2016 Fiscal Year Research-status Report
反省的実践にみる身体教育の可能性―体育の再定義と教師教育への応用的展開―
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26350732
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
釜崎 太 明治大学, 法学部, 専任准教授 (00366808)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 「規律訓練」権力 / ベルリン・オリンピック / カール・ディーム / 神話 / 祝祭 / メディア / 能動的参加 / 自発的服従 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度においては,「電子メディアと身体」の関係を特にポスターの議論に着目しながら探究し,さらにオリンピックとプロスポーツに着目しながら,広くメディアと身体の関係をフーコーやモッセの「規律訓練」権力との関係において検討することが研究活動の中心となった。具体的には,1936年のベルリン・オリンピックとドイツのプロサッカーリーグ・ブンデスリーガに焦点化した。 ポスターの議論にしたがうならば,電子メディアによる人間への影響は,フーコーがいう身体の「規律訓練」権力と密接に結びついている。この結び付き方については,ラカン派の心理学でいう「鏡像段階」に始原がある。いわゆる身体的な模倣のレベルである。この点に関する研究成果は来年度にむけて論文として公表する予定である。 今年度は,これまでに自らが公表してきた知見と結びつけるかたちで,ドイツのベルリン・オリンピックとブンデスリーガにみられる,メディアと「規律訓練」権力の結びつきについて学会発表してきた。フーコーによれば,身体の規律訓練が十全に機能するのは主体的行為においてである。その自発的服従の主な要因を,モッセは「能動的参加」による「祝祭」に求めている。この「能動的参加方式」の「祝祭」として,カール・ディーム(特に新しい知見として彼の小説とそのラジオ放送)を中心に多数の宗教的・伝統的な演出が加えられたベルリン・オリンピック,クラブ会員の積極的な会費と運営参加を基盤としながら「神話」を生み出してきたブンデスリーガのメディア報道が機能しているのである。特に後者による「身体の規律訓練」化は「文化・芸術の商業主義化」という現代社会の支配的傾向とも密接に結びついており,その改善が身体教育の課題として待たれることを指摘してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,「電子メディアと身体知」の関係を深める予定であったが,その探究の過程において,過去の私自身の研究成果であるドイツのオリンピックとサッカークラブの問題に「身体の規律訓練」が接続することがわかり,そちらの問題を深めていく方向へと時間を割くことになった。これらの成果は現代の身体教育の問題に大きな知見をもたらすものではあるが,当初の予定から考えると「教育」の視点をより深めていくことが課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は「文化・芸術の商業主義化」という現代的傾向が,メディアなどを通じて規律訓練化されることでもたらされたものであり,その根底に急速に変化した「時間感覚」があることが理解された。つまり,反省的実践=身体教育の新たな可能性として,「時間感覚」を変化させるという課題があるのである。今年度は,引き続き電子メディアと身体教育の問題を深めながら,来年度の検討課題である教師教育論へのつながりについて検討していくことになる。
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Causes of Carryover |
文献収集・調査のための出張の時間が取れず,出張旅費・収集費用等の未使用分が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年,一昨年度に実施できなかった文献収集・調査のための出張・収集を実施する。
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