2014 Fiscal Year Research-status Report
生体吸収性セラミックスβ-TCPの新規ワクチン・アジュバントへの応用開発
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26350524
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Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
丸山 宏二 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (20311417)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | β-TCP / 樹状細胞 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、実験計画としてマウスのマクロファージ(Mφ)と樹状細胞(DC)に対するβ-TCPの影響を調べるin vitroの実験と、マウス腫瘍モデルにおけるがんワクチンの抗腫瘍効果に対するβ-TCPの増強作用を調べるin vivoの実験を行った。 In vitroの実験においては、β-TCPはMφとDCの成熟化促進作用を有することが認められ、成熟に伴い発現の増加する特異的表面抗原(Mφ: F4/80とCD11b、DC: CD11cとMHC classII)の発現が増加した。また、T細胞やNK細胞の活性化に重要な共刺激分子の発現は、MφではCD86の、DCではCD80とCD86の発現が有意に亢進した。MφとDCの培養系にβ-TCPを添加し、培養上清中に分泌されるサイトカインやケモカインを調べたところ、MφとDCに共通してMCP-1、MIP-1、MIP-2の各ケモカイン及びサイトカインIL-1raの産生が有意に亢進していた。β-TCPによるインフラマソーム活性化に関する研究では、インフラマソーム活性化を証明するための主な実験を実施し、ポジティブなデータが得られている。 報告者らは、マウス腫瘍モデルにおけるがんワクチンの抗腫瘍効果に対し、β-TCPは増強作用をもつことを既に示している。本研究においてはこの抗腫瘍効果をさらに増強するため、Toll-like receptor (TLR) リガンドのひとつ、TLR3アゴニストのPoly(I:C)との併用試験を行った。試験によって多少のばらつきはあるものの、併用投与群の50%以上の動物において腫瘍の増殖が認められず、抗腫瘍効果が大幅に増強された。抗腫瘍試験と同様な薬剤投与を行って免疫細胞の状態を調べたところ、併用投与群において本実験系のがんワクチンとして用いたOVA蛋白に特異的な細胞障害性T細胞が増加している傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の実験計画のうち、「マウスMφとDCの初代培養系を用いる検討」では、(1) MφとDCの成熟に対する影響、(2) 抗原提示細胞によるサイトカイン及びケモカイン等の産生に対する影響、(3) インフラマソームに対する影響の三つの項目を立て、研究を進めてきた。その結果、(1) と (2) に関しては、実験が終了しており、β-TCPはMφとDCの成熟化促進作用を有すること、及びMφとDCの両者に対して複数種のサイトカイン及びケモカインの産生を促進することが明らかになり、現在論文の投稿準備中である。(3) に関しては、β-TCPがインフラマソーム複合体を活性化する作用をもつことが既に示唆されており(報告者による実験成績)、本研究においてはこの事象を証明するための実験実施が予定されている。現在、in vitroの実験で得られた試料についてウエスタンブロッティングやELISAによる蛋白の分析を行っている。これまでに得られているデータから、β-TCPがインフラマソーム複合体を活性化することはほぼ間違いない。 また、平成26年度のもうひとつの実験計画、「マウス腫瘍モデルを用いる抗腫瘍試験」においては、がんワクチンの抗腫瘍効果に対するβ-TCPの増強効果をさらに強めることを目的に、TLRリガンドであるPoly(I:C)との併用試験を行い、極めて強い抗腫瘍効果を得ることができた。この併用投与群においては、がん抗原特異的細胞障害性T細胞が増加する傾向が示されており、抗原特異的IgG抗体の有意な増加が確認されている。 以上の結果より予定されていた研究計画はほぼ予定通りに進捗したものと判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画は、ほぼ予定通りに進捗させることができた。平成27年度には、本研究のひとつの大きな柱であるインフラマソーム複合体の主要蛋白であるNLRP3を欠失するNLRP3ノックアウトマウスを用いた実験を予定している。同ノックアウトマウスは、当初の予定通り米国Jackson研究所から導入することができたが、諸般の事情により当研究所への導入は本年の3月上旬になった。導入後、すぐに繁殖を始め、既に当初として初代の産仔を得ることができ、遺伝子型を確認したところ目的とする組換え動物であることが確認された。このような状況を踏まえ、平成27年度に入って早い時期からNLRP3ノックアウトマウスを用いた実験を始めることができ、研究は問題なく進捗させることができると考えている。
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Causes of Carryover |
本研究で使用するNLRP3ノックアウトマウスは、平成26年度中に当研究所に導入予定であったが、上述のように諸般の事情から年度最後の3月上旬に納入された。当研究所への導入に際しては、当該動物または当該動物の近傍で飼育した「おとり」動物を用いた微生物検査が必要であり(当研究所の規則による)、この検査をパスできなければ外部の企業に依頼して当該動物の帝王切開または受精卵移植によるクリーニングを実施しなければならず、ある程度の研究費を動物の導入までストックしておく必要があった。このような事情のため、平成26年度に予定していた金額をすべて使い切ることができず、平成27年度に繰り越させて頂く形となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度には、上記のようにクリーニングに要する費用を考えて研究費の支出を意識的に制限していたが、もうその必要がなくなったため、平成26年度からの繰り越し分と平成27年度の経費を合わせた額を使い切る予定である。
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