2016 Fiscal Year Research-status Report
ダンス必修化に対応する即興表現を通したレジリアンス開発
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26350711
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
高橋 和子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (10114000)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レジリエンス / ダンス / 即興表現 / 初心ダンス指導者 / モデル教材 / 映像作成 / web発信 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、即興表現の研究成果を小中高の教員に適用するため、①創作ダンスやリズム系ダンスの基本的内容である即興表現指導の明確化 ②初心ダンス指導者にとっての即興表現指導の教授技術の精選 ③グローバル人材育成に欠かせないレジリアンス開発にダンスが及ぼす影響の明確化である。 平成28年度は、次の観点から目的を達成できる成果を得ることができた。①「即興表現の諸外国の研究」は即興表現の理論構築にあたるが、Body-Mind Centeringの創始者であるBonnie Cohen女史のワークショップ受講とインタビューから、即興表現の有効性に関する知見を得た。②「即興表現の教授技術の精選」については、教員免許更新講習受講者100名に教授技術のコツを提示し実践していただいた結果、初心指導者にとっても実践可能であることが検証できた。③「レジリアンス開発の有効性」については、即興表現を大学生に実施しその前後のレジリアンス尺度をみた結果、ダンスが及ぼす肯定的な変容が見られた。また、レジリアンスを測る「精神的健康尺度」と「運動・ダンスの好き嫌い」の関連を、中学生3万名、高校生約千名、大学生1,400名、教員約700名に大掛かりな調査ができた。その結果、「運動・ダンスの好き嫌い」群がレジリアンスに有効であること、精神的健康尺度の4因子のうち[憂鬱]因子は成長に伴い増加傾向に、[怒り]因子は成長に伴い減少傾向であることが分かった。④前述した即興表現教材の見える化を図るために「モデル教材のweb発信」を行い、多くの教員や教員養成系学生から、教育現場での実践の参考になるとの意見を頂いた。 以上の結果より、「ダンス必修化に対応する即興表現を通したレジリアンス開発」に関する研究目的は、ある程度、達成できたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、即興表現の研究成果を小中高の教員に適用する為に、前述した研究実績に掲げた3つの観点をあげて行ってきた。 平成28年度は、Body-Mind Centeringの世界的に著名なBonnie Cohen氏への聞き取り調査から即興表現に関する氏の言説を引き出せたことは、非常に特筆すべき成果であった。また、氏が日本の学校現場における即興表現のアクティブ・ラーニング的実践について高い評価をされたことは、今後の日本のダンス教育への視座となることでもあった。更に「ダンスがレジリアンス開発に有効か」についての検証も、3万人以上の対象者に対して行った実績は稀有であると共に、運動・ダンス好きの人はレジリアンスも高いことが実証されたことで、本研究の対象であるダンスとレジリアンスの強い関連性が示唆できた。加えて、初心ダンス指導者にとって即興表現の難しさを克服するためのモデル教材をweb化したことは、多忙化する中学校教師にとって「いつでも・どこでも・誰でも」が視聴しながら教材研究できるものとして、横浜市教育委員会指導主事からも高い評価を得ることができた。 以上のことから、研究の目的の達成度は、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、即興表現をすることがレジリアンスを高めることに繋がるとともに、ダンスの初心教員にとっても、即興表現のモデル教材(方法と内容が提示されている)のweb化によって指導が簡単にできる手がかりを提示できた。しかし、小・中学校の教育現場では運動会や体育祭では「振り写し的ダンス」の実践が多くなされている現状が見られる(高橋和子・村田芳子、2016)。そこで、今後の研究を推進する方策として、下記に掲げたことが重要になろう。 ①教員養成系の学生に、授業の単元としてダンス実践をするという意識変革が必要である。 ②2020年実施予定の改訂学習指導要領が公示され(2017年3月)、「主体的・対話的で深い学び」が重要視されている。ダンス指導は戦後70年以上にわたって、このような学びの方法に倣って指導を展開してきた実績がある。それを反映して本研究の成果物である「モデル教材」のweb発信をしたが、この普及や情報提供を積極的に行う必要がある。 ③今回得られたレジリアンスの調査結果を、「発達段階・性差・運動」などの要因から更に詳細に分析し、傾向を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2016年3月北京林業大学でのダンス即興表現ワークショップの成果を基に、2017年3月上海東華大学において追加検証実験ができた。中国におけるダンス指導は教師主導による「動きの振り写し」が主である。今回、本研究で提示している即興表現をアクティブ・ラーニング的に指導するやり方の成果が上がった為、初体験の学習者にとっても、この指導法が認められたことになる。 その成果を、2017年4月以降に開催される国際女子体育会議や日本体育学会等で発表することが決定した。その為、補助事業期間の延長を申請し、受理された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、①研究発表(旅費・参加費等)並びに、②研究成果のまとめの為に、助成金使用予定である。 ①の研究発表は次の通り予定している。4/30日 International Dance Workshop(ヤンスンヒ講師、NYCに於いて)、5/17-21日 第18回国際女子体育会議(米国フロリダのバリー大学:通訳)、9/8-10日 第68回日本体育学会(静岡大学)、10/21-22日 人体科学会(上智大学)、12/16-17日 第37回全国創作舞踊研究発表会(宇都宮大学)。 ②の研究成果のまとめの為に、謝金等(資料整理、データ入力、web入力)が派生する。
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Remarks |
研究テーマの「即興表現を通したレジリアンス開発」に直結するダンス教材を、幼児・大学生を対象に行った映像、並びに、即興表現をベースに創作した授業作品とクラブ作品の動画を掲載した。
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Research Products
(27 results)