬季の調査もその影響が残ったため現地調査を頻繁に行う事ができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に怪我は回復し,UAVによる調査も順調に進められている.ただし,山頂周辺は更に技術を要すると考えられるので,外部委託も含めて実施を進める.現在残っている予算は主にそれらに充てる予定である.
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Remarks |
2016年10月12日:日本火山学会2016年秋季大会の現地討論会の案内者として火山学会関係者34名を対象に,富士山東斜面のスラッシュ雪崩頻発斜面の解説を行った.
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