2014 Fiscal Year Research-status Report
熱・圧力の複合低エネルギ接合におけるセンサレス温度制御システムの研究開発
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26350556
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
青代 敏行 松江工業高等専門学校, 電子制御工学科, 講師 (40571849)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 手術機器 / 生体接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
腹腔鏡手術に代表される低侵襲手術で使用するデバイスにおいて,簡単な手術手技・小型化・簡素化は必須仕様になっている.そこで本研究は,簡単な手術手技が可能な低レベル量の熱・圧力の複合低エネルギによる腹腔鏡手術用鉗子型接合デバイスのシステム簡素化を目的に実施した.腹腔鏡手術用鉗子型接合デバイスシステムの簡素化として生体組織接合温度制御用の温度センサを使用しないセンサレスな温度制御システムを構築する.平成26年度は,腹腔鏡手術用鉗子型接合デバイスの設計試作,熱伝導解析による生体組織のタンパク質変性領域と熱エネルギ関係の解析を実施した. 腹腔鏡手術用鉗子型接合デバイスとして,小型化と鉗子部開閉の大角度を両立するために,パンタグラフ機構を採用した.デバイスサイズは閉じた状態で最大直径10mm,全長350mmであり,鉗子部開閉角度は100度である.昇温特性を向上させるためにニクロム線をヒータ先端近傍に配置した.またニクロム線は鉗子部先端を閉じた状態においてデバイス外装部で覆い隠して断熱性を確保した.熱伝導解析と試作型実機によりヒータ入力ワット数を7から9Wと変化させてヒータ昇温特性を測定し,入力8Wにおいて40秒で接合温度80度に到達し,十分な昇温特性を有していることを確認した.またヒータ材料に熱容量の大きいSUS316を用いることで外乱に強い特性を得た. ヒータを生体組織に押し当てた状態を熱伝導解析モデルとして構築し,ヒータを加熱したときのヒータ・生体組織温度分布を解析した.ヒータの生体組織接触部温度は,生体組織と接触しないヒータ上部温度と同程度であり,生体組織のヒータ接触部・接合部温度は,ヒータの温度と同程度であった.また,生体組織温度上昇に関する温度勾配は,ヒータ入力ワット数と線形関係が見られた.これらの結果より,ヒータ温度より生体組織温度を推定することが可能であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に対して,構造タンパク質・コラーゲン繊維の変性領域可視化,変性領域と複合低エネルギにおける熱量と接合強度の関係調査,小型な鉗子型接合デバイスの試作評価を実施した.これまでに熱エネルギに対する生体組織内変性領域に関して,熱伝導解析により特定可能になった.またヒータ温度に対して,生体組織接合部の内部温度を推定することが可能となった.これらの知見より,生体組織変性領域と熱エネルギ量の関係が明らかになった.温度制御対象である腹腔鏡手術用鉗子型接合デバイスの試作を行い,熱伝導解析・実験よりデバイス性能とサイズを満たしていることを確認した.またセンサレスな温度制御技術を確立する前段階として,熱電対を使用したデバイス温度制御実験も実施し,外乱等に影響を受けないヒータ・制御則を構築した. 以上より,研究目的に対して概ね順調に伸展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの知見をもとに,熱伝導解析・温度制御実験による生体組織熱伝導モデルの構築,ニクロム線加熱制御回路の開発,センサレス温度制御システムの開発を行う. ヒータの昇温時間,定常温度を変化させ,生体組織にヒータを押し当てたときの生体組織温度変化を測定し,構築する生体組織熱伝導モデルの妥当性を評価する.また本研究のアドバイザである専門家にもモデルの妥当性を評価していただく. ヒータの発熱量と電流の関係を調査し,これまでに構築した制御回路に対して改良を行う.また,生体組織熱伝導モデルと組み合わせることで状態予測型温度制御則を構築する.
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Causes of Carryover |
当該年度に実施予定だった生体組織接合実験による病理観察実験を実施することがにできず,それに関する機器等の購入,外部機関にて実施する病理観察を実施しなかったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでに生体組織接合実験の実験環境は構築できたため,次年度において生体組織病理観察を実施し,それに際して使用する.
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Research Products
(1 results)