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2015 Fiscal Year Research-status Report

悪液質(カヘキシー) に由来する骨格筋機能低下に対する新たな予防・治療戦略の開発

Research Project

Project/Area Number 26350639
Research InstitutionNihon Fukushi University

Principal Investigator

岩田 全広  日本福祉大学, 健康科学部, 准教授 (60448264)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 坂野 裕洋  日本福祉大学, 健康科学部, 准教授 (00351205)
Project Period (FY) 2014-04-01 – 2017-03-31
Keywords悪液質 / カヘキシー / 骨格筋 / 萎縮 / 代謝 / ストレッチ / 温熱刺激 / メカニカルストレス
Outline of Annual Research Achievements

積極的な身体運動は、非感染性慢性疾患の悪液質(カヘキシー)に由来する骨格筋機能低下の治療や進行予防に有効であるが、臨床で遭遇する患者の中には、原疾患の特異的な病態や二次的な廃用症候群などによって運動制限を有する者も多く存在するため、その代償となる治療法の早期開発が求められている。そこで本研究課題では、骨格筋の加温(温熱刺激)とメカニカルストレス(ストレッチ)を組み合わせた治療介入が、カヘキシーによる骨格筋萎縮とそれに伴う代謝異常の進行過程に及ぼす影響とその作用機序を解明することを目的としている。
骨格筋萎縮に関する実験では(1)カヘキシーを惹起するLPSをC2C12筋管細胞に暴露するとユビキチン・プロテアソーム系やオートファジー系の活性化と萎縮が生じるが、その萎縮はPGC-1α、SOD3、HSP72、HSP25/27発現量の増加をもたらす温熱刺激の負荷により抑制されること、(2)ストレッチをC2C12筋管細胞に負荷するとmTOR/p70S6k経路の活性化と肥大が生じ、その肥大はインテグリンβ1/β3阻害剤またはmTOR阻害剤により抑制されるが、ホスホリパーゼD阻害剤では抑制されないことを明らかにした。
骨格筋代謝に関する実験では(3)Akt、AMPKのリン酸化量の増加をもたらす温熱刺激をC2C12筋管細胞に負荷すると糖輸送能が亢進するが、その糖輸送能の亢進はPI3K阻害剤とAMPK阻害剤により抑制されること、(4)CaMK2のリン酸化量の増加をもたらすストレッチをC2C12筋管細胞に負荷すると糖輸送能が亢進し、その糖輸送能の亢進はCaMK阻害剤により抑制されるが、PI3K阻害剤では抑制されないことを明らかにした。
今後は、温熱刺激とストレッチがカヘキシーによる骨格筋機能低下を抑制するより詳細な作用機序を解明していく予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題は、熱やメカニカルストレスに対する筋細胞応答に着目し、骨格筋の加温(温熱刺激)またはストレッチ(張力刺激)がカヘキシーに由来する骨格筋機能低下(骨格筋萎縮とそれに伴う代謝異常)の進行過程に及ぼす影響とその作用機序の解明を行い、臨床応用に向けた科学的根拠を集積するとともに、温熱刺激とストレッチを組み合わせた治療介入が、より効果的かつ効率的に骨格筋機能低下を抑制するのではないかといった仮説を培養細胞やモデル動物を用いて検証することを目的としている。
まず、骨格筋萎縮に関する実験では、カヘキシーによるC2C12筋管細胞の萎縮が温熱刺激を負荷することでほぼ完全に抑制されることや、その作用機序としてPGC-1α、SOD3、HSP72、HSP25/27発現量の増加を介した酸化ストレスの軽減やタンパク質分解の抑制が寄与している可能性が示唆された。
また、骨格筋代謝に関する実験では、温熱刺激やストレッチを負荷することでC2C12筋管細胞の糖輸送能が亢進し、その亢進はそれぞれPI3K阻害剤・AMPK阻害剤とCaMK阻害剤で抑制されることから、熱やメカニカルストレスといった物理的刺激によっても有酸素運動様の糖代謝亢進効果が発揮されるが、その作用機序は刺激の種類によって異なる可能性が示唆された。
以上の検証は、培養細胞実験に基づくものであるが、その成果は運動制限を有する非感染性慢性疾患患者に対する新たな方法論の開発に向けた基礎的資料を提供することができるものであり、骨格筋機能障害に対する安全かつ効果的な予防・治療法の在り方にも示唆を与えることができると考えている。

