2015 Fiscal Year Research-status Report
障がい児・者の運動学習に働きかける筋弛緩リハビリテーションプログラムの開発
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26350625
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
菅原 憲一 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (90280198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 智高 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 助教 (00576382)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 理学療法学 / 運動学習 / 随意的筋弛緩 / 運動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系障害や整形外科疾患のリハビリテーションにおいて障がい児・者の過剰な筋緊張異常や痛みの緩和は,機能回復の必須条件である.しかし,その方法は対処療法的な手段によるストレッチなどの治療が主流で,有効性に課題を有する.そこで,本研究では,障がい児・者の運動学習に働きかける筋弛緩リハビリテーションプログラムを開発し,臨床場面への応用展開を最終目標とする.具体的に健常成人を対象に,皮質運動における筋弛緩制御メカニズムの検討を行い,弛緩に有効な電気刺激の特性および刺激タイミングを明らかにする.さらに,有効刺激を用いた弛緩学習によって生じる上位下位運動中枢における運動制御メカニズムの変化を検討し,学習効果を明らかにする.それを踏まえた上で 障がい児・者を対象に,基礎研究で見出した皮質運動野の興奮性を抑制する運動と刺激パラメータを使用した介入を行い,その有効性と普遍性を明らかにする.このような筋弛緩プログラムは,筋弛緩プログラムは,上位運動中枢に生じる筋弛緩制御メカニズムを根拠とした点が特色である.このような筋弛緩プログラムは,ストレッチングのような脊髄反射機構に生理学的根拠をもつ治療手技と比較し,永続的な筋弛緩を学習させる点に独創性を有する.このようなリハビリテーションプログラムが開発されれば,障がい児・者は筋緊張異常や痛みから生じる関節の拘縮・変形などの二次障害が予防され,より効果的なリハビリテーションの展開が可能となる.このことは,障がい児・者の機能回復から社会参加を促進させるだけではなく,医療機関での入院期間の短縮などの波及効果も期待できる.さらに,工学分野との連携により異常筋緊張を緩和する治療機器を開発できれば,新たなイノベーションの創造も期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上位運動中枢に生じる筋弛緩制御メカニズムを詳細に分析することで,障がい児・者が受容しやすい感覚刺激を応用した筋弛緩プログラム確立することが,この問題の解決に必要不可欠と考える.そこで,我々は基礎実験として療法士の介入を電気刺激と想定し,筋弛緩誘発の可能性を見出すための先行研究を実施した(Sugawara, et al.2011).この研究を通して,当該研究では,健常人を対象としたさらなる筋弛緩にかかわる中枢神経系における抑制の時間的タイミングの検討と,末梢電気刺激がその抑制にどのように作用するのかという基礎研究と,これを用いた障がい児・者への応用的導入を行うことによる効果判定を行うことが大きな2つの目的である.この展開から,平成26年度の進捗状況として基礎研究部分における見解がほぼデータとして蓄積され発表および論文への作成段階となっている.平成27年度は,その更新および基礎知見の構築を含めたデータ収集と研究発表を行うとともに,論文化に着手している.さらに,基礎研究の展開から,弛緩を行う上で主動作筋と拮抗筋の相補性に関する知見を検討する必要性が生じ,その部分への検討も含めて行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の基礎研究に加えて,電気刺激の効果の検討において抑制のタイミングとのさらなる照合を行う基礎研究の実施を行うこと.さらに,ここまでの基礎的検証を用いて,障がい児・者の筋弛緩プログラムの開発に示唆することが次の段階となる.適切な電気刺激(感覚入力)の質・量と随意運動課題を設定することで,その拮抗筋を支配する皮質領域に抑制メカニズムを発生出来ることである.このような抑制メカニズムを筋弛緩プログラムに応用するえば,永続的な筋弛緩効果を得ることが出来る.リハビリテーションプログラムが開発され,障がい児・者の受容しやすい筋の弛緩方法を運動学習する機会を提供することにつながる.この部分を網羅する臨床的検討を今後推進する予定である.具体的には,電気刺激による筋弛緩を行う上での当該筋および関連筋に対する皮質脊髄路興奮性変化を検討し,その方法論を明確に示すことである.
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Causes of Carryover |
研究データの収集に関して,先行研究のデータと合わせて論文作成を先行したことから,学会参加の機会がなく,次年度への発表のずれ込みがあった.また,研究全体の進行から健常人に対する実験施行が現在中心となり,筋弛緩メカニズムの解明における研究に着手していたことから現状のような施行となっている.しかし,基礎研究の重要性を考慮するとともに,学会発表,論文投稿等が現在進行中である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由から次年度に学会参加発表が見込まれ当該助成金の支出が予定されている.さらに,学会発表と合わせて英語論文作成に関わる雑費が今後見込まれることから残額の使用を予定している.現在,実験も同時進行中であり,さらなる発表,論文作成が継続的に行われることとなっている.さらに,今後は臨床への応用を目途に基礎研究と臨床研究を同時に進行することとなる.
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