2014 Fiscal Year Research-status Report
心疾患の早期診断を可能とする磁気シールドルームレス心磁計の開発
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26350535
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小林 宏一郎 岩手大学, 工学部, 准教授 (60277233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 明宗 岩手医科大学, 医学部, 教授 (20208937)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | SQUID磁束計 / 心磁図 / アクティブ磁気シールド / 三次元可視化 / ノイズ除去法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、心疾患の早期診断を可能とする磁気シールドルームレス心磁図計測システムの開発であり、計測した心磁図の高い信号ノイズ比を実現することである。 1.アクティブ磁気シールを組み込んだワイドレンジ型心磁計の開発を行った。初めに、アクティブ磁気シールド用コイル(打消しコイル)の配置の検討を行った。打消しコイルをSQUIDのデュアーの上部から下部まで変化させた時のシミュレーションと実験を行った。シミュレーションと実験は同様の傾向を示し、上部に設置した時が最も高い遮蔽率が得られた。この時の遮蔽率は、約7.5dBと低い値となった。そこで、新たに打消しコイルとして、SQUIDのフィードバックコイルを用いる方法を提案した。これは、ノイズの打消し信号を心磁図計測用SQUIDに加えることにより、ノイズを遮蔽する方法である。磁界印加による遮蔽実験では遮蔽率27dBとなり、また商用電源信号(50Hz)では遮蔽率17dBとなり、研究目標値の30dBに近い値を実現できた。 2.心磁図のノイズ除去用信号処理ソフトウエア開発を行った。初めに、上記ハードウエアの研究で良い結果が得られたため、一般的な信号処理であるデジタルフィルタと加算平均によるノイズ除去で約40dB(研究目標値40dB)の遮蔽を得られた。次に、更なる遮蔽率の向上とデジタルフィルタが利用できないノイズに対応したノイズ除去法として、独立成分分析を用いた信号処理の検討を行った。今年度は、独立成分分析における遮蔽率に影響を与える成分選択の自動決定方法の検討を行い、アトラクタ解析と回帰直線を用いた定量的成分選択方法を提案した。この結果、人が手動で行う選択と提案した自動選択でほぼ同等の高い相関値が得られた。今後、アルゴリズムの改良と定量的な評価を行う。 3.心磁図の三次元可視化ソフトウエアの開発では、計画通り理論的な検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.アクティブ磁気シールを組み込んだワイドレンジ型心磁計の開発では、アクティブ磁気シールド用コイル(打消しコイル)の配置を、新たな方法としてSQUIDのフィードバックコイルを用いる方法に変更した。その結果、磁界印加実験では遮蔽率27dBとなり、また商用電源信号(50Hz)では遮蔽率17dBとなり、研究目標値の30dBに近い値を実現できた。 2.心磁図のノイズ除去用信号処理ソフトウエア開発では、1で良好な結果が得られたため、デジタルフィルタと加算平均によるノイズ除去で遮蔽率約40dBが得られ、研究目標値である40dBの遮蔽を得られた。さらに、独立成分分析を用いた方法の検討も順調に進んでいる。 3.心磁図の三次元可視化ソフトウエアの開発では、理論的な検討を行い計画通り次年度からプログラムの作成が行える状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り順調に進んでいるため、引き続き申請書の計画を確実に実現する。 1.アクティブ磁気シールを組み込んだワイドレンジ型心磁計の開発では、心磁計システムの改良を繰り返し行う。初年度で打消しコイルの位置を決定したため(SQUIDのフィードバックコイルを利用)、制御回路のノイズ対策やシステム全体でのノイズの引き込みを減らす検討を行う。研究の目標値である遮蔽率30dBを目指す。 2.心磁図のノイズ除去用信号処理ソフトウエア開発では、独立成分分析によるノイズ除去における成分選択の自動決定方法の検討を行う。現時点では、アトラクタ解析やフィッシャーの線形判別分析を用いた成分選択方法を検討する予定である。また、信号処理後の評価方法の提案を行い、最適なアルゴリズムの検討と評価を行う。 3.心磁図の三次元可視化ソフトウエアの開発では、空間フィルタ法を用いて心臓の電気的な活動を可視化する。ここでは、LORETA法を心磁図に適したアルゴリズムに改良を行い、臨床診断に利用可能な三次元可視化法を検討する。ここでは、作成する空間フィルタの図形的な特徴に着目して、推定する信号(心臓の電気的活動)の過度な広がりを低減するアルゴリズム実現する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたアクティブ磁気シールド用コイル(打消しコイル)の配置を早い段階で決定できたため、試作コイルや制御回路用部品などの物品費が大幅に節約できた。また、申請時購入を予定していたデジタルオシロスコープ(25万円)を別予算で購入できたため、節約できた。一方、検証実験を予定より多く行ったため謝金を当初予定より多く使用した。最終的には、約17.6万円の予算を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し予算(約17.6万円)は、今年度不足した謝金として利用予定である。 その他の予算は、計画通り執行する予定である。
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