2014 Fiscal Year Research-status Report
歩行時における外乱刺激が姿勢保持へ及ぼす影響の解明と転倒予防への応用に関する研究
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26350667
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
敦賀 健志 北海道科学大学, 保健医療学部, 准教授 (60337011)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 滑り / 転倒予防 / 姿勢制御 / 靴 / フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高精度な転倒予防技術を確立するため、歩行時の外乱刺激(不意な足部の滑り)が姿勢保持へ及ぼす影響を解明することが目的の一つである。平成26年度は歩行動作時の被験者に外乱刺激を提示する「外乱刺激呈示システム」の設計と製作を進めた。本システムは小型軽量な床反力計を有し、歩行路の途中に配置され、被験者の足部が床反力計を踏んだことを検出した後、瞬時に床反力計を前方に移動させることにより擬似的な足部の滑りを外乱刺激として被験者に呈示する仕組みとなっている。 そこで、まず外乱刺激による姿勢制御に関する先行研究の調査をさらに深め、計測パラメータの選定などといった実験方法の精査を行った。次に、擬似的な滑りを再現するために必要な床反力計の挙動(速度、加速度、ストロークなど)や滑り発生時の床反力計への負荷荷重値の検討を行った。高頭らにより、浴室を想定した環境において足部の滑りにより立位姿勢バランスを崩した時の足部の動きを観察した報告がなされている。そこで、積雪凍結路面での滑りを再現するために高頭らの研究を参考に、実際に氷を用いた滑りの予備実験なども行うことで、床反力計の挙動に必要となるスペックを検討した。この結果をもとに、床反力計を移動させるために必要なACサーボモータやボールねじといった機械部品およびA/D変換器や加速度センサといった電子部品のスペックを検討し、具体的な製品の選定も行った。そして、被験者の体重に耐えうる荷重や剛性を検討し、強度計算などを踏まえてシステム全体の設計を行い、システムの製作を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の計画では、歩行時における外乱刺激呈示システムを構築し、「外乱刺激」が姿勢保持へ及ぼす影響と要因の定量化を検討する。さらに可動路面を動かす際の荷重の基準値や、可動路面の加速度や動作時間さらにストロークなどをパラメータとして、被験者による官能評価などとも組み合わせて検討した上で、「ヒトが感じるうる外乱刺激」や「姿勢を崩すに至る外乱刺激」を定量的に評価することであった。 本システムに関しては完全に独自のシステムとなるため設計から全て行わなければならず、完成までに時間を要することは予想できていた。そのため当初の研究計画においても平成26年度にシステムの開発、平成27年度に実験データの解析といった位置づけとなっている。現時点では、まだ実験装置の製作段階であり、当初の計画からすると「やや遅れている」が、システムの性能と実験の精度を向上させるために、ここに至るプロセスにより多くの時間を費やした。その結果、今年度の実績により精度の高い設計が可能となり、有用なデータ取得が可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方に関して、特に変更は考えていない。平成27年度は、外乱刺激呈示システムを用いて、「ヒトが感じるうる外乱刺激」や「姿勢を崩すに至る外乱刺激」を定量的に評価する。そのデータからエッセンスを抽出し統合的に解析することで、「滑り」を検知、もしくは予測するアルゴリズムを構築する。その際、必要に応じて歩行動作解析の追実験も実施し、このフィードバックループを実行することで「滑り」の特徴的情報の計測技術精度を向上させていく。 また、「滑り」を検知もしくは予測した際に歩行者に警告を提示する方法の検討も進めていく。現段階では、靴のインソールに振動子を内蔵し、振動刺激を利用することを検討しているが、振動箇所がシューズ内部であることの妥当性や他の部位への振動刺激の有用性、さらには振動刺激以外の提示方法についても検討を行う予定である。 さらに、実験結果を速やかにまとめていき、生体工学や福祉支援工学の分野を中心に、学会発表を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度に製作する予定であった「外乱刺激呈示システム」(備品)に関して、必要となるスペックの検討を入念に行った結果、構成部品の購入や計測実験が平成27年度にずれ込んだため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に「外乱刺激呈示システム」の設計を終えており、平成27年度に速やかに構成部品の購入等を行う予定である。
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