2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26350634
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Research Institution | Kinjo University |
Principal Investigator |
佐々木 賢太郎 金城大学, 保健医療学部, 准教授 (90512476)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 固有感覚 / 転倒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,地域在住高齢者の「固有感覚能力」を計測し,その機能低下が転倒の一要因となることを明らかにすることである.研究初年度となる今年度は,運搬可能な固有感覚(運動覚)計測装置を開発,改良し,装置の信頼性が得られる計測プロトコールを確立することであった.開発した固有感覚測定装置(竹井機器工業株式会社)は,アクチュエーター,コントローラー,ブザーボックス,アクチュエーターを操作するパソコンから構成され,それぞれはケーブルで接続される.アクチュエーターにはステッピングモーターが内蔵されており,アクチュエーター上の踏板を動かす.踏板には発泡ウレタンを敷いており,踏板は可変固定式である.アクチュエーターは9.4 kg,縦長680mmと,想定していた重量,大きさで作成することができた.モーター駆動時の微細な振動とモスキート音に対しては,超柔軟性特殊素材(アクションパッド)を踏板に敷き,計測時にノイズキャンセリング機能付ヘッドフォンを装着することで対応できた.踏板の移動速度は,被験者の下腿長から0.5°/sに相当する速度を算出し,適用した.予備実験の結果から,開始角度は股関節屈曲60-70°位での膝屈曲30°と90°,運動方向は伸展と屈曲の計4条件とした.踏板が動き始めてからそれを感知するまでの時間を運動覚の閾値として扱った.健常大学生10人に対し,1週間の間隔をあけて利き足に2回の計測を行った結果,4条件すべてにおいて測定信頼性が認められた.さらに,5週間の間隔をあけて,同一被検者の非利き足で計測を行ったところ,利き足と非利き足には差が認められず,過去の報告と同様の結果が得られた.また,3回の計測すべてにおいて運動方向による差は認められなかったが,90°条件は30°条件よりも閾値が高い結果となった.現在,前十字靱帯再建膝を対象に計測を行い,データを解析中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった装置の開発と改良による計測プロトコールを確立することができた.また,健常膝の運動覚特性についても検討することができた.今年度の成果については,「運動器リハビリテーション(運動器科学会)」に掲載予定(印刷中)である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,装置を地域へ持込み,地域住民を対象として運動覚の精度と転倒歴の関連性について検討する.地域への橋渡しは社会福祉協議会に依頼しており,現在,日程や場所などの検討を行っている段階である.地域での計測には空間的・時間的に制限があるため,研究機関で予備的研究を実施し,計測の段取りや運動覚以外の計測項目(筋力,柔軟性,表在感覚,関節位置覚,バランス,認知力,注意力など)を確定させる. 地域での計測は,5カ所50人を予定している.各地位の公会堂で行われている「ふれあいサロン」を訪問し,計測とともに転倒予防の講話を行うことを計画している. 運動覚の閾値,ならびにその他の計測結果と転倒歴の関連性を解析し,運動覚の機能低下が転倒要因となり得るか,検討する.得られた成果を学術大会で発表の後,論文化する予定である.また,本研究で得られた結果をリーフレットにまとめ,社会福祉協議会や研究機関の公開講座を通して地域住民へ配布する計画である.
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Causes of Carryover |
計測中,固有感覚測定装置から生じる振動や踏板と足底部との摩擦を緩衝するために,当初購入を予定していなかったアクションパッドを購入した.その代わりとして,予定していた消耗品を購入しなかったため439円の差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究計画に挙げた物品費に加算して使用する予定である.
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