2014 Fiscal Year Research-status Report
リハビリ手法の効果を評価しその適用を促進するための可搬型手首筋緊張検査装置の開発
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26350574
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
林 良太 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (40288949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野間 知一 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 作業療法士 (10535793)
余 永 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (20284903)
下堂薗 恵 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30325782)
川平 和美 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 客員研究員 (20117493)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 痙縮 / 筋緊張異常 / 手関節 / 検査装置 / リハビリテーション / 脳卒中片麻痺 / 知能ロボティクス / メカトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、「可搬型手首筋緊張検査装置の開発と安全性の検討」を主として、以下の項目に沿って研究を遂行した。 (a)機構設計:医師や療法士と検討を重ねて、手関節の掌屈と背屈の運動が水平方向になるようにして、検査を受ける被験者に無理な負担が掛らない適切な姿勢を設定した。そして設定した姿勢に合わせて、前腕固定台および稼働する手部固定台を設計し、サーボモータおよび引張圧縮ロードセル(力センサ)の配置を決定した。その際、装置の小型化と本質安全に配慮した機構を設計した。特に、他動運動時に手首を痛めることがないように可動範囲を物理的に制限し調整が可能なストッパーを配置して,機械的な安全装置を設けた。また、医療用装具(スプリントシート)を利用して、前腕部および手部を痛めないように固定する方法を検討した。また、検査装置下部にはキャスターを取り付け、可搬性を備えたコンパクトなサイズとなるように考慮した。特に、被験者が待機する場所へ検査装置を移動させて、容易に検査を実施できるための構造を考案した。なお、サーボモータ駆動時に検査装置全体が揺動しないように、検査装置を椅子に固定する機構を設けた。 (b)他動運動のためのモータ制御法:他動運動の実現に際し、運動時の開ループ制御と運動停止時の制御パラメータ調整を組み合わせた手法で、安全性の高いモータ制御手法を考案した。 (c)手首の筋力を測る力センサ:引張圧縮ロードセルを手部固定台に装着して、筋の抵抗力を計測する装置を製作した。その際、筋の抵抗力を正しく計測できるようにするために検討を重ねた結果、手部固定台と手部固定装具との間にスライド機構を設けることで、不要な力が働かないようにすることができた。 以上の設計・工夫をもとに部分的な試作と改良を重ねた末に、所望の性能が見込める検査装置の試作機を完成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、「可搬型手首筋緊張検査装置の開発と安全性の検討」を主としていた。研究実施計画に沿って、研究分担者と検討を重ねることで、開発する検査装置の設計を遂行することができた。ただし、前腕固定台に取り付けた前腕固定装具について、当初は3点一列でビス止めすることにしていたが、モータの他動運動で手首を動かした際に、固定した前腕から力を受けて前腕固定装具が揺動してしまい、筋の抵抗力を正しく測定できなくなる可能性があることが判明した。そこで、当初のビス止め箇所を二列に変更することで、この問題を解決することができた。また、手部固定台に取り付けた手部固定装具について、当初は力センサが取り付けられたアルミ板に装具を直接固定していたが、モータの他動運動で手首を動かした際に、手部固定台の回転中心と被験者の手関節の回転中心とが僅かでもずれていると,必要のない力が少なからず発生してしまい、筋の抵抗力を正しく測定できなくなる可能性があることが判明した。そこで、手部固定台と手部固定装具との間にスライド機構を設けて不要な力が働かないように工夫することで、この問題を解決することができた。以上のように、当初予想していなかった問題がいくつか発生したが、部分的な試作と改良を重ねた末に、検査装置の試作機を完成することができたので、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、「検査プログラムの開発と動作試験、安全性の確認」を主として、以下の項目に沿って研究を遂行する。 (a)ソフトウェアの開発:手関節における筋緊張の異常を詳細に検査するため、1)サーボモータの駆動による他動運動時の抵抗力の測定、2)手部を固定した静止状態で発揮可能な筋力の測定、3)サーボモータを用いない状態での被験者の随意運動による手関節可動域の測定の3種類の測定モードを考案する。その際、随意性を調べるために筋電センサを用いて、手首の筋肉に関わる表面筋電位を測定できる機能を追加する。これら3種類の測定モードを選択して検査を実施できるように、パーソナルコンピュータ用のソフトウェアを開発する。さらに、医師や療法士がリハビリテーション現場で容易に検査システムを扱えるように、ユーザーインタフェースを工夫し、検査後、被験者ごとの測定データを系統的に管理・分析できる機能を充実させる。 (b)動作試験と安全性の評価:容易かつ安全に手関節の筋緊張異常を検査することが可能か動作試験を行う。想定されるインシデントに対して十分な対策を講じた上で、健常者を対象者とした動作試験実施について、鹿児島大学大学院理工学研究科研究倫理委員会の承認を得る。そして、動作試験を繰り返し行い、所望の機能が実現できているか確認して、不具合箇所については検討を重ね、特に安全性に関わる機能については必要に応じて設計仕様から見直す。健常者を対象とした動作試験を通して、開発する装置による臨床試験の実施可能性を確認した後に、医師や療法士と検討を重ねて十分な対策を講じてから、鹿児島大学医学部・歯学部附属病院臨床研究倫理委員会の承認を得る。
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