2015 Fiscal Year Research-status Report
膝前十字靱帯再建術後に早期スポーツ復帰を行うための新しい多角的評価体系
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26350568
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中前 敦雄 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院(医), 助教 (60444684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越智 光夫 広島大学, その他部局等, 学長 (70177244)
出家 正隆 愛知医科大学, 医学部, 教授 (30363063)
安達 伸生 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院(医), 教授 (30294383)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膝 / 前十字靭帯 / スポーツ復帰 / 関節固有感覚 / 動作解析 / リハビリテーション / 生体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、ACL再建術後に安全に早期スポーツ復帰を行うための新しい多角的評価体系を確立することである。初年度は、術後1年経過してからスポーツ復帰を行った群に対する評価(膝関節安定性、再建靭帯の状態、関節固有感覚など)を行い、移植腱への滑膜の被覆は1束・2重束再建術を行った群と比較し、ACL補強術群で有意に良好であること、滑膜被覆が良好な群では術後の膝関節固有感覚(運動覚)の改善も良好であることなどを報告した。27年度はACL再建後の再鏡視の所見を用い、ACL再建後に関節軟骨損傷が進行する危険因子について分析を行い、スポーツ復帰の大きな障害となる軟骨損傷進行の原因を探ってきた。ACL再建後のスポーツ復帰やパフォーマンスレベルに最も大きな影響を与えるのは、膝関節安定性ではなく関節軟骨損傷の程度であるとされており、ACL再建後の関節軟骨損傷の進行はスポーツ外傷における重要なテーマである。我々の研究の結果、正常半月板群と比較し、半月軽度損傷群や半月板縫合群では関節軟骨損傷の進行に有意な差はなかったが、部分切除群では有意に関節軟骨損傷が進行していた。またロジスティック回帰分析の結果、半月板部分切除以外に、内側ではBMI 増加とピボットシフトテスト陽性が軟骨損傷進行の危険因子であった。KT値患健側差が小さい(術後に膝関節が過制動されている)ことも軟骨損傷進行の危険因子であった。半月板縫合は有意な危険因子として挙げられなかった。ACL再建法、年齢、性別、術後活動性も関節軟骨損傷の進行に有意な影響を与えなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では術後1年経過してからスポーツ復帰を行った群に対する検討で、ACL補強術の術後滑膜被覆に対する有用性、さらには滑膜被覆が良好な群では術後の膝関節固有感覚の改善も良好であることをすでに報告し、27年度ではスポーツ復帰の大きな障害となる軟骨損傷進行について、半月板部分切除やBMI増加、ピボットシフト陽性などが危険因子であることを報告した。膝関節軟骨損傷を阻止することは、今後継続的にスポーツを行っていくために必須である。 また早期スポーツ復帰を希望し、術後6カ月において判定項目にパスした症例において、広島大学病院スポーツ医科学センターで光学式三次元動作解析システム(VICON MX, カメラ16台)と床反力計を用い、フォワードジャンプ動作と40cm台からのドロップジャンプ動作を行い、着地後の膝関節最大外反角度をはじめ、股・膝・足関節の各角度と関節モーメント、垂直方向最大床反力を計測している。動作解析を行った症例では現在のところ手術側再断裂や反対側断裂例は認められていないため、再断裂の危険因子の検討はまだ行えていない。 さらに、最終的に早期スポーツ復帰による膝関節不安定性の進行や再断裂率増加が見られた際に、その結果に影響を与えた因子の一つとして検討項目に挙げている、ナビゲーションシステムを用いた術中関節不安定性評価についても情報を順調に収集している。また解剖学的1束再建と2重束再建で術後スポーツ復帰時期を変える必要があるかどうかも興味深いテーマである。このナビゲーションシステムを用いることで、解剖学的1束再建と2重束再建の間にタイムゼロで差異は少ないことや、2重束のそれぞれの線維束の前方制動性に対する機能の違い、回旋制動性に対する機能の同一性についてもデータを得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も早期スポーツ復帰を希望し、術後6カ月において判定項目にパスした症例に対する三次元動作解析をさらに続けて行っていく。術後8カ月で2種類の課題動作における着地後の膝関節最大外反角度をはじめ、股・膝・足関節の各角度と関節モーメント、垂直方向最大床反力などを計測する。これらの症例において、膝関節運動覚、下肢筋力、膝関節前後不安定性、脛骨外側プラトー後方傾斜、Pivot-shift test、重心動揺計測も行い、早期スポーツ復帰の多角的評価体系の確立を目指す。動作解析を行った症例では現在のところ手術側再断裂や反対側断裂例は認められていないため、再断裂の危険因子の検討はまだ行えていないが、今後は膝関節不安定性の進行程度と動作解析の各データの相関を検討する予定である。最終的に早期スポーツ復帰による膝関節不安定性の進行や再断裂率増加が見られた際には、その結果に影響を与えた因子の検討を、ロジスティック回帰分析により行う。 ナビゲーションシステムを用いた術中関節不安定性評価についても続けて評価を行い、術中脛骨回旋不安定性と術後の三次元動作解析による脛骨回旋の関連性の検討のほか、解剖学的1束再建と2重束再建のタイムゼロでの機能の違いや、2重束のそれぞれの線維束の前方制動性に対する機能の違い、回旋制動性に対する機能の同一性についても検討を続ける。
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Causes of Carryover |
初期の研究でデータが出てきたため早期に分析する必要があり、H27年度に予定していた統計処理ソフトをH26年度に購入したため、また初期テーマの一つは現在の分析で十分対応できることが分かったため、H27年度の消耗品費が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スポーツ活動に大きな影響を与える関節軟骨損傷に対する新しい知見を国内・国際学会で広く発表していくとともに、分析可能と判断されれば有限要素法のソフトウェアを導入する。また動作解析を重点的に行っていく。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] 前十字靭帯再建2015
Author(s)
中前敦雄、越智光夫、安達伸生、出家正隆、石川正和
Organizer
第5回運動器と痛みの国際シンポジウム in 広島
Place of Presentation
シェラトン広島(広島市東区)
Year and Date
2015-08-05
Invited
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