2015 Fiscal Year Research-status Report
反省的実践にみる身体教育の可能性―体育の再定義と教師教育への応用的展開―
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26350732
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
釜崎 太 明治大学, 法学部, 准教授 (00366808)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒューバート・ドレイファス / 身体知 / 暗黙知 / 科学知 / 認知科学 / 人工知能 / 反省的実践 / 行為の中の反省 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度においては,26年度に情報収集と分析を進めたヒューバート・ドレイファスの人工知能批判と身体教育の可能性に関する研究成果を学会発表・学術論文化することが研究活動の中心となった。 26年度の実績報告書に記したように,ドレイファスの研究成果によれば,人間の知は中枢としての脳(精神)が末端としての身体を動かすといった人工知能モデルのメカニズムにおいて表象として獲得されているのではなく,身体知を基盤としてながら構成されているのである。 この知見に加えて,27年度はさらに,(1)知の概念を人工知能をモデルとする従来までの知から,身体によって構成される知へと再定義するとき,学校のあらゆる教科において,科学化・学校化された知を子どもとたち一人ひとりの身体経験によって再構成するような教育が求められること,(2)そのような教育は,子ども―文化―教師の関係性における交流を単なる「知=情報」の移動に限定してきた従来までの教育観を超えて,「知=意味」の交流を実現させる可能性があること,さらに(3)そのような教育を成立させるためには,教師の身体知の次元での「反省(行為の中の反省)」が必要なのであり,その身体教育こそ人工知能にはなしえない人間の教師の独自的な教育であることを論証した。以上の内容を日本体育学会体育哲学専門領域の定例研究会において発表し,学術論文「人間の教師には何ができるか―ドレイファスの人工知能批判と身体教育」として公表した。 なお上記の研究のなかで新たな研究課題として発見された「電子メディアと身体知」の関係にもとづく教育論を展開すべく,28年度研究にむけて,新たにフーコー,シュスターマン,ポスターらの読解を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒューバート・ドレイファスの人工知能批判から得られた新たな知の概念とエキスパート教育の視点を,学校教育と教師教育に取り入れることで生じる反省的実践=身体教育の可能性を示すことができ,その成果を学会発表および研究論文として公表することができた。当初の計画とはやや異なるが,電子メディアと身体知の関係にもとづく身体教育の可能性という極めて現代的な問題にまで新たな展望が開かれることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
反省的実践に関する包括的研究から,反省的実践=身体教育の新たな可能性(電子メディア時代の身体教育)の研究へと方向を変えることになるが,むしろこれは現代日本の学校教育を取り巻く問題状況を考えるとき,極めて発展的な修正(進展)であると言える。この研究課題を達成するために,今年度は電子メディアに関する文献を数多く収集・分析する必要がある。
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Causes of Carryover |
文献収集・調査のための出張の時間が取れず,出張旅費・収集費用等の未使用分が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に実施できなかった文献収集・調査のための出張・収集を実施する。
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