2015 Fiscal Year Research-status Report
グリア由来伝達物質が制御する小脳神経回路分化の分子的カスケード
Project/Area Number |
26350498
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
吉田 祥子 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40222393)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穂積 直裕 豊橋技術科学大学, 国際協力センター, 教授 (30314090)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 小脳神経回路発達 / 胎生期神経毒性 / ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 / 自閉症 / 動物モデル / 酵素光学測定 / 小脳小葉過剰形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、神経回路形成に介入するヒストンジアセチル化酵素(HDAC)阻害剤を用いて、グリア細胞性小脳分化制御における神経分化因子Reelinと関連するリン酸化カスケードの関与を、新規の光学・物性測定デバイスを用いて明らかにすることである。平成27年度には、第一にこれまで組織レベルでの測定を行ってきた光学デバイスを細胞レベルの測定に対応できるよう、新規開発を行った。新規デバイスは二重の光路を持ち、細胞の微弱な信号を測定できるよう自家蛍光、背景光を除去する画像処理を行うシステムとした。これを用い、HDAC阻害剤バルプロ酸を投与したラット由来のグリア細胞と、対照動物のグリア細胞における、培養下での神経細胞の分化誘導能を比較したところ、バルプロ酸投与動物由来のグリア細胞に強く神経分化を誘導することが観察された。第二に、バルプロ酸投与動物の小脳の小葉構造が、一時的に過剰に形成されその後神経細胞死を伴って消失することを観察した。このとき顆粒細胞は増殖抑制を受けていることが見られ、グリア細胞主導の小葉形成であることが示唆された。第三に、局所刺激に対するバルプロ酸投与動物の小脳回路での反応を観察したところ、広い範囲に伝わる抑制的な反応が強く出現し、個々の神経細胞の異常だけではなく広範囲に影響を与える細胞系、すなわち抑制性のインターニューロンやグリア細胞の活動に影響が表れていることが示唆された。この局所刺激に対する高速反応の測定のために、光学測定デバイスの表面分子の設計を変更し、成熟した回路の測定を可能にした。デバイスを中心に行った今年度の進捗は、最終年度でReelinの分子的な影響を見る上で大きな力になると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、細胞レベル、微細レベルでの測定のためのデバイス開発を中心に行った。そのなかで、小脳の小葉構造に一時的に大きな変化が現れることを発見し、それが顆粒細胞の増殖増大ではなく抑制であることなど、研究仮説に合致した結果を得ている。また、グリア細胞の分化誘導能を直接観察するため、ES細胞、未分化顆粒細胞のスフィア培養法を導入し、細胞の相互作用を観察できるようにした。これらは平成28年度の先取り研究であり、 技術レベルで大きな向上となった一方、分子レベルでの観察にやや遅れが見られた。 化学物質によって誘導される自閉症モデル動物において、小脳小葉の一時的な過剰形成が見られることはこれまで報告も予想もされておらず、この現象とReelinの関係が大変興味深い。
|
Strategy for Future Research Activity |
自閉症誘導化学物質を投与された動物由来のグリア細胞におけるReelin、Notchシグナルの発現を観察し、これらと小脳小葉の一時的な過剰発現との関係を解明する。さらに小脳小葉の過剰形成が現れる時期、およびこの過剰な小葉が消失する時期のGABA放出の異常を測定し、自閉症動物モデルの小脳で進行する変化を観察する。グリア細胞の分化状態に着いて近年研究が進んでおり、GLAST、EAAT1などの発現の変化を見ることで、グリア細胞が小脳神経回路形成で果たしている役割を解明する。
|