Strategy for Future Research Activity

平成26・27年度に実施したC2C12筋管細胞を用いた培養細胞実験では、温熱刺激を負荷することでカヘキシーを惹起するLPSに曝されたC2C12筋管細胞の萎縮を抑制できること、ストレッチを負荷することでC2C12筋管細胞の肥大が生じること、温熱刺激またはストレッチを負荷することでC2C12筋管細胞の糖輸送能が亢進することなどを確認した。今後は、培養細胞を用いた追加実験を行うとともに、温熱刺激とストレッチがカヘキシーに由来する骨格筋機能低下を抑制するより詳細な作用機序を解明していく予定である。具体的には、抗酸化酵素(SOD、catalaseなど)、転写因子(FOXO1/3、NF-κBなど)、筋特異的ユビキチンリガーゼ(atrogin-1、MuRF1など)、オートファジー関連遺伝子(Atg5、LC3、beclin 1、SQSTM1など)、運動によって変動するマイクロRNA(miR-1、miR-133a、miR-133bなど)の発現状況や活性化状況を検索していく予定である。
また、平成27年度に引き続き、カヘキシーによる骨格筋萎縮の進行過程に対する温熱刺激とストレッチの併用効果を検証する目的で、伸張可能なシリコン培地(ストレッチチャンバー)内に培養したC2C12筋管細胞に対してLPSを投与し、再現性よく定量的に萎縮を誘導できる培養・刺激条件を検討している。これらの結果を基に、温熱刺激とストレッチを組み合わせた治療介入がLPS誘導性筋萎縮の進行過程に対して相加的に作用するかどうかを、病理組織学的、生化学的、分子生物学的指標を用いて検討したいと考えている。
次いで、培養細胞実験で得られたデータを基礎資料として、カヘキシーモデル動物を用いて、温熱刺激、ストレッチ、または両者の組み合わせによる治療介入を行い、その効果検証を行いたいと考えている。

  • Research Products

    (5 results)

All 2016 2015 Other

All Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results) Remarks (2 results)

  • [Presentation] 温熱刺激がグルココルチコイド誘導性筋萎縮の進行を抑制するメカニズムの検討2016

    • Author(s)
      森 貴史,土田 和可子,杉野 有里,大野 嘉太,松尾 真吾,浅井 友詞,鈴木 重行,岩田 全広
    • Organizer
      第20回日本体力医学会東海地方会学術集会
    • Place of Presentation
      中京大学名古屋キャンパス清明ホール(愛知県名古屋市)
    • Year and Date
      2016-03-13 – 2016-03-13
  • [Presentation] カヘキシーに由来する骨格筋萎縮の進行抑制を引き起こす温熱刺激条件の検討2015

    • Author(s)
      大野 嘉太,岩田 全広,土田 和可子,秋本 崇之,鈴木 重行
    • Organizer
      第70回日本体力医学会大会
    • Place of Presentation
      和歌山県民文化会館・ホテルアバローム紀の国(和歌山県和歌山市)
    • Year and Date
      2015-09-18 – 2015-09-20
  • [Presentation] A study of factors affecting the decreased grip strength in a rat model of work-related musculoskeletal disorder2015

    • Author(s)
      Mitsuhiro Fujiwara, Kazuhiro Hayashi, Natsumi Yoshito, Yosuke Aizawa, Takayuki Inoue, Masahiro Iwata, Shigeyuki Suzuki
    • Organizer
      17th International Congress of WCPT (World Confederation for Physical Therapy)
    • Place of Presentation
      Suntec Singapore(Singapore)
    • Year and Date
      2015-05-01 – 2015-05-04
    • Int'l Joint Research
  • [Remarks] 日本福祉大学 大学専任教員一覧

    • URL

      https://nfu-kg.n-fukushi.ac.jp/nfuhp/KgApp?kyoinId=ymdbgdgeggy

  • [Remarks] 日本福祉大学 健康科学研究所

    • URL

      http://www.n-fukushi.ac.jp/kenken/index.html

URL: 

Published: 2017-01-06  

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