2014 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経コネクト―ムを介した新規嚥下障害治療法の開発
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26350578
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
山脇 正永 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30302855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | brain mapping / dysphagia / connectome / deglutition |
Outline of Annual Research Achievements |
嚥下運動の神経制御メカニズムは未だ明らかでなく、嚥下障害の治療戦略も対症療法のみに留まっているのが現状である。嚥下運動の中枢は、大脳嚥下中枢(傍中心溝領域から島葉)と、延髄嚥下中枢(制御ニューロン群(CPG)から一連の嚥下関連脳神経核)が同定されている。嚥下障害の原因疾患には大脳の異常をきたすものが多く、またその最多の原因である脳血管障害のうち約90%がテント上の病変であり、延髄部分には病変がないと考えられている。我々は現在までに、大脳嚥下中枢から延髄嚥下中枢への抑制入力が嚥下障害に関与している可能性を世界に先駆けて報告した。さらに近年、嚥下中枢における大脳嚥下中枢から小脳への投射ネットワークの存在を解明した。本研究では、嚥下運動における大脳・小脳・延髄のネットワークをコネクトームとしてより詳細に分析し、このネットワークをターゲットとした嚥下障害治療法を開発しようというものである。 fNIRSによる嚥下困難の脳内表象の解析を行い、種々の神経疾患における解析、臨床的な嚥下障害と脳機能パターンのマッチングを行い、正常嚥下データと比較した。嚥下運動のコネクトームの解析を行い、嚥下大脳・延髄ネットワーク抑制/促進シグナルの解析、上記から得られたデータのうち、嚥下運動の脳内コネクトームを分析した。さらに、大脳・延髄ネットワーク賦活方法の検討(TMS、口腔内刺激など)を行い、現在までのデータで得られた治療ポイントから臨床的条件を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体の研究計画に沿って、本事業はおおむねタイムラインに沿って進行している。 臨床的マーカーとしては、嚥下造影検査、嚥下圧検査、多チャンネル筋電図検査をもちいて、口腔期・咽頭期・食道期の活動パターンを経時性に正常状態と病的状態で比較解析手法を開発できた。特に画像解析では各部位マーカーのsequentialな運動の2次元解析方法を新たに開発できた。正常対象群として10例、疾患対象群20例を分析し、嚥下障害において脳活動パターンがいかに変化するかを解析できている。 大脳・小脳・延髄ネットワークに関する分析では、関心領域としては感覚運動野(SMC),運動補足野(SMA),前頭前野、小脳半球で、嚥下運動時の大脳から延髄への促進性/抑制性シグナルのスキームのうちで効率的な治療ポイント(時間的、空間的)を同定できた。この嚥下運動のデータには、随意性、食形態(水分、固形物)、口腔内への感覚入力(刺激、味覚、温度)の条件も含まれており、本方法で得られた結果は、嚥下障害患者へのリハビリテーション、食形態決定に直接反映する方法を開発できた。 脳刺激法については、online TMS法或いはoffline rTMS法によるvirtual lesioning 法の検討を行った。また、我々がすでに得ている食形態・口腔内への感覚入力(アイスマッサージ、痛覚受容体を介した刺激)データにTMSを併用する方法について予定通り研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
大脳・延髄ネットワーク賦活方法の検討(TMS、口腔内刺激など)について、上記で得られた治療ポイントから、臨床応用に向けて臨床的条件を同定する。治療方法としては、口腔・顔面感覚入力による方法、TMSによる大脳刺激、を単独或いは併用にて使用し、介入研究の準備を行う。磁気刺激法については、online TMS法或いはoffline rTMS法によるvirtual lesioning 法で施行する予定で、我々がすでに得ている食形態・口腔内への感覚入力(アイスマッサージ、痛覚受容体を介した刺激)データにTMSを併用する方法を想定している。正常対象20例、疾患対象群として大脳脳血管障害 20例、脳幹部脳血管障害 10例、パーキンソン病 20例、認知症 20例を予定している。今後の介入研究に当たっては、使用機器の安全性につして再度検討を行い、さらに本学の倫理委員会の審査を開始すべくプロトコールの妥当性も含め、現在準備を行っている。 嚥下運動のデータには、随意性、食形態(水分、固形物)、口腔内への感覚入力(刺激、味覚、温度)の条件も含まれており、本方法で得られた結果は、嚥下障害患者へのリハビリテーション、食形態決定に直接反映する方法を提供できるものである。 今後の方向性としては、医療機器への応用のみならず、介護・健康予防産業への応用、食品・飲料開発、健康産業への応用、等が期待され、積極的に産学連携を行ってゆく予定である。
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Causes of Carryover |
物品費のうち、今年度の2月に購入予定のNIRS計測機器に係る消耗部品(檀 20,000円)、嚥下機能評価検査用物品(山脇 2,9319円)の在庫がいずれもなく、現バージョンの物品が製造中止になってしまい、購入が平成26年度中に行えなかったので。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年の前半に次期バージョンの物品及び代替物品を購入を納入予定である。研究計画の進捗に直接は影響がない。
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