2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26350540
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
矢野 憲一 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 教授 (70311230)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノ秒電気パルス / 低侵襲癌治療 / パルス幅 / エレクトロポレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ秒単位の極短時間に強い電気的な作用を与える手法であるナノ秒電気パルスは、人体に痛みとして感知されにくく、局所に作用させることができるという特徴を持つ新手法である。本研究はナノ秒電気パルスによる新しい低侵襲な癌治療法の可能性を検証し実用化へとつなげることを目的とする。昨年度は針型の新しい電極を作製し、それを組み込んだシステムを設置した。本年度はこれを用いてナノ秒電気パルスの細胞への作用を解析した。電気パルスは作用時間(パルス幅)に応じて細胞に異なる作用を示すことが知られている。ミリ秒からマイクロ秒の電気パルスは高分子化合物の細胞への導入(エレクトロポレーション)に利用され、ナノ秒電気パルスは微小孔(ナノポア)形成を介したイオン流入と細胞死を誘発する。しかしこれまでは単一機材でパルス幅を大きく変えることができる装置は国内外に存在せず、パルス幅と生体作用の関連性を同一実験条件下で解析することは不可能であった。本研究では5マイクロ秒から250ナノ秒にかけてパルス幅が連続的に可変なパルス発生システムを製作することに成功し、このパルス幅の間での細胞への影響をライブイメージング法により検証した。エレクトロポレーションの有無は細胞膜非透過性色素の取込で判定し、ナノポア形成は細胞のイオンバランス異常に基づく膜構造の変化(ブレッビング)とカルシウム指示薬によって解析した。その結果、エレクトロポレーションは1マイクロ秒を切ると顕著に減少し、ナノポア形成に基づく細胞応答のみが生じるようになった。このことは物質導入のための電気パルスと癌治療のための電気パルスのパルス幅の明瞭な境界を見つけたものであり、ナノ秒電気パルスの低侵襲癌治療への利用における重要な基礎的情報と言える。さらに本年度はナノ秒電気パルスの細胞死誘導メカニズムについても生化学的・分子生物学的手法で解析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に作製した電極を組み込んだ実験システムを使用して、パルス幅可変の電気パルス処理による細胞応答解析を実現することができたのは顕著な成果といえる。また前年度より継続中の細胞死誘導のメカニズム解析についてもさらに発展中で、これまでに報告されていない新たな細胞応答を見つけており、次年度のさらなる研究発展に期待が持てる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に基づき、腫瘍モデルを使用してナノ秒電気パルスの癌治療効果を検証する。初年度から継続中の細胞死誘導メカニズム解析についても実施する。
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Causes of Carryover |
経費の節減と効率的使用に努めた結果、15万円余の研究費を平成28年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度である平成28年度は腫瘍モデルを使用した解析に経費を要するため、これに充当する。
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Research Products
(6 results)