2015 Fiscal Year Research-status Report
大正後期~昭和初期における「体育ダンス」教材の受容と紹介
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26350717
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
廣兼 志保 島根大学, 教育学部, 教授 (00234021)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 体育ダンス / ナチュラルダンス / Margaret H'Doubler / エクササイズ / 基本運動 / 指導理論 / 1920年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象は、大正8(1919)年から昭和11(1936)年までの「体育ダンス」教材である。研究目的は、日本の体育指導者達が欧米のダンス教材を我が国に紹介する過程で、ダンス教育の理論と教材がどのように取捨選択されたかを明らかにすることである。 そのため、本研究では、大正15(1926)年に荒木直範(1894-1927)が紹介したダンス教材のうち、ナチュラルダンスの事例を取り上げる。荒木がアメリカ合衆国への留学時に視察したウィスコンシン大学のMargaret H'Doubler(1889-1982)のダンス教育の理論と教材を明らかにし、荒木が我が国に紹介したナチュラルダンスの理論や教材が、H'Doublerの原典ではどのように提示されていたかを明らかにする。 平成27年度は、前年度に日本スポーツ教育学会で発表した、H'Doublerの教材観、指導観、及び教材の実際、学習内容、指導方法、めざす学習者像の特徴について論文化した。その結果、以下の内容が明らかにされた。 H'Doublerは、学習者の創造性を育てるため自己表現としてのダンスの教育を展開した。彼女は、学習者が、他人の模倣でもでたらめな動きでもない自然で合理的な動きによって自己表現ができるようになることをめざした。そのため、彼女は表現媒体としての学習者の身体を育成する方法を提示した。それが“Exercises for Fundamental Motor Control”である。学習者は、運動感覚と解剖学的知識、実践と理論、主観的な認知と客観的な分析を往還しながら動きの構造を理解し実践することを学んだ。“Exercises for Fundamental Motor Control”は、特定の部位から全身へと配列され、関節の動きや制限、反動の動き、移動の動き、リープ、ロール、臥位から立位への姿勢の転換を含んでいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に日本スポーツ教育学会で発表した研究成果を研究論文『Margaret H'Doubler(1889-1982) が提示した“Exercises for Fundamental Motor Control” (1921)についての考察』にまとめ、査読を経て、学会誌に掲載することができた。このことにより、研究計画通りの成果を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①現在は、Margaret H'Doublerが提示した、もう1つの教材“Realization and Appreciation of Music through Movement”の読解を進めている。この作業を通して、28年度には、H'Doublerが音楽の基本的な構造の理解を基にいかにして学習者に身体運動を通して音楽を認識させようとしていたかを明らかにし、研究成果を学会で発表する。これらの研究成果を27年度までの研究成果と併せて考察することで、 H'Doublerが1920年代に提示したダンスの指導観、教材観、教材、学習内容、指導方法の全容に迫る。 ②また、国内外の大学が所蔵する資料を検索し、H'Doublerを始めとする1920年代のダンス教育指導者が実践したダンス教材や指導方法等の実際を解明するための資料を収集し整理する。この作業によって、29年度以降の研究の準備を整える。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、H'Doublerが提示した教材の復元と映像資料化を実施しようとしていた。しかし、学会での研究発表とその論文化を先に進め、教材の復元と映像資料化を見送ることにしたため、映像資料化に必要な人件費と謝金を次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「今後の推進方策」の①を実行するために、当初の研究計画で配分していた研究費を使用する。学会での研究発表の際に映像資料の作成が必要となった場合は、繰り越された人件費と謝金も充当する。 「今後の推進方策」の②を実行するために、当初の研究計画で配分していた研究費を使用する。
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