2014 Fiscal Year Research-status Report
定量的な組織性状マッピングに基づくヒト骨格筋の可塑性評価と運動療法の基盤形成
Project/Area Number |
26350619
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
谷口 圭吾 札幌医科大学, 保健医療学部, 講師 (90381277)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 理学療法学 / リハビリテーション評価学 / 画像評価診断学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は筋線維の走行方向や皮膚,筋実質を覆う筋膜が骨格筋の硬さ(弾性)特性に及ぼす影響を検証することを目的とした.ヒト生体と類似した性状が保持されるように特殊な固定処理を施した御遺体を研究資料とし,羽状筋である腓腹筋内側頭を対象に超高速超音波映像法による筋の弾性評価の妥当性を検討した.筋線維に対して超音波プローブが一定の角度を呈した状態と筋線維と超音波プローブが平行な状態の2条件で比較した結果,平行な状態よりも角度のある状態で筋弾性が有意に10%程度高くなることが明らかとなった.また,皮膚や筋膜の除去の前後で筋の弾性を観察した結果,除去後に筋硬度が顕著に減少することが確認された.これらの得られた知見により,最新超音波技術を用いた骨格筋の定量的な弾性評価を実施する場合には,筋線維の配列状態や筋実質の表層に介在する皮膚等の影響を十分に考慮する必要のあることが示唆された.更に,超高速超音波法による臨床応用の有用性を探る目的で,膝関節術後症例における大腿四頭筋弾性の定量評価を試みた.その結果,膝関節術後患者では安静時における患側の筋弾性は健側と比較して差がみられないものの,大腿四頭筋の随意的な収縮時は患側の弾性が健側より有意に低値を示し,患側の筋は健側の35~60%に相当していた.このことは手術時の組織侵襲が起因となって生じる筋の収縮能低下を反映する可能性がある.本手法の応用によって運動制約の強い術後早期においても,簡便で迅速な弾性計測に基づき発揮筋力の程度を推定できる臨床的意義の高い画期的な評価ツールとなりうることが予想された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格筋の定量的な性状評価法の確立に向けて,組織弾性における筋内の空間分布の可視化・定量化は継続した検討が必要であるものの,超音波法による筋弾性計測の妥当性や臨床応用の可能性を探る検証はほぼ予定通り遂行できている為.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,骨格筋の弾性評価において筋腹部位といった局所レベルのみならず,筋内の空間分布や不均一性を明らかにしてゆく.また,関節スティフネス・関節トルクおよび筋伸長や活動特性と羽状筋の弾性特性の関連性を分析することにより,超高速超音波法を用いた筋性状評価の機能的意義を検討する予定である.
|
Causes of Carryover |
申請時に記載した購入予定の超高速超音波用リニアプローブ2-10MHz・SuperLinear10-2(SuperSonic Imagine社製,フランス)を扱う唯一の国内販売代理店が当該製品の取り扱いを終了し,次年度に新たな次期販売代理店が同プローブの取り扱いを開始する為.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の研究経費は申請時に記載した使途に加えて,前年度の助成金残額を使用し,導入に未だ至っていない超音波リニアプローブの購入に充てる予定である.
|