2015 Fiscal Year Research-status Report
高圧力を活用した生分解性を有する新奇バイオマテリアル創製
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26350527
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山元 和哉 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40347084)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高圧力 / ナノ材料 / キチン |
Outline of Annual Research Achievements |
反応場として高圧力に着目し、ラクトンの配位アニオン開環共重合およびキチンの構造化に適用することで、生分解性を有する新奇バイオマテリアルの創製を目的とした。 まず、γ-ブチロラクトン(γ-BL)とβ-ブチロラクトン(β-BL) の配位アニオン開環共重合を検討した。開始剤にメタノール(MeOH) 、触媒にトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)を用いて、印加圧力350 MPa, 40℃ で48 時間重合を行った結果、重合はMeOHから開始し、配位アニオン開環重合によって成長反応が進行したことが示唆された。また圧力印加により転化率の増加が確認され、γ-BLの仕込み比に対する共重合体中のγ-BLの導入率の増加も確認された。しかしながら、数十万程度の高分子量体の調製までは至っていない。 一方、天然多糖としてキチンを臭化1-アリル-3-メチルイミダゾリウム(AMIMBr)に溶解させ、前処理として高圧過程を適用したキチン/AMIMBr溶液からの再生によるナノ粒子の創製について検討した。AMIMBrにキチンを加え、100 ℃で24時間撹拌することでキチン/AMIMBr溶液を調製し、室温で1時間、1000MPaで圧力印加した。次に、この高圧処理キチン/AMIMBr溶液をMeOH中に浸漬し、超音波処理により分散液を得た。得られたMeOH分散液をガラス基板上で乾燥させてSEM観察を行ったところ、ファイバー状および粒子状の形態が観察された。このような形態は600MPa以上の高圧力を適用していないキチン/AMIMBr溶液では観察されなかったことより、キチン/AMIMBr溶液に圧力を印加することで、何らかの相互作用によりキチンが構造化することが示唆された。現在、ナノ粒子の構造解析および構造化のメカニズムの解明を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高圧力下でのγ-BLとβ-BLの配位アニオン開環共重合について、開始剤にメタノール(MeOH) 、触媒にトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III) (Sc(Tf)3)を用いて、仕込み比β-BL/γ-BL/MeOH/Sc(Tf)3 = 50/50/1/0.1 で印加圧力350 MPa, 40℃ で48 時間重合を行った。1H NMR測定により、β-BLは完全に消費され、また高分子に由来するピークが観測された。これより重合はメタノールから開始し、配位アニオン開環重合によって成長反応が進行したことが示唆された。また、大気圧中に比べ圧力印加により転化率およびγ-BLの導入率の増加が確認された。しかしながら、数十万程度の高分子量体が得られておらず、フィルムなどの材料化まで至っていない。 一方、キチンをAMIMBrに溶解させ、前処理として高圧過程を適用したキチン/AMIMBr溶液からの再生によるナノ粒子の創製についても検討した。600MPa以上の圧力を印加したキチン/AMIMBr溶液をMeOH中に浸漬し、超音波処理により分散することで、ナノ粒子状の形態が観察された。このような形態は600MPa以上の高圧力を適用していないキチン/AMIMBr溶液では観察されなかったことより、キチン/AMIMBr溶液に圧力を印加することで、何らかの相互作用によりキチンが構造化することが示唆された。しかしながら、MeOH分散液からのファイバーおよび凝集体との分離が困難であり、現在、遠心分離、ろ別、透析処理により再生キチン(ナノ粒子)の単離を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(H28年度)は、高圧過程を適用したキチンの構造化を中心に検討する。本研究での構造化の駆動力としては水素結合が期待されるため、温度効果および塩添加系を組み合わせて、構造化のメカニズムを明らかとする。また圧力印加による体積の減少(圧縮)により、キチンの分子量低下も考えられるため、粘度測定等による分子量測定を行う。市販のキチン粉末は分子内・分子間での水素結合により強固な結晶性を有していることから溶解性に乏しいため、圧力印加前の溶媒および構造体の単離における溶媒の選択が重要であるので、ジメチルアセトアミド/塩化リチウム溶液やメタノール/カルシウム塩溶液などの可溶性が報告されている溶媒や種々の有機溶媒を再生溶媒として検討する。また部分脱アセチル化キチンやキトサンは、キチンに比べて溶解性が良く、希薄な酸溶液にも溶解するため、これらを用いた種々の条件下での構造化も検討する。濃度調整によって構造体の形態制御を検討し、粒子のサイズ分布等は、動的光散乱装置および光学顕微鏡により評価する。架橋体(ゲル)の場合、膨潤度や力学的特性を評価する。すべての構造体は、XRD測定やTEM観察により結晶化を評価し、構造解析および構造化のメカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
高圧処理に使用する専用容器(テフロン製・特注)の納期がH27年度中に困難であったため、未使用額(約10万円)が生じました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用分(10万円)は、容器等の購入として使用する予定です。
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