2014 Fiscal Year Research-status Report
機械的触覚刺激による事象関連電位を用いた意図情報の抽出
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26350496
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
堀 潤一 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80209262)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ブレインコンピュータインタフェース / 触覚刺激 / 事象関連電位 / オドボール課題 / 触覚ディスプレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
言葉や動作によるコミュニケーションの代替として,視聴覚に頼らないインタフェースが望まれる.本研究では,触覚刺激を提示したときの脳電気活動より,ユーザの意図情報を抽出するブレインコンピュータインタフェース(BCI)を開発することを目的とした.そのために,機械的触覚刺激装置を用いた意思伝達システムを構築し,触感覚に関する事象関連脳電位の諸特性を調査した. 脳波を用いて意思伝達を可能とするBCIとして,事象関連電位P300を用いた方法がある.P300は認知・識別を要する課題で誘発され,頻度の異なる感覚刺激を提示するオドボール課題が用いられる.従来の研究の多くは,感覚刺激として視覚または聴覚が用いられてきた.しかし,視聴覚に障害がある場合限界があり,また重要な情報源である視聴覚機能を温存したいという要望もある.本研究では視聴覚に代わる刺激として触覚に着目した. 具体的には,触覚刺激装置によって異なる刺激を使用者の示指に提示し,使用者はどれか1つの刺激に注目した.そのときの脳波を増幅,フィルタリング,セグメンテーション,正規化を行うことにより,雑音・アーチファクトを低減し,P300を検出することで,BCIの出力を決定した.触覚刺激装置は点字ディスプレイに使用されるピエゾ式アクチュエータを用いた.判別にはステップワイズ線形判別器を用いた. 実験の結果,2選択の場合約80%,4選択の場合約60%の精度で識別できた.刺激提示間隔を短くした場合,少数の電極で判別すると確度は低下したが,電極数を増やすことで,判別確度を維持できた.触覚刺激の種類を変化させて実験を行ったが,判別確度はほぼ同程度となった.本研究で開発したBCIによってチャンスレベルよりも高い確度で判別ができ,触覚刺激による事象関連電位を用いたBCI実現の可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は,被験者に対して触覚刺激を提示し,特定の刺激に対してのみ注意を傾けることによって意思の出力を決定するシステムを構築することである.この目標を達成するため,平成26年度は,触覚刺激型BCIシステムを構築し,平成27年度以降は,まず健常者を対象とした実験を実施して,評価・改良を行い,その成果をもとに実際の障害者へ適用する計画であった.平成26年度実施予定の多チャンネルBCIシステムの構築はほぼ完了し,平成27年度実施予定の健常者を対象とした実験にも取り掛かっている. 具体的には,制御用PC,触覚刺激装置,触覚刺激用プローブ,並びに携帯型脳波計よりBCIシステム構成した.点字ディスプレイとして使用されるピエゾ式触覚刺激装置を用いてBCI用触覚刺激提示制御システムを構築した.今回は刺激プローブを増設し,多チャンネル化を実現した.これにより,左右の手指,手足など離れた身体部位を刺激できるため,空間分解能の向上,精度の向上,効率化が期待できる.結果として,2選択BCIから4選択BCIへ拡張できた.さまざまな条件下での計測データをもとに,触覚刺激誘発電位に対応した特徴抽出法,特徴判別法を検討中である. また,実際のユーザを想定し,在宅など実環境での使用を踏まえて,可搬性の携帯型脳波計とペーストレス型アクティブ電極を用いた脳波計測システムを構築した.実環境では,雑音の影響を十分考慮する必要がある.本研究では,環境雑音や体動,瞬目などのアーチファクトを考慮した特徴抽出法,判別法を検討した.さらに,簡易計測システムでは電極数に制限がある.そこで,空間サンプリングの原理に基づき,限定領域における高分解能脳機能イメージングを実現した.これにより,注目する体性感覚野の脳活動の特徴を容易に抽出できることが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果をもとに,健常者を対象とした触覚刺激型BCIの実験調査を継続して行い,実用化を目指す.具体的な実験計画を以下に示す. 拡張した触覚刺激システムを用いて左右示指にパターンの異なる2種類の触覚刺激を提示し,あわせて4クラスの判別を実施する.つまり,4種類の刺激のうちの1つに集中すれば,高頻度刺激(75%)に対し低頻度刺激(25%)のオドボール課題を実現できる.被験者は,各刺激に意識を集中するタスクを複数回実行する. 刺激後300ms付近の脳波電位に注目し,増幅,フィルタリング,セグメンテーション,平滑化,正規化より特徴抽出を行う.フィッシャー線形判別器を用いて,特徴量から4つの意思状態を判別し,結果を被験者にフィードバックする. 交差検証法により判別精度を評価し,刺激提示法の最適化を図る. 健常者を対象とした実験を通して,触覚刺激による事象関連電位の諸特性を調査する.刺激提示のパラメータとして,触覚刺激部位,刺激数,刺激の空間パターン,刺激間隔を考慮し,意思伝達への適性を調査する.触覚刺激型BCI実現に向けて最適な特徴抽出法,判別法,ならびに検証法についても検討する. 実験結果を踏まえて,実際の障害者へ適用する.新潟ALS協会の協力のもと,実際のユーザや介護者,医療従事者から意見をいただき,システムの評価,改良を行う.実環境での脳波計測では,雑音情報を考慮した脳機能可視化手法の研究成果を適用することにより,高精度化を目指す.
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Research Products
(3 results)