2016 Fiscal Year Research-status Report
運動部活動における外部指導者の効果的活用に向けた条件整備の検討
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26350755
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
作野 誠一 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (60336964)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 運動部活動 / 外部指導者 / 人材マネジメント / 任用基準 / 地域差 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、学校運動部活動において注目を集める外部指導者の効果的活用に向けた条件整備の方策について、制度の運用において重要な役割を果たす行政(市区町村)の具体的な活動内容、実施に伴う問題点、さらに予想される問題への対応等について調査の結果をもとに検討した。 調査は関東地方(1都6県)の全市区町村教育委員会事務局等の学校体育(部活動)担当職員を対象として質問紙郵送法によって実施された。各自治体における外部指導者の導入校数、外部指導者数、外部指導者の任用基準の有無、外部指導者の導入に関わる各種活動の重要度および実施度、そして「部活動指導員(仮称)」の導入に対する意向を尋ねた。 その結果、外部指導者の任用および任用基準については、大規模自治体の約9割で外部指導者が任用されており、3/4には外部指導者の任用基準があること、小規模自治体のうち約2/3は外部指導者を任用しておらず、任用基準があるのは1/3に過ぎないこと、都県によって任用の状況が異なり任用基準の考え方も若干異なる可能性があることなどが明らかになった。ここから、都道府県レベルでの取り組みとともに、自治体規模(学校数)に応じた対応が求められること、さらに現状のままでは外部指導者の資質・能力の地域差が露呈する可能性があることなどが示唆された。 外部指導者制度に関わる活動については、外部指導者をめぐっては学校のニーズに応じて必要な予算を取ることが主たる業務となっていること、学校数の増加とともに任用基準づくり・見直しや外部指導者の予算確保の必要性が高まること、都県間の差は「開発」と「維持」への対応の違いに起因する可能性があることなどが示唆された。 最後に「部活動指導員(仮称)」導入に対する意見については、導入に「反対」の自治体はほとんどみられないことが明らかになった。なお本研究結果は日本体育学会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度に実施を予定していた大規模サンプル調査の基本方針は、行政および学校を対象として仮説モデルに示された調査内容(重要度-実施度)の評価を行うことであった。行政については、上記の通り関東地方の全市区町村担当者を対象とした調査を実施したものの、学校調査については、調査協力を依頼していた団体との連携・調整不足から実施することができなかった。しかし内容的・方法的な修正等を行い、現在は調査の実施にめどが立っている。 いうまでもなく、運動部活動については、法制度から現場までかなり幅広い問題を視野に入れておかねばならない。ここ数年の間に運動部活動をめぐる顧問教員の関わり方について各所で問題提起がなされ、主に教員目線からの運動部活動改革論が活発化している。さらに今年3月には部活動の指導や大会への引率を行う「部活動指導員」を学校に置けるよう省令が改正されるなど、制度変更の動きも見られるようになっている。こうした動向にも目配せしながら、調査の実施に向けて鋭意準備作業を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成29年度は、当初の計画通り大規模サンプルによる学校調査を実施する。本調査の基本方針は、行政および学校(教員)を対象として、仮説モデルに示された内容(重要度-実施度)の評価を行うことである。具体的な方法の見通しとしては、高等学校体育連盟(高体連)研究部を通じて加盟校に調査を実施する。この調査を通じて、現行の運動部活動の現状と問題点、対応策について提案することをめざす。さらに仮説モデルの評価を通じて、「コーディネート(調整)」「スキャニング(探索)」「インセンティブ(報酬)」という独自の分析視点から外部指導者の条件整備に関する実践的示唆を得る。年度後半は、研究結果について総括を行い、報告書を作成するとともに、学会等において本研究課題の結果公表に臨みたい。
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Causes of Carryover |
既述のように、平成28年度に予定されていた学校調査が都合により実施できなかったため、当初必要と考えられていた調査関連費用が支出されなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、予定されている大規模サンプルによる学校調査の実施ならびにデータ分析を遂行する計画上の必要から、それらに関わる諸費用(調査に関わる物品費、印刷費、通信郵送費、データ分析に関わる人件費など)が必要とされる。さらに成果公表に関わる費用(旅費、印刷費など)も必要となる。
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Research Products
(2 results)