2014 Fiscal Year Research-status Report
ダンス必修化に対応する即興表現を通したレジリアンス開発
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26350711
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
高橋 和子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (10114000)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダンス必修化 / 即興表現 / レジリアンス / 初心ダンス指導者 / モデル教授法 / 映像作成 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】即興表現の研究成果を小中高の教員に適用する為、3点を目的とした。(1)創作ダンスやリズム系ダンス指導における有効性の明確化(2)初心ダンス指導者にとって最低限身に付けるべき即興表現の技能や教授技術の精選(3)グローバル人材育成に欠かせない「レジリエンス」開発に及ぼす影響の明確化である。 【平成26年度の研究実施計画】に基づき重要な研究実績があがった。 1.即興表現指導者の実習受講、並びにインタビュー:(1)ブリギッテ ホイジンガー(独:マーブル大学)の研修を4/6日受講しダンス教育専門家養成の方法(コンテンポラリー・ダンス,創作ダンステクニック・即興・音楽)を把握。(2)ボニー・コーヘン(米:ボディマインドセンタリング創始者)の研修を5/2日受講し、内的感覚の重視とワークの方法を把握。(3)ローザ・ロペス(ベネズェラ:リベルタドール実験教育大学教授)のラテンダンスの研修を8/20日受講し文化的背景と笑顔で自由に踊る大切さを把握。(4)タンシンベン(英:プリマス大学客員教授)の講演を8/19日聞き、文化の壁を越えた身体教育の研究には「感覚と感受性」が重要である事を把握した。 2.4つのモデル教授法選定・映像作成では、(1)師範型(2)言葉での誘導型(3)課題提示型の教授法に基づき教材選定を行い評価を得た。初心の中学校ダンス指導者が即興表現の技能を習得後、授業実践を行い映像を作成。(4)複合型指導では、岡本和隆教諭の指導した中学生が「第2回全国中学校リズムダンスふれあいコンクール」で文部科学大臣賞を受賞し「ダンスで彼らは成長できた」事によりレジリエンス(立ち直る生命力)を実証した。 3.中学生18,622名に「レジリエンス」調査を実施した結果、「疲れ・怒り・悲しい」の3因子が抽出され、「疲れやすさ」「体がだるい」と答えた中学生が半数近くいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究の目的(研究実績概要に記述)】に掲げた3点についてある程度の検証ができた。 【平成26年度の研究計画】に掲げた3項目についても、概ね順調に進展したと言える。 1.即興表現関連の指導者へのインタビューは、コンテンポラリー・ダンスのスティーヴ・パクストンに代わり、国際的に活躍しているブリギッテ ホイジンガー(独)、ボディマインドセンタリングのイエンツ・ヨハンセンとダニエル・ヴェルナーに代わり、創始者のボニー・コーヘン(米)、加えて、タンシン ベンにインタビューができたことにより、予定以上の貴重な言説を得ることができた。 2.4つのモデル教授法選定・映像作成では、学会発表や研修会での提示、並びに初心ダンス指導者による映像(DVD)作成もできた。映像は各都道府県教育委員会並びに横浜市の小中学校500校に配布しており、多くの活用が期待できる。 3.教員への映像視聴・質問紙調査・即興表現の体験・web 発信においては、全国の教員への質問紙調査・即興表現の提供ができたことにより、ある程度の検証ができたと言える。 4.計画には掲げていなかった中学生への「レジリエンス=立ち直る生命力」調査の必要性から、全国中学生18,622名に調査を行い因子分析を行ったところ、今後の研究推進にとって、貴重なデータが得られた。この点は当初の計画以上の進展が得られたと考えられる。 以上のことから、研究の目的の達成度は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に予定した研究計画のうち実践できなかった「即興表現のweb 発信等」を行うと共に、下記の研究計画を中心に実践する。 1.教員への映像視聴・質問紙調査・即興表現の体験:平成26年度実施した同じ調査を、27年度は神奈川県、東京都、長野県、福島県、岩手県の教員にも実施する。特に、生徒の即興表現や自由に踊る体験を教材内容にしていないことが先行研究でわかったことから、教師自身が即興表現やリズムに乗って踊る体験を重視し、質問紙調査を行うよう計画する。 2.26年度に実施した中学生への「レジリエンス」調査対象を全市を挙げて創作ダンスに取り込んでいる神戸市(被災地)にも行い、他地域との比較によってダンスの影響を探る。 3.諸外国での研究成果の検証:ダンス教育が、小学校から中学校において系統だって実践されているイギリス・ロンドンの教育現場で、作成したダンスパッケージの有効性を検証する。その際、現在ロンドンでダンス振付家として活躍している南村千里さん(横浜国立大学修士課程修了:高橋和子ゼミ所属)や阿部あかねさん(中京大学卒業)にも支援頂く予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度の当初計画では旅費(国内160,000円,外国旅費320,000円)と謝金等(謝金100,000円,賃金240,000円,web作業260,000円)の総計で1,080,000円を計上していた。平成26年度は文部科学省委託事業「中学校における武道・ダンスの指導状況等の調査」を6月に受諾し、そこでの全国調査に科学研究費の一部を加えて行ったため、科学研究費の支出を抑えることができた。また、即興表現関連の指導者へのインタビュー(諸外国の研究成果の収集含む)についても、コンテンポラリー・ダンスとボディマインドセンタリングの世界的権威の指導者らが来日したことにより、海外旅費を使用しなくて済んだことも、次年度使用額が生じた大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度当初計画では、旅費(国内240,000円,外国旅費400,000円)と謝金等(謝金30,000円,賃金100,000円,web作業260,000円)を計上しており、その通りに実行する。加えて国内への調査研究を追加したことに伴う旅費の増額と、神戸市中学生10,000人の調査を計画に加えたことによるデータ入力の賃金が派生する。
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Research Products
(16 results)