2015 Fiscal Year Research-status Report
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26350528
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
長崎 健 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30237507)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超分子 / シクロデキストリン / 転移抑制 / 抗がん剤 / 水溶化剤 / ナノメディシン |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度において確立したBPA/ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-βCD)複合体水溶液を用いて、京大原子炉(KUR)において中性子照射による培養がん細胞の増殖抑制評価や担がんマウスにおける腫瘍増殖抑制効果を評価予定であったが、当初予想されていたKURの再開が実現せず中性子照射実験は実施することが出来ず、新たな知見を得ることは出来なかった。 一方、メラノーマに対して選択性が期待されるものの、水溶性に乏しくBNCT薬剤として評価が困難であったコウジ酸修飾カルボラン化合物(CKA)のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる高効率水溶化法を見出した。興味深いことにCKA/HP-βCD複合体は転移能高いメラノーマ細胞のマウス個体における転移を抑制する事を偶然発見した。メカニズム解明を検討する中で、HIF-1発現抑制能を示すことが明らかとなり、今後BNCT薬剤以外にもメラノーマ転移抑制剤としても期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メラノーマは進行すると骨や肺そして最終的には脳にも転移し非常に予後の悪い悪性度の高いがん種であり、これまでBNCTの主要なターゲットとされてきた。今回、偶然にもBNCT薬剤として開発研究してきたコウジ酸修飾ホウ素化合物がメラノーマ転移抑制能を示し、悪性メラノーマに対する新規治療薬として期待される成果が得られた。今後、医学部皮膚科の研究グループと連携しより詳細なメカニズム解明などを行う予定で有り、これまでの成果は概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
原子力規制委員会は4月13日にKURが新規制基準に適合していると発表し、KURは今夏には運転を再開する予定である。再開後は、体内動態結果から、腫瘍集積性向上のための複合体サイズや表面電荷の最適化を検討する。 そして、京都大学原子炉実験所にて、BPA/CDx複合体を取り込んだがん細胞の増殖抑制評価をWSTアッセイやコロニー形成アッセイ法にて検討する。 また、京都大学原子炉実験所にて、担がんマウスに対して、BPA/CDx複合体の尾静脈投与を行った後、中性子照射を行い、腫瘍増殖抑制効果を検討する。熱中性子フルーエンスとして1x1012 n/cm2、2x1012 n/cm2等を照射し、中性子捕捉反応後のがん細胞増殖抑制効果を検討する。投与量、投与後の時間、熱中性子条件(強度、時間)などを検討し、in vivoにおける腫瘍抑制のための条件最適化を行う。 一方、メラノーマ転移抑制能を示し、悪性メラノーマに対する新規治療薬として期待されるコウジ酸修飾ホウ素化合物について、今後、詳細なメカニズム解明などを行う。
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Causes of Carryover |
京大実験炉での中性子照射実験が完全に中断し、動物使用量が当初の見込みと大きく異なったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度は京大原子炉の運転が再開される予定であるので、動物を使用した中性子照射実験を実施する。
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