2017 Fiscal Year Research-status Report
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26350530
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山田 理恵 (鵜頭理恵) 千葉大学, 大学院工学研究院, 日本学術振興会特別研究員(RPD) (70593169)
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Project Period (FY) |
2015-03-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞外マトリックス / 膵島細胞 / 肝細胞 / 組織工学 / 移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,膵島細胞または肝細胞を用いて,移植可能かつ高機能な組織の作製を目的としている。平成29年度は,高機能な膵島組織を作製するために、マトリゲル(基底膜マトリックス)を微粒子状に加工する技術を開発し,膵β細胞由来株MIN-6の細胞集塊に内包するための条件検討を行った。まず,マトリゲル水溶液からなる非平衡状態の液滴が,連続相である酢酸メチルに徐々に溶解する現象を利用して,マトリゲル成分が濃縮されたマトリゲル微粒子を作製した。多孔質膜の細孔径や作製時の酢酸メチルの攪拌速度を変更させることで,粒子の直径を制御することが可能であった。直径の異なるマトリゲル微粒子とMIN-6細胞を混合培養し,集塊形成挙動を調べたところ,直径10 μmの粒子を用いた場合,集塊内部に粒子が均一に取り込まれる様子が確認された。一方で,直径が25 μmの粒子を用いた場合では,集塊周縁部に粒子が局在していた。これより,マトリゲル微粒子およびMIN-6細胞を含むヘテロ細胞集塊の作製においては,マトリゲル微粒子のサイズが重要であることが示唆された。 また,平成29年度は,肝細胞の3次元培養に応用できる断片化I型コラーゲンファイバーの作製手法に関する条件検討を行った。所属研究グループはこれまでに,マイクロ流路を用いることで直径数μm~数十μmのコラーゲンファイバーを簡便かつ連続的に作製する手法を開発してきた。平成29年度は,肝細胞の3次元組織内に内包することができるようにコラーゲンファイバーの断片化の条件検討を行った。その結果,マイクロ流路で作製したコラーゲンファイバーは,高分子電解質水溶液を含む水溶液中に撹拌しながら回収することで断片化することが明らかとなった。得られたファーバーはコラーゲン本来の生化学的性質を維持しているため,3次元肝組織内に内包することによって肝機能維持に寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
移植に適した高機能な膵島様組織,肝臓様組織を作製するために,平成29年度は,主にマトリゲル微粒子や断片化コラーゲンファイバーなどの作製条件の決定とラット肝細胞やMIN-6細胞を用いた組織作製の条件検討を行った。しかし,当初予定していた作製組織の治療効果を確かめるための移植実験を行うことができなかった。この理由として,平成28年度より所属機関が変更になり,異動先では小動物実験設備が整っていなかったために,平成28~29年度にかけて小動物実験室の施設登録,動物実験委員会への申請,水道工事等の実験系の立ち上げを行ったためである。このため予定していた動物を使用した実験が先送りとなり,研究がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,平成29年度に引き続き微細加工したECMを使用して移植に適した高機能性肝組織または膵組織の作製をin vitroで行う予定である。平成29年度より動物実験を行うことのできる環境が整ったことから,次年度はラットから分離した肝細胞や膵島細胞を用いてECM微粒子もしくはファイバーと混合して培養を行い,定量的PCRおよびElisaなどにより機能解析を行い,ラット肝細胞や膵島に対するECM微粒子,ECMファイバーの至適組成,架橋,サイズ,導入量などを検討したい。また,作製した組織の治療効果を確かめるために、疾患モデル動物への移植を検討している。
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Causes of Carryover |
初年度,実験実施場所の小動物実験室でマウス肝炎ウイルス感染事故が起こり,小動物実験室が半年以上封鎖になった。また,平成28年度より所属機関が変更になったが,異動先では小動物実験設備が整っていなかったために,小動物実験室の施設登録,動物実験委員会への申請,水道工事など,実験系の立ち上げを行った。平成29年度から動物実験を再開することができたが,上記の期間,動物から分離した膵島細胞および肝細胞を用いた組織作製実験および移植実験を行うことができなかった。そのため研究に遅れが生じており,次年度使用額が生じた。 平成30年度は,動物の購入,動物の維持管理,肝細胞分離または膵島分離に必要な試薬類および機能解析に必要な機器・試薬類などに使用する予定である。
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Research Products
(31 results)