2015 Fiscal Year Research-status Report
骨盤前傾座位時の坐骨結節部皮膚からの感覚情報は体幹位置の位置情報になる
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26350609
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
淺井 仁 金沢大学, 保健学系, 教授 (50167871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 寛一郎 福井医療短期大学, 医歯学系, 教授 (10446172)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 体幹 / 前後方向 / 位置知覚 / 骨盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨盤を前傾、中間、および後傾位とした3つの座位姿勢で、前後方向の体幹位置知覚能を、足底接地条件と非接地条件とで調べた。対象は健常な大学生14名であった。 体幹位置知覚能は前後方向の体幹角度(坐骨結節と肩峰とを結んだ線と垂線とのなす角)の再現能力により評価された。参照角度は-15°、-10°、-5°、0°、5°、10°、および15°の7か所とした。各参照角度をランダムな順番で5回ずつ参照、再現させた。参照時と再現時との角度差の絶対値を求めた。絶対値が大きいほど知覚能が低いことを表す。接地条件毎に骨盤位置と体幹角度についての反復測定2元配置分散分析をした。条件による違いは、両条件の差を求め、骨盤位置と体幹角度についての反復測定2元配置分散分析をした。有意水準は5%とした。 接地条件:骨盤位置と体幹角度との交互作用があったので、骨盤位置毎に体幹角度の影響を、および体幹角度毎に骨盤位置の影響をそれぞれ反復測定1元配置分散分析で検討した。骨盤前傾位と中間位では、絶対誤差への体幹角度の影響はなかった。これに対して骨盤後傾では、絶対誤差が10°と15°において他の体幹角度よりも有意に大きかった。また、体幹角度毎の骨盤位置の影響については、15°のみで後傾での絶対誤差が前傾位でのそれよりも有意に大きかった。非接地条件:体幹角度のみに主効果があり、絶対誤差は-5°と0°において-15°および15°のそれよりも有意に大きかった。両条件の差:体幹角度のみに主効果が認められ、15°と-5から10°との間に有意差があった。 以上の結果から、接地条件では、体幹15°の前傾位置での知覚能が他の位置と比べて悪く、骨盤後傾位で著明であった。一方、非接地条件では、体幹位置知覚に骨盤位置の影響はなかったが、大きく前傾および後傾した位置に比べて、-5°と0°という垂直位周囲位置での知覚能が悪いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、座位姿勢の位置知覚のメカニズムを明らかにし、そのメカニズムを片麻痺患者さんの座位姿勢における位置知覚に応用し、患者さんが座位姿勢を安定して保つための方策を確立することである。 この大きな目的のもとに昨年度の研究では座位姿勢の安定性と座圧分布との関係について足底を接地しない座位姿勢で検討した。この時の座位姿勢は体幹と骨盤とをそれぞれいろいろな角度にして両者を組み合わせた。得られた結果から、体幹の傾きと骨盤の位置とによって坐骨結節部のみに加圧されている状態と、坐骨結節部および尾骨部に加圧されている状態があることが明らかになった。また、これらのように接地状況が異なっても座位の安定性にあまり影響が無い可能性が示唆された。 今年度は、骨盤を前傾、中間、および後傾位とした3つの座位姿勢で、前後方向の体幹位置知覚能を、足底接地条件と非接地条件とで調べた。接地条件では、体幹15°の前傾位置での知覚能が他の位置と比べて悪く、骨盤後傾位で著明であった。一方、非接地条件では、体幹位置知覚に骨盤位置の影響はなかったが、大きく前傾および後傾した位置に比べて、-5°と0°という垂直位周囲位置での知覚能が悪いことが明らかとなった。 以上のことからすると、足底非接地の前傾座位では、立位位置の知覚能と同じように、前後方向における体幹位置の知覚能は、安定性の低さと位置知覚能の高さとが関係していたかもしれない。後傾座位では尾骨の接地の有無が知覚能の高さと関係していたのかもしれない。このように、これまでの研究によって、座圧および座位の安定性と、体幹位置知覚との関係がある程度明らかになってきた。しかし、足底の接地の有無によって体幹位置の知覚の様相が大きく変わることも明らかとなった。この背景には足底の接地情報の影響、および体幹位置毎の体幹および下肢の筋活動による筋感覚情報も影響していることが推察される。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、前後方向における座位の位置を知覚し易くするための圧刺激を加える部位を明らかにすることである。ところが、27年度の研究結果からすると、体幹位置の知覚能には、骨盤周囲の圧情報だけではなく、足底の接地情報の有無が大きな影響をもたらす可能性が示唆された。すなわち、前後方向における座位時の体幹位置の知覚には、座面接地部からの圧情報以外の感覚情報(足底の接地情報、および筋活動の情報など)も関与していることを示唆するものと思われる。それゆえ、前述したように座位の位置が知覚し易くなるための圧刺激をする部位を明らかにすることに加えて、体幹位置と体幹や下肢の筋活動との関係についても明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
28年度の研究遂行において、当初予定にはなかった体幹および下肢の筋活動を測定する必要性が生じたため、電極等の消耗品を購入するために繰り越したものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費を当初予定の100,000円から150,000円に、謝金を当初予定の100,000円から134,272円とそれぞれ増額するものである。
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