2015 Fiscal Year Research-status Report
リンパ浮腫の包括的評価法の計量心理学的分析と評価セットの作成に関する研究
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26350586
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辻 哲也 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (90245639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田沼 明 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (50306817)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 / 複合的理学療法 / 複合的機能 / 運動機能 / QOL / 子宮癌 / 婦人科癌 / 下肢筋力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、下肢リンパ浮腫患者を対象に、様々な定量的評価の計量心理学的特性を科学的に検証し、先行研究(平成23~25 年度科研費基盤研究)で確立したリンパ浮腫患者の静的な側面(浮腫体積)に関する使用指針とあわせて、包括的なリンパ浮腫の評価セットの確立を図ることである。 研究デザインは非介入型臨床研究(検査手法の計量心理学的研究)とした。対象は静岡県立静岡がんセンターを受診、続発性下肢リンパ浮腫と診断され、外来にて複合的治療を処方された患者とし、初回時および2か月後に評価を実施した。主要評価項目は、膝伸展筋力、歩行能力(Shuttle Walking Test; SWT)、階段昇降とし、副次的評価項目は、足関節背屈関節可動域、大腿四頭筋筋力、体組成(BMI、除脂肪量)、1日の歩数、QOL評価表であるLYMQOL日本語版とした。 結果、45名がエントリーされ、年齢59.6±11.2歳、浮腫は片側性33名、両側性12名、浮腫重症度は、軽度群20名、非軽度群25名であった。癌腫は、子宮頸癌18名、子宮体癌18名、卵巣癌5名、その他4名であった。医学情報のうち、浮腫重症度別で有意差が認められた項目は、リンパ浮腫発症から複合的治療開始までの期間、複合的治療期間、蜂窩織炎既往の有無の3項目であった。リンパ浮腫発症から複合的治療開始までの期間および複合的治療期間は、軽度群で有意に短く、非軽度群で有意に長かった。蜂窩織炎既往の有無は、軽度群で有意に既往なしが多く、非軽度群で有意に既往ありが多かった。その他の医学情報項目に有意差は認めなかった。主要評価項目では、SWT歩行距離は、階段昇降ともに軽度群で有意に運動機能が高く、副次的評価項目では、浮腫側大腿四頭筋筋力体重比は、非軽度群で有意に低かった。BMI、浮腫側除脂肪量が非軽度群で有意に高かった。その他の項目に関しては有意差は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象患者のエントリーは滞りなく行えている。対象患者に対する複合的治療前の初回評価、治療後の評価とも順調に完遂できている。対象患者の基本情報や医学情報は診療記録から、データ収集できている。対象症例の増加にあわせて、評価終了患者の統計学的分析も部分的に実施された。以上から、予定された平成27年度の計画どおりに研究は進行したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、結果の解析をさらに進め、続発性下肢リンパ浮腫患者の運動機能に影響を与える因子を明らかにし、運動機能評価の妥当性の検証を行う。 平成27年度は、医学情報、主要評価項目および副次的評価項目の浮腫重症度別の比較を行ったが、平成28年度には、分析対象者の属性情報を浮腫重症度で比較した結果、単変量解析において有意差を認めた項目が、SWT歩行距離および階段昇段・降段時間に独立して関連する因子かを明らかにするため、多変量解析(重回帰分析)を行う。また、浮腫側大腿四頭筋筋力体重比と主要評価項目・副次的評価項目との関係および浮腫重症度との関係を明らかにするために、浮腫側大腿四頭筋筋力体重比の値によって40%未満と40%以上の2群に分類し、それぞれ浮腫重症度の軽度群と非軽度群においてSWT歩行距離、階段昇段時間、副次的評価項目である足関節背屈ROM、大腿四頭筋筋力体重比、体組成(BMI、除脂肪量)、1日の歩数、LYMQOL日本語版の身体機能・症状項目の得点を比較する。 以上の結果をふまえて、先行研究(平成23~25 年度科研費基盤研究)で確立したリンパ浮腫患者の静的な側面(浮腫体積)に関する使用指針とあわせて、包括的なリンパ浮腫の評価セットを確立する。
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Research Products
(29 results)