2016 Fiscal Year Research-status Report
体育理論を中心とした中学・高等学校におけるオリンピック教育の体系化
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26350706
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮崎 明世 筑波大学, 体育系, 准教授 (10517197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真田 久 筑波大学, 体育系, 教授 (30154123)
岡出 美則 筑波大学, 体育系, 教授 (60169125)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オリンピック・パラリンピック教育 / 体育理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はリオ・デ・ジャネイロでオリンピック、パラリンピックが開催された。オリンピックの開催に先立ち、8月2日・3日にポルト・アレグレのリオグランデ・カトリック大学を会場に行われた、第2回オリンピック研究教育センターコロキウムに参加した。日本におけるオリンピック・パラリンピック教育の実践について研究発表を行うとともに、コロキウムに参加した12か国のオリンピック教育研究センターの活動や、教育の現状について情報収集を行った。この開催に合わせて現地を視察し、リオ・デ・ジャネイロ・オリンピックの教育・文化プログラムについて実地調査を行う計画であったが、実際には会期中に行われているイベントや展示は少なく、十分な調査を行うことができなかった。 国内では、8月25日から27日に行われた日本体育学会第66回大会において、「ロンドンオリンピック・パラリンピックにおける教育プログラムの展開と現在-実践校のインタビューから」として、平成27年度のイギリス滞在期間中に収集したデータを中心に研究発表を行った。ロンドンオリンピック・パラリンピックの公式教育プログラムであった”Get Set”について文献調査を行い、実際にプログラムに参加した小学校と中学校の教員に、大会開催時の教育成果と大会終了後の現在の実践についてインタビューを行った。また、10月29日、30日に開催された日本スポーツ教育学会第36回大会においては、「学校におけるオリンピック・パラリンピック教育の課題の検討」として、昨年度までに行った教員向けワークショップの調査から発表を行った。 年度末には平成26年度に実施した高等学校における体育理論のドーピングに関する授業での成果を中心に、「高等学校の体育理論におけるアンチ・ドーピングの授業の検討-JADAアンチ・ドーピングテキストを活用して-」として筑波大学体育系紀要に論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近年のオリンピック・パラリンピックでは、前回大会が終了した時点で次回大会の準備が本格化するのが慣例となっている。平成28年度は8月、9月にリオ・デ・ジャネイロ大会が開催され、2020年東京大会の準備が本格化した年度といえる。準備の本格化に向けて、東京組織委員会の整備も徐々に整いつつあり、文部科学省や東京都ではオリンピック・パラリンピック教育の普及が進められている。それに伴って、それぞれの組織のテキストやホームページによる教材の提供も進んできたことから、本研究で従来計画していた教材と実践例についてのテキスト化はせず、論文として研究誌に投稿するなどして、社会に発信することとした。平成28年度には本研究での実績をもとに、雑誌「体育科教育」(大修館書店)において「オリンピック・パラリンピックを教育の場に活用するために」というテーマで1年間の連載を担当し、研究成果を社会に発信した。また、作成した教材を使って実際に授業を行った成果を論文として発表した。しかし、ホームページによる教材の整備は十分に進められなかった。 国際的なオリンピック教育の研究については、リオ・デ・ジャネイロ大会を前に行われたオリンピック研究教育センターコロキウムに参加し、世界各国ならびに開催国ブラジルの教育プログラムや教育実績について情報を収集した。しかしながら、リオ大会で展開された教育プログラム「Transforma」については、英語で発信されている情報が少ないことや現地での教育プログラムの展開の問題もあり、十分な情報収集を行うことができなかった。今後展開される日本における教育プログラムは、国際的に発信できるよう英語の記述や紹介を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は従来、平成28年度までの計画であったが、平成29年度に計画を延長してこれまでの成果をまとめ、中学・高等学校におけるオリンピック教育の体系化を進める。また、現在までのところでまとめられるものについては、学会発表や学術誌への投稿などの形で社会に発信する計画である。 近年のオリンピック・パラリンピックでは、組織委員会によって統一された教育プログラムが整備され、それを使って開催国の中でオリンピック教育を普及することが一般的となっている。しかしながら、2020東京大会に向けた準備が進められるにつれ、東京大会に向けてはそのような統一された教育プログラムは作成されないことが明らかになってきた。教育は国によって歴史や政策が異なり、それに支えられる文化の影響を大きく受けることから、わが国では我が国古来の教育の制度や実績を生かした普及を目指すことになる。組織委員会は、「ようい、どん」という教育プログラムを公表しているが、これはロンドン大会における”Get Set”や、リオ大会における”Transforma”のような統一された教育プログラムではなく、さまざまな形で行われているプログラムを認証するような形で行われる。現在、東京都が教育においてもリードしているが、国を挙げてオリンピック・パラリンピック教育に取組み、大会の開催を契機としたレガシーとして教育を残していくためには、今後の全国に向けた展開が重要である。そのためには教育プログラムの形式(どんなことができるか)や実際に使用できる教材の提供が必要で、各機関による情報の共有と内容の体系化が必要である。 本研究では中学・高等学校に焦点をあてて、先行して行ってきた教材や実践例に加えて、実際の中学・高等学校でのオリンピック・パラリンピック教育の実践についての情報収集を進め、体系化に向けての中間的な報告ができるよう研究を進める計画である。
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Causes of Carryover |
当初計画の3年間のうち、8か月を研究を進めるための海外出張に費やしたため、国内で計画していた実践や調査に遅れが出ていた。 平成28年度はリオデジャネイロでオリンピック・パラリンピックが開催され、その終了と同時に次の2020東京大会の準備が本格化したといえる。それに伴って東京都や組織委員会、文部科学省など関係組織が様々な教材を作成しているため、当初計画していた教材や実践例のテキスト化を考えなおし、論文や学会発表の形で社会に発信することとした。また、ワークショップについては、海外から研究者を招聘する予定であったが、国内の事例を紹介し発展させる方が今後のために有意義であると考え直し、招聘を行わなかった。そのため、テキスト化のための印刷費や海外からの研究者招聘のための旅費に未使用額が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には、これまでに進めてきたオリンピック・パラリンピック教育に関する体育理論の教材開発や実践に加えて、さらに中学校・高等学校での実践例の情報収集や授業計画の実践とその情報収集のための交通費や謝金、教材費などにあてる計画である。 また、計画の最終年度にあたるため、計画のまとめを既存の筑波大学オリンピック・プラットフォームのホームページ等で公表する予定で、ホームページの機能拡充としても使用する予定である。
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Research Products
(3 results)