2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26350564
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小幡 博基 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (70455377)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 脊髄 / 可塑性 / 相反性抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,(1)受動的な歩行トレーニングに伴う感覚入力によって脊髄神経回路に可塑的変化が生じるのか,(2)歩行位相に応じた末梢神経の電気刺激による感覚入力印加が(1)へ影響を及ぼすか,について検討することである.本研究では,脊髄神経回路のうち主働筋と拮抗筋のスムーズな切り替えに重要であるIa抑制性介在ニューロンを介した相反性Ia抑制経路の興奮性の変化に着目して研究を行っている. 研究期間の1年目にあたる今年度は,免荷式動力型歩行補助装置を用いた30分間の受動ステッピングと受動ステッピング中の遊脚期および立脚期における総腓骨神経への電気刺激による介入が,ヒラメ筋運動ニューロンの活動を抑制する脊髄相反性Ia抑制経路に与える影響を調べた.脊髄相反性Ia抑制経路の興奮性の変化は,ヒラメ筋H反射に総腓骨神経の条件刺激を与える手法により評価した.受動ステッピングにおける体重免荷はおよそ0%とし,歩行速度は2km/hとした.また,総腓骨神経への電気刺激の刺激間隔は25Hz,刺激強度は前脛骨筋の運動閾値で与えた. その結果,受動ステッピングのみを行った群では,介入前後の脊髄相反性Ia抑制経路の興奮性に変化が認められなかった(n=10).一方,受動ステッピング中の総腓骨神経への電気刺激は,歩行の位相により介入効果が異なった.受動ステッピング遊脚期における総腓骨神経の電気刺激は,介入後の脊髄相反性Ia抑制経路の興奮性を増大させたが(n=10),立脚期の刺激では介入前後で変化が認められなかった(n=3). 本研究の結果は,脊髄相反性Ia抑制経路の興奮性に対する受動ステッピング中の総腓骨神経への電気刺激の効果には,位相依存性がある可能性を示すものである.このことは,Ia抑制経路の興奮性が低下する一部の脳卒中患者や脊髄損傷者のニューロリハビリテーションに重要な基礎的知見となると考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,1年目に受動ステッピング単独の介入効果を,2年目以降に受動ステッピング中の末梢神経電気刺激の介入効果を調べることになっていた.しかしながら,今年度は研究が順調に進んだため,受動ステッピングや末梢神経刺激の詳細な条件設定についての検討は十分ではないが,2年目に計画していた内容の一部まで実施することができた. 歩行位相に応じてヒラメ筋脊髄運動ニューロンの興奮性変化や脊髄Ia相反性抑制経路の興奮性変化については多くの報告があるが,歩行中の電気刺激がこれらの経路に与える可塑的変化の歩行位相依存性については新たな知見であり,十分な成果を得ることができたと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は受動ステッピング中の末梢神経電気刺激が脊髄Ia相反性抑制経路の可塑的変化に与える歩行位相依存性について,引き続き検討を行う.また,受動ステッピングや末梢神経電気刺激の条件設定について詳細な検討を行う.特に,末梢神経電気刺激の刺激周波数は脊髄の可塑性を引き出すために重要な要素であると申請者は考えており,刺激装置の変更や制御・測定プログラムの開発も含めて来年度以降に行う予定である.
|