Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,スポーツにおける成功体験に焦点をあてることにより,それを導くアスリートや集団の心理的要因を多面的に捉えながらメカニズムを構築していくことであった.メンタルタフネスを測る尺度の開発と妥当性の検証を行った結果,メンタルタフネス尺度(MTS:11項目)を完成した.次に,メンタルタフネスと同様の概念として,注目されているレジリエンスについても並行して調査を進めた.レジリエンスとは,挑戦にうまく取り組む,または困難を乗り切る心理的傾向とされている(Sarkar et al., 2014).Nishi et al., (2010) によるJapanese version of Resilience Scale 14項目 を用い,メンタルタフネスとの関係を調査した.大学生のアスリート350名(女性n = 117,男性n = 230,年齢 m=19.23,SD = .91)を対象とした調査の結果,メンタルタフネスとレジリエンスには中程度の相関関係が認められた(r = .58, p>.00).次に,メンタルタフネス,レジリエンス,完全主義傾向(高い基準,相違感,失敗を恐れる,周りの期待),楽観性,及びホープを同時に検討することにより,メンタルタフネスとレジリエンスの適応性について検証した.二次因子分析の結果,2因子構造が確立された(全分散56.36%).メンタルタフネス,ホープ,レジリエンス,高い基準,周りの期待,楽観性は因子1,そして,失敗を恐れる及び相違感を因子2であった.よって,メンタルタフネスとレジリエンスはともに,ポジティブな心理的傾向であることが明らかとなった.レジリエンスに関係する4つの環境には,退屈,結果重視,過ごしやすい,成長を促す,が挙げられた.全国・国際大会出場レベルの選手はそれ以下の選手と比較し,高い基準,周りの期待,ホープが高いことが認められた.
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