2015 Fiscal Year Research-status Report
生体組織の力学的適応におけるコラーゲン分子間の力学的相互作用の解明
Project/Area Number |
26350519
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山本 憲隆 立命館大学, 理工学部, 教授 (40210546)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 生体分子 / 細胞・組織 / 再生医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸可溶性 Type I コラーゲン溶液から原線維を再構成させ,この過程で起こるコラーゲン分子間の力学的相互作用をQCMを用いて解析するとともに,再構成原線維の引張試験と微細構造観察を行った. 溶液に流れを与えながらコラーゲン原線維を再構成させ,そのときに起こるコラーゲン原線維間や分子間の力学的相互作用を解析するためのQCM装置を開発した.希塩酸で濃度を調整したコラーゲン溶液を送液ポンプを使用して,温度37℃のインキュベーター内に設置した水晶振動子を取り付けたフロー型セルに流し込んだ.次に,再構成用緩衝液を流してコラーゲン原線維を再構成させた.送液ポンプを制御して,流速や流れの方向を変化させて,コラーゲン分子に種々の力学的刺激を加えた.得られた周波数の変化量から原線維の再生量や原線維間の力学的相互作用について解析した.その結果,コラーゲン原線維の再構成において,流れを与えても吸着する原線維の配向に影響は現れなかったが,コラーゲン濃度が高いと長い原線維が多数再構成されることが明らかになった. 再構成原線維の力学的性質は独自に開発した引張試験システムを用いて調べた.その結果,本実験で得られた直径367±24 nm(平均±標準誤差)の再構成原線維の引張強度は77.9±28.4 MPa,破断ひずみは38.7±7.6 %,接線弾性係数は188±37 MPaであった.これらの値とラット尾腱より摘出した原線維の力学的性質の間で有意差はなかった.以上の結果から,再構成された原線維は,生体内の腱を構成している原線維と同等の力学的性質を有することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶液に流れを与えながらコラーゲン原線維を再構成させ,そのときに起こるコラーゲン原線維間や分子間の力学的相互作用を解析するためのQCM装置が完成し,流速や流れの方向を変化させて実験を行うことができた.有用なデータが得られており,当初の予定通り研究は順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に実施した流れによる負荷下での原線維の再構成実験において,さらにコラーゲン溶液の流速や流れの方向などの種々のパラメータを変えて実験を行い,再構成過程で起こるコラーゲン原線維間や分子間の力学的相互作用を解析する. 以上の実験より得られた分子レベルでの結果と,これまでに蓄積してきたミクロおよびマクロなレベルでの腱や靭帯の力学的反応に関するデータを比較・検討することによって,力学的環境の変化に対する生体組織の力学的適応のメカニズムを解明する.
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも薬品等の消耗品費が必要なかった.また,成果発表のための国内旅費を大学の旅費で賄うことができた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
原線維の再構成実験において,コラーゲン溶液の流速や流れの方向などの種々のパラメータの影響について検討するために,平成27年度よりも多くの実験を行い,薬品等の消耗品費として使用する.
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Research Products
(4 results)