2014 Fiscal Year Research-status Report
簡易動物実験データを用いた薬物誘発性不整脈予測のための薬物作用推定システム
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26350520
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
天野 晃 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60252491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野間 昭典 立命館大学, 生命科学部, 教授 (00132738)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬物作用 / 心筋細胞モデル / イオンチャネル / パラメータ最適化 / 吸引電極 / 活動電位波形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,外注によるデータ収集に先立ち,ランゲンドルフかん流心を用いた吸引電極法によって計測される活動電位波形が,どの程度の安定性を持っているかを確認する事前実験を行った.現在までに,吸引電極法による計測と解析は行ってきたが,大規模な安定性解析を行っていなかったので,システムの精度確認を行うために,一つの心臓に対して,実験準備後,時間経過や計測位置によってどの程度,活動電位波形が変化するかを確認した. この結果,実験条件を変えない状態でも,計測ごとに,活動電位長が15%程度の変動を示すことが確認された.計測位置による変動としては,心先部において活動電位長が短くなり,心房に近い部分で活動電位の形が変化する傾向が見られた.この結果から,単純に計測波形を一つ取り出してパラメータ最適化を行っても安定した薬物作用解析ができない可能性が示唆された.しかしながら,5か所程度で計測された波形に対してパラメータ最適化を行った場合,5つのイオンチャネルのうち,3つのイオンチャネルに関する推定はかなり安定していることがわかった. また,パラメータ最適化に関しては,大規模な活動電位波形データを用意して,類似性の高い波形を推定する手法を取っているが,学習データのデータサイズと推定の安定性に関係があることがわかった.学習データが大規模になると,最適化に要する時間が極端に長くなるので,高速化のために,学習データに対して事前に活動電位長を計測しておき,評価用の動物実験データの活動電位長に近いもののみを解析対象とすることで,10倍から100倍程度の高速化を達成することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,動物実験データの計測に関しては,外注による計測で実用性を高めることを目指していたが,外注する際の指示書を作成する段階で,計測データの安定性解析を行っておくことが必要であると判断し,活動電位波形の評価を行った.この部分,3年間継続して評価する予定ではあったが,システム全体の精度に直接的に関わる部分であり,最適化のアルゴリズムにも密接に関係するため,より詳細に検討を行うこととした.この結果,従来の生命科学的な文献データからは得られない,安定性等に関する知見が得られたことは,生命科学の工学的応用という観点からは極めて有益なことであったと考えられる. 一方,最適化部分に関しては,事前に準備する学習データと解析精度との関係解析で重要な知見が得られており,また,細胞モデルをいくつか用意して,全体としてより精度の高い推定を行う可能性も見えてきており,計画より大きく前進したと考えられる. 総合的には,概ね順調に進展していると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,まず,動物実験データの計測方法として,現在までに行ってきたランゲンドルフかん流心を用いた方法以外に,in situ での吸引電極法を評価する.予備実験の結果では,in situ での心電図波形は,極めて安定性が高く,吸引電極を用いた計測でも,活動電位長はほぼ変化しないことが確認できている.しかしながら,体温変化等によって環境が変化する影響を受けることから,状態を安定させる方法を検討する.また,薬物を投与する場合,体内で代謝されることになるので,簡単な薬物動態モデルを導入して,時間経過を考慮した最適化を行う必要がある. また,最適化システムに関しては,複数の細胞モデルを用いて,刺激頻度が異なるデータを同時に扱うことができるように,システムを改良する.予備的にシミュレーションを用いた解析では,複数の刺激頻度データを用いることで,予測精度が向上する可能性が示唆されているので,この部分を,システムとして取り入れることで,計測方法と整合性のあるシステムを構築する.
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Causes of Carryover |
今年度は,当初計画していた外注によるデータ収集について,データ収集の指示書作成段階で計測の安定性を確認する必要が出てきたことから,この部分を次年度に実施するように計画を変更した.このため,外注費を次年度に繰り越すこととした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は,更に,動物実験における計測データの安定性について,より推定精度の向上が見込める計測方法の修正を行っていく.また,現在までに得られた計測方法を用いて,学内の研究所の協力を得て,将来ベンチャー企業として企業化を検討しているグループにデータ計測を依頼することとする.
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Research Products
(9 results)