2014 Fiscal Year Research-status Report
路面すべり摩擦予測による防滑材湿式散布の適正化手法の構築
Project/Area Number |
26350492
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Research Institution | Public Works Research Institute |
Principal Investigator |
藤本 明宏 独立行政法人土木研究所, 寒地土木研究所, 研究員 (90456434)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 冬期路面管理 / 路面すべり摩擦係数 / 凍結路面 / すべり止め材 / 防滑材 / ホットサンド / スリップ事故 / 冬期交通 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、防滑材(路面凍結に起因したスリップ事故防止のために路面に撒かれる砂・砕石)と加熱水の混合散布(防滑材湿式散布)を考慮した路面滑り摩擦係数(μ)予測モデルの構築を目的とする。 本研究は、研究1「防滑材湿式散布の路面定着性を明らかにする室内実験」、研究2「防滑材湿式散布のμ改善効果を評価するための野外実験」、研究3「これらの実験成果を反映させた防滑材湿式散布を考慮したμ予測モデルの構築と検証」、で構成される。以下に平成26年度における上記の研究1~3の実施内容とその成果を記述する。 研究1では、寒地土木研究所(札幌市)内の低温恒温室にてタイヤ走行模擬試験器を用いた室内実験を実施した。その結果、加熱水の温度を高くするにつれて、また防滑材に対する加熱水の混合割合を増やすにつれて、防滑材の路面定着性はべき関数的に高まることが分かった。また、通過台数と残留防滑材率(=路面上の残留防滑材量/散布した防滑材量)の関係を明らかにできた。 研究2では、苫小牧寒地試験道路(苫小牧市)にて野外実験を実施した。野外実験では、氷膜路面を形成させ、防滑材湿式散布後にすべり抵抗値HFN(μへの換算可)と残留防滑材量の計測を実施した。また、研究3で使用する気象条件も併せて計測した。実験の結果、HFNと残留防滑材量の関係を明らかにできた。室内実験と野外実験より、走行速度や輪荷重は限定されるものの、時間交通量と散布量から、防滑材湿式散布後の残留防滑材量とHFNの推定が可能になった。 研究3では、研究1、2で得られたHFNと残留防滑材量の関係および通過台数と残留防滑材率の関係を組み込んだ予測モデルを構築した。今後、実測値と計算値の比較を行い、モデルの妥当性検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1に関して、当初の予定していた全ての条件で室内実験を実施することはできなかったが、室内実験の目的であった通過台数と残留防滑材率の関係を明らかにできた。また、最適な加熱水の温度と防滑材に対する加熱水の混合割合を明らかにすることができた。 研究2に関して、2日間の実験の内、天候不良により1日しか期待していたデータを取得できなかったものの、野外実験の目的であったHFNと残留防滑材量の関係を定式化できた。 研究3に関して、モデルの検証を完了させることはできなかったが、検証のためのデータを取得し、モデルを改良した。今後、モデルの検証を実施する。 以上、モデルの検証が残されているものの、当該年度に予定していたモデルの構築に必要な知見を良好に得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1に関して、実験計画を一部変更する。具体的には、走行速度を変化させる室内実験から湿式剤の塩分濃度を変化させる室内実験に変更する。理由として、当初予定していた通過速度20km/hは安全側の検討になるため実験の優先度が低いと判断した。湿式剤の塩分濃度を変化させる室内実験の必要性を以下に述べる。 極低温下で実施される防滑材湿式散布では、散布車の水循環系統に関連する装置の凍結・破損を防ぐために、(A)湿式剤の温度を常温に保つか、あるいは(B)塩分を加えて湿式剤の凝固点を下げる必要がある。本課題は(A)に着目し、防滑材の路面定着性を高める研究に位置付けられる。現状の冬期路面管理は(B)であり、塩分濃度30%の塩化カルシウム溶液を用いて湿式剤の凝固点を下げている。しかし、この塩化カルシウム溶液の凍結し難い性質が防滑材と路面との定着を阻害していると考えられる。本研究において、(A)については輪荷重を変化させたときの防滑材の路面定着性の室内実験が残されているものの、平成26年度の研究で概ね必要な知見を得られた。そこで、今後は(B)にも着目し、湿式剤の塩化カルシウム溶液の塩分濃度を低下させた時の防滑材の路面定着性を定量的に評価する室内実験を加える。湿式剤の塩分濃度を低下させることができれば、散布コストの削減と路面定着性の向上の両方に寄与する。 以上より、今年度は前年度と同じ実験方法で湿式剤の塩分濃度を変化させた室内実験とタイヤの輪荷重を変化させた室内実験を実施し、μ予測モデルの改良と検証を行う。昨年度の予算の執行状況より、室内実験の実施費用で科研費の受入額にほぼ達すると予想されるため、野外実験には科研費を投入しない方針であるが、別の予算で野外実験を実施した場合にはその結果を用いてモデルの検証を行う。
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Causes of Carryover |
当初の実験計画のとおり研究を進めた。次年度使用額は旅費や室内実験補助等で発生した差額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度予算と合わせて室内実験補助費に使用し、室内実験の内容を充実させる。
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