2015 Fiscal Year Research-status Report
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26350746
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 恵子 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10273830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大英帝国主義 / 大日本帝国主義 / 日英比較 / スポーツ史 |
Outline of Annual Research Achievements |
JSSGS日本スポーツとジェンダー学会第14回大会にてシンポジウム報告を行い、その中身は『現代スポーツ評論』33巻およびJSSGSの学会誌『スポーツとジェンダー研究』14号に「英国女性スポーツ史研究にみるジェンダー空間の分析」として公表した。そこでは本課題研究が掲げる日英帝国主義研究の中でもフェミニズム運動を通してみた日英同盟期における両国の関係を分析し、英国におけるスポーツに関するジェンダー空間を細分化して捉えることにより、特に階層空間によって異なる経路が存在したこと、近代日本における国民国家成立期、日英同盟期、文化ナショナリズム生成期の文化融合のコンテクストを明らかにした。 またISHPES国際体育スポーツ史学会第16回大会に参加し、共著"Sporting Ethics and Bushido: The Soul of Japan (1900) written by Inazo Nitobe"を公表した。そこでは日清・日露戦争を経て、外国からの脅威に対し、日本は大英帝国を参照しながら、西欧列強に対峙できる帝国主義政策を推し進める必要があり、エリート教育機関によって推奨された男子の理想像、シンプルマンリネス(質実剛健)と新渡戸稲造の「武士道」は大日本帝国主義のもとで生成された文化ナショナリズムを経由し、E・ホブズボウムのいう「創られた伝統」となったと結論づけている。 さらに、英語論文"Towards the Construction of a New Regionalism?- The End of East Asian Colonialism: Japanese Reactions to the Asian Games"を英国における帝国主義研究の第一人者であるJ.A. Manganと共著で執筆した。現在印刷待ちの段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は所属研究機関の異動に伴い、予算の一部を次年度に充当せざるを得ず、また国外の学会における公表を断念するなど、研究を遂行する上で困難な状態があった。しかしながら、本年度は異動先での研究環境が整い、本課題を遂行する上で充実した1年となった。具体的には、日英比較帝国主義研究として帝国主義フェミニズム研究の成果を国内シンポジウムにおいて報告し(招待講演)、夏季には国際学会にて共著論文の公表を行った。秋季から冬季、年度末にかけて3本の論文を執筆し、このうちの2つは前者のシンポジウム報告の論文化であり、年度末に執筆を終えた国際論文はスポーツと帝国主義の問題に関する世界的大家J.A.マンガン氏との研究連携の達成を意味した。日本帝国主義の問題を大英帝国主義研究を通して炙り出す試みに挑戦した結果、そのトランスナショナルな方法論の必要性も明らかになり、帝国主義とは何かという本質的な問いそのものも深化させることにつながった。この意味で、比較研究の成果は計画以上の成果を生むこととなり、有意義な年度となった。最終年度の次年度に向けて、全体を総括し、新たな方法論の提言を本研究の帰結点として提示していきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果として記述したように、日本帝国主義の問題を大英帝国主義研究を通して炙り出すという試みは、トランスナショナルな方法論の必要性を明らかにする結果となった。こうした成果を受け、本年度末に札幌市内にて開催された研究会にて口頭報告を行い、方法論そのもののパラダイムチェンジの必要性を提起している。具体的には、これまでは日英帝国主義の「比較研究」の必要性説いてきたが、個別研究の成果は、比較ではなく、国家そのものの境界を解体した歴史研究を行う必要性へと帰結していることを述べた。またこうした新たな視点は世界各地で同様の傾向が提示されていることと関連している。それゆえ、本研究は以後、「トランスナショナル」な方法論を提起する研究へと帰結できるという結論の見通しに至っており、すでにそうした方法論を軸とした、最終年度の分析に着手している。すでに2016年9月に英国で開催されるヨーロッパスポーツ史学会にて“Exploring the Paradigm of Transnational History on Gender, Imperialism and Fascism beyond the Perspective of the Anglo-Japanese Relation”の公表をエントリーしている。
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Research Products
(7 results)