2014 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代関東農村における剣術流派の普及と展開に関する実証的研究
Project/Area Number |
26350731
|
Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
数馬 広二 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30204407)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 武蔵国多摩郡下犬目村斎藤家 / 八王子千人同心 / 大平真鏡流剣術 / 熊野三社牛王印 / 伊予史談会文庫『廻国英名録』 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.武蔵国における剣術流派ー多摩郡下犬目村斎藤家の武術流派に関する調査:斎藤家は八王子千人同心中村組の組頭役の職務を遂行しつつ、下犬目村の名主であり、斎藤宗五郎、斎藤虎太、斎藤庄十郎(冨八)の三代にわたり、大平真鏡流剣術に入門し修行していた。斎藤宗五郎の『御用留』によると日光東照宮の火の番として勤番中に、日光同心へ大平真鏡流を指導し中傳を授与していた。斎藤家文書で大平真鏡流柔術初伝(文化14年(1817)「治内之巻」)により、剣術、柔術が並習されたことがわかった。下犬目村斎藤家は、隣村の戸吹村で千人同心の松崎正作(天然理心流免許)と地域的に近く近村同士で異なる2つの流派が共存していた。以上の調査において、以下の斎藤家文書を撮影、翻刻した。①『天保一一子年四月 宗旨人別五人組御改帳 御知行所 犬目村』②『 諸用留(文化二年巳正月吉日)』③『文化十二亥年七月・月番帳』④斎藤家由緒書⑤『諸用留(寛政十一年 未正月吉日)』⑥『 諸用留(文化二年 巳正月吉日)⑦『文化七午年 日光御番之日記 斎藤宗五郎 十一月二十八日迄 十二月帰国⑧「請取申御扶持方之事」⑨「日光勤番日記帳」⑩『文化十二年十二月 月番帳 月番窪田弁次郎』⑪『犬目 斎藤虎太様貴下 戸吹 松崎正作』 2.江戸時代における民衆信仰(特に熊野信仰)と馬庭念流剣術の関係:馬庭念流(群馬県高崎市吉井町馬庭で600年の歴史をもつ剣術流派)の起請文にみられる八咫烏の牛王印が、和歌山県の熊野三社(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)のうち該当する牛王印を確認した。 3.愛媛県松山市・愛媛県立図書館に所蔵する伊予史談会文庫『廻国英名録』は、江戸時代文化・文政時代の武者修行帳で、関東における武術流派の分布を確認できる貴重な史料であり、これを撮影することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題である農村における剣術流派の普及状況に関して、26年度は、江戸時代武蔵国多摩郡犬目村の名主斎藤家における大平真鏡流を調査できた。また関東における武術流派の分布を確認できる貴重な史料である『廻国英名録』(愛媛県立図書館蔵)を撮影することができた。3.江戸時代、群馬県高崎市吉井町馬庭の馬庭念流に入門した門人の起請文に記された八咫烏と和歌山県にある熊野三社(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)の牛王印であることから起請文と民衆信仰の関係を調査することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.平成27年度には、①26年度に調査出来なかった毛利博物館(山口県防府市)に所蔵で瀬戸内海の水軍・臼井氏が発給した武芸伝書(文明8年・1531年の「内書」ほか5点)に記される武の伝承を、この時代の文書が比較的豊富に所蔵されている山口県立文書館とあわせて調査、撮影、解読をする。②また武蔵国江戸、常陸国(茨城県)、棚倉藩(福島県) の道場と剣術流派を調査する。調査予定の流派は小野派一刀流、中西派一刀流、東軍流、唯心一刀流、直心影流、示現流など。③可能であれば茨城県、東京都の神社・仏閣に奉納された剣術流派門人姓名額の実地調査をおこないたい。 2.平成28年度(本課題研究最終年度)には、武蔵国江戸、下総国、上総国(千葉県)、甲斐国(山梨県)、上野国(群馬県)における、①北辰一刀流、富士心流、小野派一刀流、荒木流、心流、学心流などの門人家を調査する。②また神社、仏閣への奉納姓名額の調査として千葉県、山梨県、群馬県、東京都の神社・仏閣に奉納された剣術流派門人姓名額の実地調査をおこない、流派門人の広がりについて明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
平成26年度は、概ね順調に研究が行われたが、このうち、斎藤家文書の目録作成および撮影にあたり、アルバイトの都合がつかなかったことから人件費が予定を下回った。また、当初計画していた山口県毛利図書館および山口県立図書館への調査が出来なかった。以上2つの理由から次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、史料整理として人件費を平成26年度予定人件費の一部を加算して計上する。また、平成27年度旅費として26年度に実施出来なかった山口県毛利図書館および山口県立図書館への調査旅費として予定計上する。
|
Research Products
(2 results)