2014 Fiscal Year Research-status Report
Scammonの発育曲線の検証と身体機能発達曲線モデルへの展開
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26350702
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 勝紀 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (10165326)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Scammonの発育曲線 / ウェーブレット補間モデル / 相互相関関数 / 類似性 / 相違性 / 双生児 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、身体機能発達曲線のパターンを解析して運動能力発達曲線モデル構築への端緒を開くことを目的としている。この目的達成の鍵となるのは、発育・発達の過程を一般化し、定量的に表現する方法であるが、本研究では、発育過程を半定量的ではあるが一般化して表現した唯一の例であるScammonの発育曲線に着目したわけである。この発育曲線は、仮説のモデル曲線であり、科学的検証が成されておらず、学術的信憑性が問われていた。 そこで、先ず1年目では、Scammonの発育曲線の科学的検証のための方法の開発に着手し、Cross correlation functionおよびWavelet-Cross correlation function変換システムを開発した(Fujii, and Mishima, 2012)。そして、このシステムが発育・発達曲線の類似性と相違性の判別に活用できるという検証結果を、双生児の類似性判別から導くことによって、その検証結果を得るに至った。その結果、ウェーブレット補間による発育曲線の記述と相互相関関数を適用することで一卵性と二卵性双生児間の類似性を検証した。また、双生児における類似性の評価基準は確立できていない。その点も含めて双生児の類似性を計量化するシステムを提唱した。その結果、一般男子身長発育の無作為ペアによる相互相関係数の統計値から類似性の評価チャートを構築し、その評価チャートから相互相関係数、r=0.9以上が類似性の高さを示す基準となった。この評価チャートに一卵性、二卵性双生児の身長発育の相互相関係数を適用すると、一卵性は相関は高く、二卵性はやや高い程度であり、一卵性双生児の類似性が高いことが認められた。したがって、このように相互相関関数によって客観的に類似性が判断されたことは、今後の身体発育パターン解析に重要な提示となろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、身体機能発達曲線のパターンを解析して運動能力発達曲線モデル構築への端緒を開くことを目的としている。その前に、Scammonの発育曲線が従来までに身体発育発達のモデルパターンを提示してきた事実がある。したがって、そのパターン類別の方法を検証する必要があるが、未だにScammonの発育曲線は検証されてはいないのである。よって、先ず初年度はScammonの発育曲線の検証方法として、発育曲線の類似性と相違性を客観的に検証できる方法を双生児の類似性を検証するプロセスから導こうとした。そこで、現在までの研究の達成度は、一卵性、二卵性双生児の発育データを得ることは非常に難しいために、それぞれ各高等学校に出向き、ピンポイントで所属長に対して研究の詳細を説明し、双生児本人と両親に対してインフォームドコンセントを取った。その後双生児の縦断的発育データを得た。これら収集したデータについてすべてパソコンに入力した。縦断的発育データについてはウェーブレット補間モデルを適用し解析された。さらに、ウェーブレット補間モデルによって解析されたデータをCross-correlation functionシステムによって解析し、一卵性双生児と二卵性双生児の体格における類似性の比較を行い、一卵性双生児の類似性の高さを証明した。確かに、従来の双生児研究における一卵性と二卵性双生児の遺伝的類似性を証明するには多くの双生児データが必要であったが、本研究では少数の双生児データでその類似性が明確化された。しかし、体格の場合、双生児に限らず、一般における無作為の対のデータでも類似性が高くなる場合が存在する。したがって、双生児に拘わらず、類似性評価の基準が必要となるため、その基準を構築するに至った。その成果発表は次年度に実施するので、本年度まででは50%の達成度が認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の本質的な目的は、Scammonの発育曲線を検証するプロセスから身体機能発達モデルを模索することである。先ずScammonの発育曲線を検証するためには人体の内臓の発育データが不可欠である。しかし、死体解剖による内臓のデータは公表されていないため、従来公表されてきた本の資料から抜粋する方法しかない。そこで先ず、神経型パターンとして類別される脳重量、下垂体重量の加齢による数値を抜粋、リンパ型とされる胸腺重量を抜粋、生殖型とされる睾丸、卵巣、前立腺重量を抜粋、一般型として肝臓、心臓、腎臓、膵臓等を抜粋する。得られた人体臓器の加齢測定値に対してウェーブレット補間モデルを適用する。双生児の類似性検証で適用した相互相関関数をScammonの発育曲線からそれぞれ分類される、神経型、リンパ型、生殖型、一般型に属する臓器の発育に対してウェーブレット補間モデルで記述された数値に適用する。この場合は双生児の類似性とは逆に相違性を示すことができる。一般型の発育パターンは内臓だけではないので、形態発育として身長、体重等に対してもその発育曲線をウェーブレット補間モデルで記述する。この場合は内臓等が横断的発育データであるのに対して、身長、体重は縦断的発育データの場合もあるために、一般型としての発育パターンをより明確にすることが可能である。4つの発育所属性のパターンに対して、順列組合せによる2組の対を作り、相互相関関数を適用してその相違性と類似性を解析する。この解析によってScammonの発育曲線を検証する。そして、これら成果を国際学会で発表することはもちろん、然るべき雑誌に投稿していく。
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Causes of Carryover |
本課題研究遂行のための消耗品費について、最終的に若干調整が必要であったが、少し調整不足があったようだ。次年度はきちんと調整していきたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に若干額、5,506円が繰り越しになったため、消耗品費に充てる計画である。
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Research Products
(11 results)