2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26350708
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
瀧澤 文雄 千葉大学, 教育学部, 教授 (50114294)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 身体教育学 / 身体性哲学 / 運動実践 / 思考の論理 / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、運動実践の現象学的分析によって、「身体運動の論理」を探り出し明示することである。身体運動を習得することは、ある意図のもとに、みずからの身体と外界との関係を築くことである。このことを明らかにするためには、運動実践に潜む身体運動の論理を、運動を実践している主体の側から分析する必要がある。それを可能にするが現象学的方法だと言えよう。この分析方法により、身体の論理が明らかになり、その論理を中核として、身体を教育するための現象学的運動学が明確になると考えている。 本年度は身体運動の論理を、これまでの筆者の研究テーマであった身体の論理および身体的思考の論理との整合性を図りつつ探求した。特に、運動を実践する際に必要となる意図について、文献研究と実践的研究を踏まえ考察した。それと同時に、身体運動を運動主体の側から考察する方法として、現象学的方法の簡素化と明確化に向けて研究を行った。この方法については、体育現場で実際に運動指導する教員が活用できることを目指している。 研究成果の公表については以下の通りである。身体運動の論理についての研究成果と関連づけて、主に意図と運動実践を中心に、2016年9月、英国のCardiff Metropolitan Universityで開催された第43回国際スポーツ哲学会において、 What Sort of Intention is Required for Movement Practice? - A Investigation into the logic of human-bodily movement - という演題で発表し意見交換を行った。また、同年8月に愛知教育大で開催された日本体育・スポーツ哲学会において、本研究の成果に関連づけて、運動実践の哲学 -現象学的観点から実践を分析する- と題して、会長講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度当初は次のように研究計画を立てた。①人間の運動に関する哲学的文献についての研究を継続する。②現象学的運動学において中核となる身体運動の論理について、身体の論理と身体的思考の論理との整合性を図りつつ考察し、運動実践に不可欠な論理として抽出する。③そのために、現象学的方法についても考察し、運動実践に活用できる方法として簡素化する。④その研究成果として、国際スポーツ哲学会において研究テーマである身体運動の論理に関連する発表を行い議論する。 ①については、主に意図について人間の運動実践に関わる文献の研究を行ったが、予定した文献すべてに目を通すことはできなかった。②については、身体運動の論理および身体の論理との区分けがより明確になり、それに伴って身体的思考の論理との関係も明確になった。③現象学的方法についての文献研究は進んだものの、身体運動学の方法として簡素化し整理することは継続的課題となった。しかし、実践的な分析を行う中で、その方法は明確になりつつある。また④については、第43回国際スポーツ哲学会において、身体運動の論理の一部として運動実践における意図について研究発表を行った。発表会場での議論だけでなく、さまざまな参加者と話す機会ができ、研究状況を含め多くの情報を得ることができた。さらに日本体育・スポーツ哲学会において、本研究課題と密接に関連する内容を同学会会長講演として発表した。しかしながら本年度は、身体運動の論理に関連する原著論文を投稿することができなかった。以上のように本年度の達成度については、計画はほぼ達成されたものの、研究成果の公表という点においては不十分であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度である。前年度までの考察をもとに、意図を含めた身体的思考と運動実践との関連を探りながら、引き続き文献研究と現象学的分析を継続する。これらの考察を背景に、具体的な体育授業において運動指導を行い、抽出した身体運動の論理についての検証的考察も行う予定である。そのことによって、人間が行う運動実践の独自性となる身体運動の論理を体系化し明示したい。 人間が意図的な身体運動を実践するためには、身体の論理に従って、ある意図のもとに身体的思考を行い、その意図を実現することである。すなわち、人間の身体運動においては実践を具体化するための意図が不可欠である。その意図は下位〔動作〕と密接に関連している。本年度は特に、下位〔動作〕という概念を再検討すると同時に、実践と意図との関係を明確にすべく考察する。さらに、下位〔動作〕と〔動作〕との連関を検討しつつ、下位〔動作〕との関連から意図をどのように活用するのかについても考察を加える。身体の論理を明示することよって、現象学的運動学の骨子が提示できるであろう。 最終年度の研究成果の発表については、本研究を開始する時点で第44回国際スポーツ哲学会において行う予定であったが、開催地がギリシャとなり、現在のところ当該国の政情が不安定かつ危険であると判断し、取りやめる予定である。よって、大阪体育大学で開催される日本体育学会において、本テーマに関して「運動をつくる」(仮)という演題で研究発表を行うこととした。また本研究の成果として、身体の論理を中核とした現象学的運動学という著書を出版したいと考えている。
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Research Products
(2 results)